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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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バステトの加護 1

バステト神殿に乗り込んだメリシャたちは…

「リネア、また後で!」

 タイミングを見計らい、メリシャはシェシをお姫様抱っこしてティフォンの背から飛び降りた。テトはメリシャの背中にしっかりとしがみついている。フルリもメリシャに続いた。

 ティフォンはそのまま着地せずに高度を上げ、神殿の正面側へと向かう。 


 降り立った場所は、昨日、フルリたちと隠れた神殿脇の作業場。周りに神官たちの姿はない。予想通り、ティフォンが向かった神殿正面の方に集まっているようだ。


「メリシャ様!フルリ!」

 パタパタと数人の巫女たちがこちらに走ってくる。

「フルリ、ローテは助かったの?」

「はい…助かったでやす。今は、養生のためにお城で預かってもらっておりやす」

「良かった…」

 巫女たちは安堵して笑う。


「あの、さっき空を飛んでいたのは、リネア様なのですか?」

「そう。竜の姿で、神官たちの目を引きつけてくれているんだよ」

 

 メリシャは、次々と集まってきた巫女たちに他の巫女もこちらに呼んでくれるように頼む。

 はい!と声を上げ、先日の騒動でメリシャたちのことを知っている巫女たちは、すぐに走っていく。

 フルリは、メリシャたちのことを知らずに集まってきた巫女たちに事情を説明していた。


「むー、テトの眷族は、この巫女たちだけでいいにゃ…メリシャ、加護がない神官たちはもう強くないにゃ。軽く蹴散らしてやるといいにゃ」

 退屈そうにふわぁと欠伸しながらテトが言う。

「神官たちには、もうテトの加護がないの?」

「当然にゃ。テトはあんな奴らに加護を与えたいとは思ってないにゃ」


 テトの話によれば、本来、加護はテトが与えたいと思った相手にしか与えられないらしい。だがあのムルは、テトの意思に関係なく力を吸い上げて周囲に撒き散らす、一種の装置。

 神官たちは、彼らだけに伝えられている方法で、ムルから放出されるテトの力を利用し加護と同様の力を得ていたようだ。もちろん、テトがムルから解放された時点でその機能は失われ、テトに嫌われた彼らに加護が与えられることはない。


(そういえば、お城から付いてきたこの子はどなたでやしょう?)

 フルリは、メリシャの腰に抱き着いているテトを不思議そうに覗き込む。シェシよりも幼い歳格好のテトは、フルリからすれば可愛い子供にしか見えない。


「こちらはメリシャ様の侍女でやすか?それにしては幼過ぎるような…」

 わしゃわしゃとテトの頭を撫でまわすフルリ。

「テトはテトなのにゃ。気持ちいいからもっと撫でるにゃ…」

 嫌がるかと思いきや、テトも目を細めてされるがままになっている。


「むふー、お前の撫で方はなかなか…よくわかっているのにゃ…褒めてやるにゃ」

 途端にフルリの身体が淡く光りはじめた。光はすぐにおさまったが、フルリはテトを撫でていた手を止め、驚いたように自分の身体を見回している。


「どうしたんですか?フルリさん」

「なんか力が湧いてくるでやす。これは一体…」

 シェシの問いかけに、フルリは両手の拳を閉じたり開いたりしながら答えた。


「お前はテトを気持ちよくしてくれたにゃ。褒美にテトの加護を与えてやったにゃ。これからもテトを撫でて気持ちよくするにゃ」

 突然のことに狼狽えているフルリの前で、テトは平らな胸を張る。

「…加護…でやすか?」


「あー、ごめんねフルリ。紹介が遅くなって…この子は…その、バステト様なんだけど…」

 完全に紹介のタイミングを逸したメリシャが、あははと笑って誤魔化しながらテトの正体を明かす。


「ば、バステト様っ?!」

 そこからのフルリの身のこなしは、見事としか言い様がなかった。両手を高く頭上に掲げ、同時に緩やかに膝を折ると、腕を伸ばしたまま上体を前へと倒す。流れるような動作でその場に平伏した。

次回予定「バステトの加護 2」

突然、テトの加護をもらってしまったフルリ…

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