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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第2章 猫神の都
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フィルとテト 1

久しぶりのフィル様登場。


※累計90,000PV超えました。

読んでくださる方々のおかげです。

ありがとうございます!

 アヴァリス王城に到着して、まっすぐメリシャたちの部屋に案内されたテトは、待っていたフィルと初めて顔を合わせた。


「わたしはフィル。神獣と呼ばれた九尾の力を継いでいます」

「テトは、この地の神バステトだにゃ。テトを神殿から出してくれたことを感謝するにゃ」

 まずは礼儀正しく挨拶を交わすが、テトはしばらくの間フィルをじっと見つめ、にこっと笑う。


「フィルと呼んでいいにゃ?テトのこともテトと呼ぶにゃ。言葉使いも普通でいいにゃ」

「わかったわ。テト、よろしくね」

 どうやら、フィルが気安く応じてくれる相手なのか観察していたらしい。フィルも苦笑を浮かべてテトに言った。


「で、どうして神様を連れて帰ってきちゃったの?」

 フィルはメリシャに尋ねた。

「それがね…」

 メリシャは、ペルバストに着いてからの出来事を簡単に説明する。町の様子、神官たちの横暴、巫女たちの境遇、そして玉藻がテトを連れてきたこと。


 神官たちの横暴ぶりと巫女たちの境遇を聞いたフィルは、明らかに不機嫌な表情を浮べる。そして、じろりとテトを見た。フィルの怒気を察知し、テトはサッとメリシャの後ろに隠れる。


「テトは、どうしてそんな連中に加護を与えていたの?テトはヒクソスの民を守る神様じゃないの?」

「フィル様…」

 強い口調で言うフィルの肩に、そっとリネアが手を添える。


「知らないにゃ。テトはずっと神殿から出られなかったにゃ…!加護なんて与えた覚えはないにゃ!」

 メリシャの腰に抱き着きながら、テトは必死に弁解した。


「フィル、少しいいかの」

 リネアからするりと抜け出た玉藻が、テトの隣に立った。

「テトがいた場所は、石を積んで造られた四角錐の形をした妙な建物での、しかも目に見えぬ壁で覆われておったのじゃ」

「…?!」 

 フィルの表情が変わった。石で造られた四角錐、『ムル』と呼ばれるその建造物をフィルは知っている。


「何か心当たりがあるようじゃな」

「メネス王国のオシリス神殿にも同じものがあった。そこも見えない防壁で守られてたわ」

 オシリス神殿で、巫女長ネフェルがいた場所だ。彼女は防壁で閉じ込められているわけではなかったが、神の力を地上にもたらす役目を持ち、神殿から離れることは許されなかった。実質的に閉じ込められているのと同じだ。


 神の力、それはメネスではムルを通じて地上にもたらされ、魔術の根源として利用されていた。バステト神殿で神官たちが得ていたという加護も、同じようなもののように感じる。


「フィル、そこにも神様がいたの?」

 メリシャの質問に、フィルは首を横に振る。


「いいえ、そこに神はいなかった。けど、『魂の井戸』っていう得体の知れないものがあった。ネフェルはオシリス神がいる冥府につながっていると言ってたけど…」

 フィルも、この世界での神という存在について考えてはいた。今後、メネス王国と関わる時には無視できないとは思っていたが、まさかヒクソスの国内にも神がいるとは思っていなかった。


 幸い、テトはこちらに友好的なようだが…神という存在は、本当に味方と見做してよいのだろうか。そもそも、神というのはヒクソスや人間といった地上の民をどう思っているのか。

 テトを疑っている、というわけではない…どう扱えばいいか困っている、というのが本音だ。


 テトは、自分の意思で神官たちに加護を与えていたわけではなさそうだし、神官たちの横暴ぶりも知らなかったようだ。むしろ、神殿に閉じ込められ、その名と力を利用されていた被害者とも言える。


「フィル、ボクはテトからちゃんと話を聞いた方がいいと思う。その上で、力を借りられるならそうした方が良いんじゃないかな」

 自分の後ろに隠れて、フィルに目を向けているテトをちらりと見て、メリシャは言った。

次回予定「フィルとテト 2」

テトが、ずっとムルに閉じ込められていたと知ったフィルは…

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