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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第3章 メネス戦役
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深夜の密談 4

急いでアヴァリスに帰ろうと走るフィル。しかし、黙って出かけたことを気付かれていたようで…

 急いでアヴァリスに戻るべく、フィルは九尾の姿で夜空を駆けた。

 今夜のハトラとの密談も、その内容も、完全にフィルの独断だ。メリシャには内緒にしておきたくて、皆が寝静まったのを見計らい、誰にも見つからないように王城を抜け出してきた…つもりだった。


 ヒクソスとメネスの国境を越えたところで、九尾の行く先の空に人影がひとつ、浮かんでいた。

 ゆっくりとスピードを緩めた九尾は、その人影のすぐそばで完全に足を止める。


「フィル様、お帰りなさい」

 竜の翼をはばたかせ、夜空の中にポツリと佇んで待っていたのは、竜人姿のリネアだった。

「ただいま。リネア、あのね…」

 リネアにじっと見つめられ、フィルは言い淀みながら目を逸らした。


「行先は、ハトラ様のところですね?…眠っていたはずのフィル様の姿が見えなくて…あの時のことを思い出してしまいました」

 …少し拗ねたように言うリネアに、フィルは居心地悪そうに九尾の巨体を縮める。リネアが言うのは、後にも先にも、たった一度きりの喧嘩をした、あの夜のことだとすぐにわかった。


「…その…黙って出かけて、ごめんなさい!」

 素直に謝ったフィルに、リネアはふわりと微笑んだ。

「仕方ありませんね…」 


「…リネア、わたしの背に乗ってよ。最近は乗せてもらってばかりだったから、リネアを乗せて走りたい」

「それでは、失礼します」

 リネアは慣れた仕草でサッと九尾の背にまたがり、狐人の姿に戻った。


「いくよ。しっかり掴まってて」

「はい!」

 フィルは再び風を蹴って走り出す。


「…リネア、今度の戦争では、たくさんのメネス兵を殺さなくちゃいけない」

「はい。……残念ですが、メネスから仕掛けて来たことです。仕方のないことだと思います」


「うん。わたしもそう思ってる…だけど、メリシャにはあまり知られたくないなぁ…と思って……」

 フィルは、つぶやくように言った。


「フィル様……前にも言いましたよ。フィル様が手を汚すのなら、私も一緒に汚れます、と。…きっとメリシャもそう思っているはずです。あの子だって、百年もの間、立派に女王を務めたのですよ」

 リネアは、愛おし気に金色の毛並みを撫でた。


「わたしの我が儘かもしれないけど、…メリシャにはもちろんだけど、できればリネアにも手を汚してほしくないよ……」

「ありがとうございます。でも、私がそうしたいんです。私はフィル様の伴侶であり半身です。フィル様が背負うものの半分は、私にも背負わせてください。これは、私の我が儘です」

「そっか…」


 しばらくの間、無言になる。星が敷き詰められた静かな夜空の中、互いの息遣いだけが聞こえる。


「……フィル様、こうして二人きりになるのは久しぶりですね」

「そうだね、メリシャにシェシ、テトやフルリもいるし…毎日、にぎやかで退屈しないけど……」


「今夜は、私がフィル様を独り占めしたいです。…ダメでしょうか?」

 リネアは、そっと金色の毛皮の上に身を倒し、恥ずかしそうに言った。


「ううん、いいに決まってる。わたしも、リネアを独り占めしたいと思ってた…」

 フィルも、アヴァリスに向かって走っていた足を緩める。


「この先の森の中に、綺麗な泉があります。行ってみませんか…?」

「うん。行こう」

 森に囲まれた静かな泉の畔へと降り立った。泉の周りには、ぼんやりとした光を放つ虫がたくさんいて、幻想的な風景を作り出していた。

 もちろん周りには誰もいない。リネアを降ろし、フィルは人間の姿に戻る。

 

 リネアがフィルの頬に手を添えると、フィルはそっと目を閉じた。

 リネアはゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねる。くちゅりと湿った音をさせながら舌を絡め合い、微かな吐息とともに唇が離れると、溢れた露がふたりの間に細い糸を引いた。

「…ん…リネア…」

「…あぁ…フィル様…」


 リネアは、とろんと潤んだ瞳でフィルを見つめ、するりと服を地面に落とした。フィルも頬を赤らめながら素肌を晒していく。

 透明な水を湛える泉に、向かい合って肌を重ねる仄白い裸身が映りこんでいた…。


 ふたりがアヴァリスの王城に帰ってきたのは、夜が明けてからだった。

次回予定「作戦準備 1」


…夜の営みでは、リネアの方が『攻め』です(謎)

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― 新着の感想 ―
[一言] 敬語キャラの側が攻めなのは自然の摂理であり尊ぶべき正義だって義務教育で教わりますからね
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