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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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メリシャの意思 2

せっかくのシェシの意見に、メリシャが反対した理由とは…

「どうしてですか?メリシャ様」

 まさかメリシャに反対されるとは思わず、驚いて聞き返したシェシに、メリシャは辛そうな表情で言う。

「疫病にかかってから、実際に症状が出るまでに少し時間がかかることがあるんだよ。もし、症状が出ていないだけで、既に疫病にかかっている人が避難民の中にいたら、疫病を各地に広げることになっちゃう。それこそ手が付けられなくなるよ」


「そう、なんですか…知りませんでした。…ごめんなさい」

 メリシャの答えに、シェシはしょんぼりと肩を落とした。


「でも、よく考えてくれたね。嬉しいよ。シェシ」

「…メリシャ様…」

「ペルバストの人たちを助けたいけど…疫病を広げるわけにもいかない…本当に、どうすればいいんだろうね…」

 上目遣いに見つめるシェシに、メリシャは力なく笑う。


 …疫病が蔓延した帝国は、ひどい状況に陥った。もしヒクソスがそうなってしまったら、取り返しがつかない。けれど、封鎖されたペルバストは、もっとひどいことになるだろう。フィルでさえ耐えられなかったという、リエステの町と同じ状況になる。


 どうすればいい…フィルに頼み込んで、ペルバストの感染者を片っ端から治療するか…でも、疫病が蔓延した原因自体をなんとかしなければ、次々に感染者が出続ける。

 疫病の原因は不衛生な町の環境にある。それを短期間に改善し、民たちも出来る限り救う、そんなことができるのか。そんな方法が本当にあるのか…メリシャは、必死に思考を巡らせた。

 焦るあまり、自らの未来視を使うことも忘れていた…。


 フィルはその様子を黙って見つめている。ヒクソスの王はメリシャだ。だから提案はするが、決めるのはメリシャでなければならない。

 しかし、フィルの提案を適切と認めつつ、それでもペルバストを見捨てることを拒むメリシャに、フィルは内心嬉しく思っていた。


「フィル様、そろそろ良いのではありませんか?」

 それまで黙っていたリネアの声に、フィルは少し驚いたような表情を浮べた。


「…なんのこと?」

「メリシャの気持ちをお知りになりたかったのでしょう?」

「リネアにはなんでも見抜かれるなぁ…」

「もちろんです。私はフィル様の半身ですから」

 クスッと笑ったリネアに、フィルも恥ずかしそうに笑い返した。


「メリシャ、どうしても巫女たちやペルバストの人たちを助けたいのね?」

「うん…フィルの言う事は正しいって思うけど、それでも何とかしたいんだよ」

 腰に手を当て、仕方なさそうに苦笑するフィルに、メリシャは頷く。


「わかった…じゃぁメリシャ、わたしの狐火でペルバストの町を焼き払うけど、いいわね?」

 フィルは、スッと笑みを消してメリシャに言った。


「町を焼き払う?」

「えぇ。強引だけど、疫病を確実に抑え込むためには、発生源になった場所は一度焼き払う必要があるの。悪いけど、そこは譲れないよ」

 ペルバストを見捨てるのではなく、ペルバストを焼き払う。見捨てるよりもひどいことを言っているように聞こえるが、メリシャの思いを聞いた上でフィルが言うからには、メリシャの意思に反するものではないはずだ。


「わかった。それで疫病が抑えられるなら、やるべきだと思う」

「それと…さすがに全員助けるとは約束できない。…できる限り助けるってことで、納得して」

「それは、仕方ないと思う。ごめんなさい、無理言って…」

「ありがとう…テトもそれでいい?」

「かまわないにゃ」

「準備に少し時間をちょうだい。3日…いえ4日後にはわたしもペルバストへ行くわ。…悪いんだけど、その前にメリシャたちには先にペルバストに行って、やってほしいことがある」

 フィルはメリシャたちに自分の考えを話して聞かせた。疫病の元を絶ち、ペルバストの民たちを救う、その方法を。


 翌日、ティフォンの姿をとったリネアの背に乗り、メリシャ、シェシ、テト、フルリは再びペルバストへと向かった。

次回予定「メリシャの意思 3」

いよいよ行動開始です。

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