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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第3章 メネス戦役
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砦の攻防 4

徴用兵を捨て駒にしようとするメネス軍に対し、メリシャはどう戦うのか。

 メネス軍側から見て、ここまでの戦いは前半と後半で全く様相を異にしていた。


 突撃してきたヒクソスの戦士たちを迎え討ち、少数の生き残りが砦へ敗走した。ここまではいつも通りと言って良かった。兵力で勝るメネス軍に、劣勢にも関わらず突撃してくること自体は、これまでのヒクソス戦でもよくあったことだ。


 だが、好機とばかりに戦象を砦に突入させてみれば、門を押し破った直後にあっけなく全滅した。解せないのは、戦象を瞬く間に倒せるほどの戦力があるのなら、なぜそれを隠し、突撃の際に投入しなかったのかということだ。


 ヒクソスの戦術は全力による突撃の一辺倒。持っている戦力の出し惜しみなど、これまでになかった。城壁の上に見える弓兵程度では、戦象を倒すほどの戦力には見えない。

 だとしたら、戦力を隠しているのではなく、砦の内部に罠でも仕掛けていたのか…?


 当初の目論見では、戦象で砦の門を突破、そのまま砦内部に突入させて混乱を引き起こした後、一挙に兵力を送り込んで砦を落とすつもりだった。だが、それはもはや躓いた。


 となれば、取り得る手段は兵力差に物を言わせるより他ない。だが、あの戦象を全滅させた攻撃の正体がわからない。

 この戦は砦を落として終わりではないのだ。ヒクソス軍を追撃して、アヴァリスを制圧する必要がある。ただの通過点であるこの砦で、戦力を大きく消耗させるわけにはいかない。


 徴用兵を使って砦の戦力を削り、温存しておいた職業兵で速やかに砦を制圧する。徴用兵は消耗するだろうが、砦さえ落とせば、後はそのまま帰還させるだけだ。

 職業兵の部隊が健在ならば、その後、ヒクソス軍の追撃に移ることができる。


 メリシャたちが見下ろす中、徴用兵で構成される歩兵部隊が砦へと近づいていた。

「メリシャ、どうする?」

 妲己の問いに、メリシャは考える。


 当初の作戦では、戦象部隊に続いて突撃してくるだろう、敵前衛の歩兵か騎兵の部隊を砦に誘い込み、城壁の上から集中的に矢を浴びせるつもりだった。


 だが、このままでは砦に突入してくるのは、捨て駒にされた徴用兵たちだ。

 もちろん、敵は敵である。作戦どおり、砦に侵入してきた敵部隊を可能な限りすり潰しておくという選択肢は失われていないのだが…。


 …フィルならどうする?

 …この戦いの目的は何だ?優先すべきは何だ?


 ただメネス軍に打撃を与えて追い返すだけではダメだ。この侵攻を画策したメネス首脳陣、とりわけケレス宰相を失脚させ、ヒクソスとの友好を望むホルエムやハトラの後押しをしなければならない。


 そのため、ケレス宰相の息がかかった連中を『戦死』させ、その勢力を削ぐのがこの戦争のもう一つの目的だ。だからこそ、フィルは密かにメンフィスに出向いてハトラと相談し、排除すべき連中が本隊前衛と別動隊に集まるように仕向けた。


 ここでもし、農民からの徴用兵に大きな犠牲が出れば、ケレス宰相はここぞとばかりに、ヒクソスはメネスにとって害悪であると喧伝し、侵攻は正当なものだと主張するだろう。それにメネスの国民感情が同調すれば、ホルエムたちがヒクソスとの和睦を主張するのが難しくなってしまう。


「…少し早いけど、砦は放棄する。敗走したように見せつつ、森の中に撤退しよう」

 固い表情でメリシャは言った。


「メリシャ様、せっかく造った砦を、メネスの連中に渡してしまうんでやすか?…せめて火をかけてから逃げるとか…」

「ううん。使える状態で渡した方が、多分、いい」

 当然の疑問を口にするフルリに、メリシャは答えた。


「そうなのですか?」

 シェシも微妙な表情で訊き返す。みすみす敵に渡すのは勿体ないし、ここを奪われ敵の拠点に使われてしまったら、ヒクソスが不利になってしまうんじゃないかと思った。


 だが、妲己だけはにこりと笑った。

「ふぅん…メリシャもなかなか良い判断をするようになったわね。妾も賛成よ」

 妲己が賛同してくれたことに安堵したメリシャは、ようやく表情を緩めた。

次回予定「密使リネア 1」

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