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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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メリシャの意思 1

ペルバストを見捨てると言うフィルに、メリシャは…

「メリシャ、このまま疫病が広まってしまったら、九尾の力を以てしても対処できなくなる。この世界、この時代に、この疫病を治せるのはわたししかいない。患者が増え続けたら、わたしでも手に負えなくなるんだよ」

 フィルはの口調がやや強くなる。


「ヒクソスの医療水準では、感染を予防することさえ難しいわ。今の状況でペルバストに救援を投入すれば、かえって感染を広げることになる。…一番確実な方法は、疫病が発生した場所を完全に封鎖し、そこの人たちを犠牲にしてでも、感染を封じ込めることなんだよ」

「でも…だけど…」


「メリシャ、王として考えなさい。…メネス王国だって、いつまでも黙っているとは思えない。もし疫病が広がって、国内が混乱するようなことになったら、必ず付け込んでくるわ。だから、疫病はできるだけ早く、確実に対処しなければならないの。…うまく疫病を抑え込むことに成功すれば、メリシャの権威を高めることにも繋がるんだから」

 フィルはペルバストを犠牲にして、確実に疫病を防ぐとともに、メリシャの権威を高めるために利用する…つまり、メリシャのためにペルバストを生贄にすると言ったのだ。


 あまりにも非情なフィルの意見に、メリシャも強い口調で言い返す。 

「フィル!…ペルバストの巫女たちは、各部族から神殿に差し出された娘たちなんだよ。みんなひどい扱いをされているけど、みんな我慢して一生懸命働いてる。それに、町に住む人たちはテトを信じてるだけの、普通の人たちなんだよ。それを見殺しにはしたくないよ!」


 フィルの言う通りにすれば、残っている巫女や町の住人たちを見捨てることになる。メリシャはフィルに詰め寄るが、フィルはそっとメリシャの肩に手を置いた。


「メリシャの言いたいことはわかるよ。わたしだって、みんな助けられるものなら助けたい。けど、疫病が外に広がってしまうことだけは避けなくちゃいけないの。…それじゃ、神殿の巫女たちだけでも助け出すのはどう?それならわたしも協力するよ」

 フィルは優しく微笑みながら言う。親が娘に言い聞かせるように。

 

「う…それじゃ、ダメなんだよ。フルリだって町の人たちも助けたいよね?」

「それは、もちろんでやすが…あっしには、どうすればいいのかわからないでやす…」

「…」

 メリシャは言葉に詰まる。


 フィルの言う事は、正しいと思う。ヒクソス全体のことを考え、現在の状況と、得られるメリット、背負うリスクを天秤にかければ、フィルの言うことは適切だとメリシャにもわかる。

 かつて帝国でこの疫病が猛威を振るった時も、サエイレム王国は国境を直ちに封鎖し、帝国からの人の流入を完全に止めたおかげで難を逃れた。自国民を守るため、帝国の民に対して扉を閉ざしたのだ。


「メリシャ、王は時に辛い決断もしなきゃいけない。昔、教えたよね?」

「だけど…」

 ペルバストで出会った、お腹を空かせた子供たちや巫女たちが疫病にかかって苦しんで死ぬ、そんなこと想像もしたくない。帝国の時とは違い、ペルバストの民もヒクソスの民だ。王として守るべき国民だ。

 フィルを説得するにはどうすればいい?…もし、実際にペルバストや巫女たちの様子を見ていたら、フィルも少しは違った判断をしてくれたのだろうか。


「メリシャ様、フィル様、シェシも巫女の皆さんや町の人たちを助けたいです」

 シェシが、意を決したように口を開く。その言葉にメリシャは嬉しそうな表情を浮べた。フィルは黙ったままシェシに目を向け、次の言葉を待っている。


「まず、まだ疫病にかかっていない人たちだけでもペルバストから避難させてはどうでしょうか。もちろん、巫女の皆さんも一緒です。疫病の予防を理由にメリシャ様の命令で避難させれば、それぞれの部族に受け入れてもらえるのではないでしょうか?」

 シェシが自分の提案を口にする。メリシャとフィルが言い争うところなんて、見たくなかった。

「シェシ、それはできないよ」

 だが、フィルよりも先に口を開いたのはメリシャだった。

次回予定「メリシャの意思 2」

せっかくのシェシの提案を「できない」と言うメリシャ…

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