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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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ペルバスト炎上 1

フィル率いる直轄軍団が、ようやくペルバストに到着。

「なんとか、間に合ったわね」

 アヴァリスを出発して4日目の朝、ペルバストの町が見える丘の上に立ったフィルは、満足げにつぶやいた。ここから先は緩やかな斜面に沿ってペルバストまで道が続いている。

 フィルの後ろでは、疲れた表情で兵たちが座り込んでいた。


「手空きの者は食事の用意にかかれ!大隊長は集合!」

 フィルの号令に、兵たちはサッと腰を上げて一斉に動き始めた。


 フィルが率いる軍団は約1千人。それを百人づつの大隊に分け、それぞれの指揮官として大隊長を置いた。帝国軍風なら百人隊長とするところだが、わかりやすく大隊長とし、その下をさらに10人づつの小隊に分け、小隊長を置く。任務はこの大隊、小隊の単位で行う。


 例えば街道整備であれば、整備を行う区域を大隊単位で割り振り、その中での作業のシフトや細々とした作業分担は小隊単位に割り振るのだ。


 編成にあたってフィルは大隊を部族単位でまとめ、その中で部族内の序列に応じて隊長を任命した。できれば部族や序列関係なく能力で任命したいところだが、いきなりは無理だ。フィル自身、そこまで各個人の能力や性格を詳しく把握しているわけではないし、いきなり序列が下だった者を隊長に抜擢しても、反発が生まれ現場が混乱する。

 ただ、戦士は小隊長に、小隊長は大隊長に、大隊長はフィルの命令に従うことを求めた。意見や提案を言うのはいい、しかし上位指揮官が決めたことには絶対服従を徹底した。


 最初は反発もあったが、自分よりも強い者には従うというヒクソスの気質のおかげで、訓練を続けるうちに軍団としての統率はとれるようになってきていた。まず第一段階はクリアといったところである。


 フィルの前に10人の大隊長が集まった。

「わたしは、これからベルバストに入り、メリシャ王と今後の行動を相談してくる。明日の朝には戻るから、今日は野営の準備を整え、皆に休息をとらせなさい。これから何が起ころうと、わたしが戻るまでここで待機。特にペルバストには決して近づかないこと。これは全ての者に徹底させなさい!」

「はっ!」

「よろしい。では解散!」

 早速、指示を伝えるべく大隊長たちが散っていく中、二人の大隊長がフィルの前に残った。セケムとセベクである。


 軍団にウゼルの部族出身の戦士が多かったため、ふたりとも今回の軍団編成では、若年兵を中心とした部隊の大隊長を任されていた。メネス王国を実際に見て、これまでのヒクソスの戦い方の問題を体験したふたりを、将来はヒクソス軍の将に育てたいとフィルは考えている。


「フィル様は、バステト神殿の神官どもとどのように戦うおつもりなのでしょうか?」

 セケムが、やや緊張した表情で尋ねた。


 王の命令を蔑ろにし、部族にも横暴な態度を見せていた彼らを庇うつもりはないが、バステトの神官たちは並の戦士では相手にならないほど強いと聞いている。自分たちの方が数は多いが、まともにぶつかった時にどうなるか、正直やや不安でもあった。


「わたしたちがバステト神官団と実際に戦うのかってこと?」

「はい。神官たちはバステト神の加護で、並の戦士では太刀打ちできぬと聞いています。我々では、もしかすると犠牲者が出るやも…」

「大丈夫だよ。バステト神殿の神官たちは、もうメリシャたちがやっつけているはずだから、セケムたちが戦う必要はないよ」

 言いにくそうに言ったセケムの肩を軽く叩いて、フィルは答える。


「メリシャ王が、すでに戦っていらっしゃるのですか?」

「そうだよ。だけど、ペルバストや神殿の中がどうなっているかわからないから、まずわたしが確かめて来る。詳しいことは戻ってきてから話すよ。悪いけど、もうしばらくだけ待ってくれる?」


「わかりました。フィル様、お気を付けて」

「うん、ありがとう」

 ひとりペルバストに向かって歩いていくフィルを、セケムとセベクは並んで見送った。

次回予定「ペルバスト炎上 2」

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