町の再建 3
神殿から出ると言い出したテト。その真意とは。
「バステト様、そんな…!」
主神の爆弾発言に、巫女たちはわかりやすく動揺している。
ようやく姿を現したペルバストの主人が、いきなり留守にすると言い出したのだから当然の反応だった。
「テト、どこか行くの?」
不思議そうに問うメリシャに、テトはふふんと鼻を鳴らす。
「テトは、メリシャたちと一緒にいてやるにゃ」
要は、一緒に付いて来たいということだった。
「テト様…」
リネアも呆れ顔でテトを見ている。
「フィル、テトを連れて行っちゃっていいのかなぁ…?」
「メリシャはどう思うの?」
微笑みながら問い返すフィルに、メリシャは眉を寄せて低く唸った。
気持ちで言えば、テトがそうしたいなら、一緒に来てもいいと思う。テトは神様だけど気さくだし、弱い者を虐げたりもしない。長い間ムルの中に閉じ込められていたのだから、神殿にいたくない、自由になりたい、と言う気持ちもよくわかる。
反面、巫女や信徒たちのことを考えたら、テトには神殿にいてもらって、心の支えになってもらった方がいい。テトも、そのために留守番の分霊を生み出したのだろうが…。
考えるメリシャを、フィルは急かさなかった。黙って微笑みつつ見つめる。
テトは神様だ。けれど、人と同じように感情もあれば、意思もある。だったら、テトの好きにすればいいと思う。神様としての責任はあると思うけれど、それは必要な時に果たせばいい。
「ボクは…テトを連れて行きたい、と思う。テトには、テトがやりたいようにさせてあげたい」
考えた末に少し緊張して答えたメリシャに、フィルは少し間をおいて頷いた。
「…うん。わたしもその方がいいと思う」
フィルが賛成してくれたので、メリシャはホッとして笑みを浮かべた。
ホッとしていたのは、フィルも同じだった。…ただ、テトの意思を尊重したいメリシャと、フィルの意図は違っていた。
フィルは、テトの意思とは関係なく、テトを自分の目の届くところに置きたかったのである。テトが自ら望んで一緒に来ると言い、メリシャもそれに賛成してくれたのは、正直、ありがたかった。
リネアを苦しめたというテトの祭具シストルムの力を、フィルは警戒している。今後、テトが何らかの理由でフィルたちと敵対することがあれば、シストルムの力は非常に危険だ。
もしもそうなったら、フィルは容赦なくテトを排除する。最愛のリネアの身に危険が及ぶとなれば、躊躇うつもりはない。……けれど、できればそんなことはしたくない。
目の届くところにいてもらい、間違っても自分たちと敵対することがないよう、敵対する者に利用されることがないよう、テトを囲い込む。それがフィルの本音だった。
「フィル、よろしくにゃ。…テトはフィルと喧嘩したくないにゃ。安心するにゃ」
フィルの考えを見透かしたように、テトは言った。
「…ごめん。気を悪くしないでほしい。テトのことは信じてる…けど…」
少し俯きながら、歯切れ悪くフィルは言う。
「わかってるにゃ。テトはムルに閉じ込められた時にシストルムを奪われてしまったにゃ。…悔しいけど、二度とないとは保証できないにゃ。だから、フィルがそう思うのも仕方ないにゃ」
「…ありがとう。正直、テトのシストルムは、わたし達にとっても脅威になるものだと思っているの。テトを閉じ込めた犯人もまだわからないし…だから…」
「だから…テトもフィルたちと一緒にいた方がいいと思ったにゃ」
フィルの言葉を継ぐように言ったテトに、フィルはハッとして顔を上げた。
「フィル、テトのことも守ってくれるかにゃ?」
「もちろん。任せて!」
力強く頷いたフィルに、テトは心からの笑顔を見せた。
次回予定「妲己の弟子 1」




