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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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妲己式新兵教育 3

神官たちは、無事(?)に更生することができました。

「妲己、ありがとう。…でも、ちょっとやり過ぎじゃない?」

「妾も久しぶりで、ちょっと張り切っちゃった。いいのよ。あれくらい従順にしとかないと、また下らないことを考える連中が出て来たら嫌でしょう?…敵のうちはいいけど、内側に入れてから面倒事起こされると厄介よ」

 妲己の指摘はよくわかる。


 神官たちほどではないが、直轄軍団に集められた各部族の者たちも、最初はなかなか思い通りには動いてくれなかった。戦士としてのプライドもあるし、個人個人の武技こそが一番大事だとずっと教え込まれてきたのだ。それを簡単に変えられるわけがない。


 だが、メネス王国と戦うには指揮官と作戦に従い、集団で戦うことのできる兵がいる。だからフィルは、この数ヶ月というもの徹底的に軍団の兵たちをしごき続け、文字通り根性を叩き直した。いざ戦場で命令に従わない者が出れば、そこから戦線が崩壊することだってあり得るのだ。

 

「そうだね…」

 頷きつつも、従順過ぎる神官たちが気持ち悪くて、ちょっと逃避気味のメリシャである。

「でも妲己、フルリたちまで、ちょっとなんか様子が変わってる気がするんだけど?」


「あら、そうね」

 にこりと笑った妲己は、メリシャの懸念を見透かして言葉を続ける。

「巫女の娘たちは、妾の術にちょっと当てられただけだから、一晩眠れば元に戻るわ。心配しなくていいわよ」


「良かった~」

 ホッとしたメリシャに、遠慮がちにフルリが声をかけた。

「あの、メリシャ様…こちらは、フィル様…ではねぇんでしょうか?…今、違うお名前で呼ばれた気がしたんでやすが…」

 メリシャが、フィルのことを妲己と呼んでいるのが気が付いたようだ。


「フルリたちは妲己のことまだ知らないもんね」

「え…まさか、本当にフィル様ではないんでやすか?でも、そのお姿はどう見ても…」

「フルリの言う通り、この身体はフィルのものよ。…今は妾が借りてるけどね」

 目を真ん丸にするフルリに、妲己は苦笑しつつ自己紹介する。 


「妾は妲己。フィルの中に居候しているずっと昔に死んだ女の魂よ…フルリは、玉藻とは会ったことがあるんでしょう?」  

「へい…妲己様は、玉藻様のような方なんでやすか…?」


「じゃ、妾の姿も見せてあげるわ」

 瞳の色が金から紅に変わり、身体をフィルに返した妲己は、そのままするりとフィルの中から抜け出て見せる。 


 羽衣のような薄くしなやかな衣装に身を包み、白金色の長い髪を頭の後で結い上げた、褐色の肌を持つ美女の姿に、フルリは、ほわぁと思わず声を上げる。


 見慣れたメリシャでさえ、妲己の美しさは別格だと思う。本人から聞いたところでは、王を魅了して国を滅亡に導いた『傾国の美女』として後世に伝わっているらしい。

 もちろん、本当の妲己はそんな悪女じゃないのだが、その美女ぶりは言い伝えのとおりだ。


「ありがとう。フルリ。可愛い娘ね」

 妲己は、にこりと笑ってフルリの前に立つと、スッとを顔を近づけて指先でその頬を撫でる仕草をした。エキゾチックな美貌を目前して、フルリは顔を真っ赤にして足を震わせている。

「は、はひぃ…」


「妲己、絶対フルリをからかってるよね」

「気に入ったんじゃない?…素直で可愛い娘だし、武人を目指してるしね」

 耳打ちするメリシャにそう答えて、フィルは微笑みを浮べて妲己たちを眺めている。


「…わたしも、けっこう気に入ってるんだ。この騒ぎが終わったら、フルリを神殿から出してメリシャの護衛にしようと思うんだけど、どうかな…?」 

「フィルとリネアがいるのに?」

「えぇ。メリシャの護衛として鍛えて、いずれはシェシの近衛隊長に…と思ってね。フルリは戦士になりたいって言ってたし、妲己に武術を習えば、きっと強くなるよ」

 不思議そうに問い返すメリシャに、フィルは囁いた。

次回予定「動く死者 1」

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