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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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フィルとテト 2

神殿の状況を聞いて怒るフィルだったが…

「…」

 フィルは難しい顔で腕組みしつつ、ちらりとリネアに視線を送る。

 リネアが口元に笑みを浮かべて小さく頷いたのを見て、フィルは仕方なさそうに肩の力を抜いた。

 メリシャとリネアがテトを受け入れているなら、フィルに異論はない。


「フィル、どうかな?」

「わかったわ」

 …疑ってても始まらない、か…フィルは内心つぶやいた。

 

 フィルの賛成を受けて、メリシャは自分の服の裾をぎゅっと握っているテトの頭を撫でた。

「にゃっ?!」

「テト、怖がらなくていいよ。フィルもテトのことを責めてるわけじゃないんだよ」

 メリシャに言われたテトは、おずおずとメリシャの後ろから出てくる。


「テト、怖がらせてごめんなさい。テトの事情も知らないで、勝手に勘違いしたわたしが悪かった…許してほしい」

 フィルはそう言って微笑むと、頭を下げてテトの手を取った。


「いいにゃ。…神殿の様子を聞いたら、フィルが怒るのも仕方ないにゃ」

 テトも上目遣いにフィルを見上げ、きゅっと手を握り返した。


「お腹も減ったし、まずは食事にしましょうか。テト、わたしたちの世界の料理を御馳走してあげる」

 小さな猫には、まず餌付けである。


 しばらくして、テーブルに夕食が並んだ。用意したのはもちろんリネア。シェシも手伝った。

「こんな料理、見たことないにゃ」

 ちょこんと座ったテトが首を傾げて目の前の料理を見つめている。


 神であるテトは、本来食事をする必要はない。だが、フィルたちと同じで食事ができないわけではない。昔は、彼女を信仰する民たちから捧げられた供物をおいしく食べていた。

 だが、並べられた料理は、テトが知らないものばかりだった。いい匂いはするが、味は想像がつかない。

 

「リネア、これがリネアたちの世界の料理なのかにゃ?」

「はい。前の世界で、私達が食べていたものですよ」


 少し懐かしそうに言いながらテーブルの真ん中に置いたのは、柔らかく焼かれた卵の生地の上に、細かく刻んだ玉ねぎやセロリなどの野菜が散りばめられた料理。前世界の帝国に由来する卵料理『パティナ』だ。綺麗な焼き色のついた卵の部分がふんわりと膨らんでスフレ状になっており、香ばしい香りが立ち上っている。


 かつての仲間、ラミア族のテミスのレシピによる香味野菜のパティナ。アヴァリスで手に入る野菜を使ったので、厳密に同じではないが、フィルたちにとっては思い出深い料理だった。

 他にも、サエイレムでよく食べていた料理…鳥肉のローストや白身魚の香草焼、葉野菜のサラダ、豆のスープなどが並べられている。


 シェシも含めて5人でテーブルを囲む。

「せっかくのリネアの料理だから、話は後にして、まずは頂きましょうか」

 くんくんと匂いを嗅ぎ、待ちきれない様子のテトに、フィルはくすりと笑った。


「食べていいにゃ?」

「どうぞ、お召し上がりください」

 リネアが微笑むと、テトは目の前にあった豆のスープにスプーンを突っ込んだ。すくったスープにふーふーと息を吹きかけ、冷めるのが待ち遠しいように口へと運ぶ。


「すごく美味しいにゃ!」

「慌てて食べなくても大丈夫ですよ」

 リネアがパティナを取り分け、テトの前に置いた。

「これは、パティナという卵料理です。私たちの大好物なんですよ。テトの口にも合うといいのですが」


「初めてにゃけど。美味しそうにゃ」

 スプーンを握り締め、ぷるりとした卵をすくい上げ、口に運ぶ。その瞬間、カッ!とテトの目がまんまるになる。


「なんにゃ、これは!こんな美味しいもの初めてだにゃ!」

 テトは皿に盛られていたパティナを、ガツガツと掻きこむように口に運び、ペロペロと皿まで舐めてから、リネアに差し出す。


「もっかい欲しいにゃ!」

「どうぞ」

 リネアがすぐにお代わりを盛りつけ、テトに差し出す。テトは満面の笑みで受け取り、またすごい勢いで食べ始めた。

次回予定「フィルとテト 3」

仲良くなるには、まずおいしい食事から…

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