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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第3章 メネス戦役
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攻城弩砲(バリスタ) 2

ついに姿を現す、古代世界での最強兵器。

「ヒクソスの連中は、何のために砦を築いたのでしょうな」

 カシルが話題を変える。


「普通に考えれば、少ない兵で我らを食い止めるためだろう。他に、何かあるのか?」

「目的はおそらくは閣下の仰せの通りだと思います。しかしそれならば、森を背にして平原に突き出すように造られていることが解せません。砦の存在を森の中に隠した方が、防衛の効果はあるでしょうに」


「森の中よりも、開けた場所の方が造りやすかろう?…連中の技術では、それが精いっぱいだったのではないか?」

「そうですな…」

 同意しながらも、カシルの表情は晴れない。


「何にせよ、拙いものであったとしても砦は砦だ。攻めるなら慎重にせねばならん」

 椅子から立ち上がったアイヘブは、カシルの肩を軽く叩く。


「ここにじっとしているのも飽いた。どうだ、遠目からでもその噂の砦とやらを見ておくか」

「はっ、お供致します」

 天幕を出て行くアイヘブにカシルも続いた。


 その頃、問題の砦では、城壁の上に立ったメリシャが布陣するメネス軍の様子を見ていた。


「メリシャ様、そんなところに立たれては危ないです!」

 城壁の下にいたシェシが、外から丸見えの場所に立つメリシャを見つけて、不安そうに声を上げた。


「大丈夫だよ。矢が届く範囲にまだ敵はいないから」

「でも…もし…」

「ごめんごめん、もう下に降りるよ」

 シェシが涙目になってきたのを見て、メリシャが折れた。


 確かに、そばにフィルもリネアもいない状況で、死角から狙撃されでもしたら、まずいかもしれない。もちろん、砦の周辺に張り巡らせた極細糸の警戒網をすり抜けられればの話だが。


 城壁の上には、本格的な城壁のように狭間さまを備えた胸壁はないが、人が隠れられる大きさの盾板が置いてあり、いざとなればその裏に身を隠せるようになっていた。

 縦2m幅1mほどの盾板は、後ろに支柱があって自立するようになっている。持ち運ぶ必要はないため軽量さは捨てて分厚い木材を使用したので、簡易とは言え防御力は十分。長弓の射撃程度なら十分に防ぎきる。そして、門の両側にある櫓には弓と矢が備蓄してあった。


 城壁にかけられた梯子をスルスルと滑り降りるようにして着地したメリシャは、シェシとフルリのもとに駆け寄る。

「メリシャ様、先ほど、アヴァリスから…えと、ば…ばりす…た?」

「バリスタね」

「は、はい、それが到着しました」


「待ってたわ。これでいつメネス軍が来ても大丈夫ね。早速、配備しましょう」

 メリシャは、嬉しそうに砦の奥に向かった。


 攻城弩砲(バリスタ)。かつて、城塞都市サエイレムにも多数配備されていた大型の射出武器である。


 人力の巻き上げ装置で弦を引き、小型の槍ほどもある矢を射出する。最大射程は300m以上、大盾を構えた帝国の重装歩兵の戦列でさえ2~3列目まで易々と貫通する、恐るべき兵器だ。


 本来は攻城武器として開発されたものだが、エルフォリア軍はこれを野戦の戦場にも持ち出した。

 昔、エリンから話に聞いたことがある。帝国と魔族との戦争において、巨人族のような大型の魔族や魔獣に対し、バリスタの一斉射撃は絶大な威力を発揮したのだと。


 形状は手持ちのいしゆみを大きくしたものように見えるが、その仕組みは異なる。

 いしゆみは弓と同様、アーチ状の木材のしなりをバネにして矢を射出するが、バリスタはそうではない。


 両側に張り出したアームは左右が別々の部品であり、ひとつなぎのアーチ状にはなっていない。

 中心部にある矢をつがえるレールを挟んだ両側には、強靭な繊維を撚り合わせた極太の縄が上下方向に張られており、それぞれのアームの根元はその縄に挟み込まれている。


 アームの間に張られた弦が引かれると、アームが後方に倒れていくにつれて、アームの根本を固定している縄が強く捩じられていく。

 それが戻ろうとする力を捩じりバネとして利用し、凄まじい初速で矢を射出するのである。


 この世界では、ヒクソスにはもちろんメネスにも存在しない兵器だったが、特別な材料がないと作れないものではない。

 実物の構造を知っているフィルとメリシャが指導して再現するのは、さほど難しくはなかった。

攻城弩砲バリスタ 3」

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