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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第3章 メネス戦役
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砦の攻防 2

砦に攻め込んできたメネス軍。

メリシャの指揮の下、ヒクソス軍の反撃がはじまる。

「総員、作戦を第二段階へ移行する。砲兵は配置に着け。弓兵は敵軍の動きに注意しつつ待機!」

『はっ!』 

 メリシャが声を上げると、待機していた軍団兵たちがきびきびと動き始める。


「さすが、フィルの訓練で鍛えられただけはあるわね」

 妲己も感心していた。


 生き残った部族の戦士たちは直ちにアヴァリスに帰るよう命じ、他の部族と同様に部族長か部族長が選んだ代表者のみ、観戦武官として残ることを許可した。


「メリシャ様!メネス軍に動きあり!」

 櫓の上の見張りから声が上がった。メリシャは、シェシとフルリ、妲己を伴って城壁に駆け上がる。


 城壁の上から見ると、メネスの陣営の中から、黒っぽい大きな影が進んできていた。

 馬の数倍にもなる巨体と、扇のような耳に長い鼻、大きく反り上がった牙、時折上げる、プォォォン、と進軍ラッパのような鳴き声…後方にいた戦象部隊だ。数は10頭。おそらくは象の突進で砦の門を破壊しようということなのだろう。


 砦の攻略は兵糧攻めがセオリーだが、この砦は後方が森になっていて、ヒクソス側からの補給線が確保されているため、メネス軍としては力押しで短期決戦を挑むしかない。メリシャが敵将でもそうせざるを得ないだろう。巨大な戦象を前面に立てて砦に突入させ、突破口を開いて一気に制圧するつもりなのだ。


「弓兵、撃ち方始め!…砲兵隊は射撃準備!青銅矢をバリスタに装填せよ!」

 メリシャの指示で弓兵が射撃を開始する。だが、戦象の身体は青銅の短冊を鎖で繋いだ鎖帷子で覆われていて、複合弓からの矢も通っていないようだ。人間が着る程度の金属鎧であれば距離次第で貫通できるのだが、数ミリ厚の青銅片は流石に射抜けなかった。


「弓兵、撃ち方止め!」

 これ以上は矢の無駄だと判断したメリシャは、射撃を止めて弓兵に待機を命じる。


 戦象の後ろには騎兵と戦車が続いていた。歩兵は弓兵を警戒しているのか、砦からやや距離を取って待機しており、前進してくる気配はない。

 

「皆、来るぞ!城壁と櫓の上にいる者は、衝撃に備えよ!」


「全バリスタ、射撃準備完了」

「水平射撃で正門を狙え!現状を維持して命令を待て!」


 メリシャが叫んだ直後、ドカドカと音を立てて土橋を渡った戦象部隊の先頭2頭が門扉に体当たりをした。バキバキと木材が引きちぎれる音がして、城壁や櫓にも大きな振動が襲ってくる。

 戦象の一撃で、元々簡易な構造だった門扉は内側へ向かって大きく変形した。


「よし」

 メリシャが小さくつぶやく。

 この門扉に防御力は期待していない。門の中が見えないようにする目隠しであれば良かったのだから。戦象の力に、門扉は音を立てて砦の内側に向かって倒れ込み、それを踏み潰しながら戦象たちが砦の中に侵入してくる。


「砲兵隊、撃て!」

 前列の2頭、そして続くもう2頭が門をくぐったタイミングで、メリシャは叫ぶ。


 緊張しつつバリスタの引き金に手を掛けていた砲兵たちは、メリシャの声に反応して躊躇いなく引き金を引いた。

 留め具が外れ、後方に引き絞られていた両側のアームが一瞬にして開き切ると、真ん中のレール上に装填されていた青銅槍が弦に押されて射出される。


 ババンッ!と重なった大きな衝撃音とともに、10本の青銅槍が門の内側に侵入した戦象たちに向かって一直線に飛んだ。

 距離はわずかに100mとバリスタの有効射程の半分以下、標的が大きいことも相まって外すのが難しい距離だ。

 

 射出音の反響が消える前に、重いものを地面に落とした時のような、ドカッという鈍い音とともに矢が戦象たちを襲った。


 両目の間の鼻の付け根に黒い穴が穿たれた1頭が、支えを失ったようにゆっくりと横向きに倒れ、硬直して宙に延ばされた足が痙攣する。

 その隣にいた1頭は、両前脚の真ん中から槍の尻尾をわずかに突き出させ、前のめりに頭から地面に崩れ落ちた。

 それぞれ、脳と心臓を一撃で貫かれての即死だった。

次回予定「砦の攻防 3」

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