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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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神殿制圧 1

神官たちを倒し、神殿を制圧せよ。

「メリシャ様、こいつらはどうするでやすか?」

 粘着糸で簀巻きにされ、芋虫の如く床でのたうつ神官たちを、木槍の先端で突っつきながら、フルリが尋ねた。


「今はそのまま転がしておけばいいかな。どうやっても自力では解けないし…それより、急ごう」

 メリシャは、ちらりと神官たちを見て答えると、さっさと進みだした。

 妲己の技量を以てしても切れないアラクネの糸を、この神官たちがどうにかできることは絶対にない。


「メリシャ様、そのお力は、一体……」

 シェシが少し遠慮がちに訊いてきた。初めて見たメリシャが戦い方が、糸を自在に操る能力だなんて、とても奇妙に見えただろう。


「これは、ボクの大事な人から受け継いだ能力なんだよ。面倒な相手を捕まえるのに、便利でしょう?…その気になれば、人の首や胴体だって、スッパリやれるけどね」

「スッパリ…ですか…」

 シェシの口元が少し引きつっているのは、気付かなかったことにする。


 引き続きフルリに案内してもらい、周りの気配に注意しながら進む。


 バステト神殿は、参道から奥に向かって、主要な建物が一列に並ぶように配置されている。

 一番奥が、テトが閉じ込められていたムルがある区画、『聖所』と呼ばれている立ち入り禁止区域だ。そこから列柱が立ち並ぶ列柱室を抜けると『聖なる池』。長方形の石造りの池に透明な水が湛えられている。そして続くのは、両側に大きな石柱が立ち並ぶ列柱廊。今メリシャたちがいるのはここだ。


 この先は、城壁のような高い壁に巨大な神像が飾られた塔門と、信徒たちが祈りを捧げる神殿の広場だ。


 列柱廊に人の気配はなく、行く手の先にある広場の方から、ざわついた声が聞こえる。予定通り、リネアはそこで神官たちを釘付けにしてくれているようだ。

「メリシャ様、行くでやすか?」

「うん。ゆっくりね。神官たちに気付かれないように」


 フルリを先頭にして、明かりが差し込む広場の方へ進む。太い柱の影に身を隠しつつ、そっと広場の様子を伺うと、まず目に入ったのは、広場の向こう側にそびえる塔門の上に鎮座している赤褐色の巨竜。石の壁にがっちり爪を食い込ませ、足元の広場を睥睨している。

 広場では大勢の神官たちが、険しい表情でティフォンを見上げていた。だが、リネアもまた困ったように動きを止めていた。

 

「メリシャ様…!」

 フルリの指さした方を見て、メリシャは軽く舌打ちする。神官たちの前、ティフォンとの間に、20人ほどの巫女たちが立たされていたからだ。

 彼女たちは、ほとんど木の板にしか見えない粗末な盾を手にしているが、どう見ても自らの意思でそこにいる様子ではない。無理矢理に神官の盾にされている。


 リネアが攻撃せずに様子を見ているのは、盾役の巫女たちを傷つけたくないからだろう。そうでなければ、さっさと広場に降りて一暴れしているはずだ。


 メリシャは広場の様子を確認する。

 広場の真ん中には、神殿と塔門の間をつなぐ幅10mほどの石畳の通路が設けられており、その両側に向かい合うように、座った猫の姿を象った石像が等間隔に置かれている。

 塔門の上にはティフォンがいて、その下に、盾役をさせられている巫女たちが並んでいる。そして、巫女たちの後ろにいる神官たちは、ざっと見た感じで50~60人ほど。


 …メリシャたちが来たことに気付き、それまでじっと様子を見ていたティフォンは、グルルと低い唸り声を上げ、神官たちの注意を自分に引きつける。

「ヒッ…」

 盾役をさせられている巫女の誰かが、短い悲鳴を漏らし、反射的に下がろうとした。


「下がってはならん!神敵に怯むな!」

 神官の一人が大声を上げ、手にしたメイスで足元の石畳を打ち据える。

 びくりと身を震わせた巫女の少女たちの姿に、メリシャの中に怒りが湧いた。

次回予定「神殿制圧 2」

神官たちを一網打尽…?

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