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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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神殿制圧 3

あっさりと神官たちを無力化したメリシャたちは…

「テト様、勿体ねぇお言葉でやす」

 テトのことを知っているフルリたちは、跪いて頭を下げるが、リネアの後ろの巫女たちは不思議そうな顔をしている。


「お、お前たち、こんなことをしてタダで済むと…」

 簀巻きにされて身動きが取れない神官の一人が、ならず者同然の台詞を吐いている。

 テトは神像から飛び降り、その神官の前に立って忌々しそうな表情を浮べると、神官の頭をぐりぐりと踏みつけた。


「ただで済まないのは、お前らの方にゃ。テトを何百年も閉じ込めておきながら、よくもテトの神官を名乗れるものだにゃ。これからテトに仕えるのは巫女たちだけでいいにゃ。お前らはみんな追放にゃ」

 ふんッと鼻を鳴らしたテトは、それで何となく気が済んだのか、メリシャのところに戻ってくる。


「メリシャ、これからどうするにゃ?」

「うーん、そうだね…」

 メリシャは後ろに固まっている巫女たちに目を向けた。


「怪我をしている娘はいない?」

 メリシャの問い掛けに、巫女たちは顔を見合わせて、おずおずと頷く。助けたもらったことはわかるが、同族でないメリシャやリネアには、まだ警戒心が拭えないようだ。 

 詳しく説明するには、今は時間が惜しい。フルリたちも武器を使い果たしていることだし、彼女たちのことはフルリたちに任せて作業場へ避難させるのがいいだろう。


 すでに神官たちの大半は倒したはずだが、まだ残党がいるはずだし、神官たちを束ねる長らしき者の姿もまだ見ていない。


「フルリ、この娘たちを作業場に連れて行って欲しいんだけど、頼める?」

「へい、承知しやした。…ですが、メリシャ様たちは、どうなさるんでやすか?」

「たぶん、神殿の中にまだ神官たちがいると思うんだよ。…フルリは、この神殿で一番偉い人って知ってる?」


「テト様では?」

「そうにゃ。この神殿の主はテトにゃ」  

「いや、そうじゃなくて、神官たちの中で一番偉い人って意味なんだけど…」


「それなら、大神官でやすね」

「大神官か…ここにはいないよね?」

 メリシャは、粘着網にくるまれて地面に転がっている神官たちを指さす。


「いないでやすね。あっしも何度かしか姿を見たことないんでやすが、大神官は音の出る杖のような祭具をいつも持っていたでやす」


「フルリ、それはもしかしてそれは振るとシャンシャンと音がするものではないかにゃ?!」

 フルリの言葉を聞いたテトは、ずいっと身を寄せて、強い口調で尋ねた。

「へぇ、そうでやすが…」


「それはテトの『シストルム』だにゃ!テトを閉じ込められた時に無くしたものにゃ。その大神官とやらが盗んだに違いにゃいにゃ…許さないにゃ!」

 シストルムというのは、テトにとって余程大切なものらしい。勢いよく神殿の中へ駆け出そうとするテトを、メリシャが後ろから抱き留める。


「ちょっ、ちょっと待って、テト!」

「離すにゃ。大神官をブチ殺してシストルムを取り返すにゃ!」


「だから、そんな祭具を持った相手に、テト一人で大丈夫なの?…昔は、閉じ込められてしまったんでしょう?」

 テトが閉じ込められたのは何百年も前。今の大神官がテトを閉じ込めた本人であるわけはないのだが、そのシストルムという祭具の力を引き出す方法が伝わっている可能性はある。無闇に突っ込めば、足元を掬われることもあるかもしれない。


「それは…」

 テトの猫耳がへにょりと萎れ、身体の力も抜ける。

「シストルムはテトの大事なものにゃ…メリシャ、リネア、シストルムを取り返したいにゃ。お願いにゃ!」

 くるりとメリシャの方を向いたテトは、メリシャの腕をぎゅっと掴んで訴えた。もちろん、メリシャたちに異論があろうはずもない。


「テト、どうせ大神官は倒さないといけないんだし、シストルムを取り返すのを手伝うよ」

「ありがとうにゃ!感謝するにゃ!」

 テトは、メリシャの手を取ってぶんぶんと大きく振った。

次回予定「シストルム 1」

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