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傾国狐のまつりごと-食われて始まる建国物語-  作者: つね
 第1章 ヒクソスの新王
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メリシャの考え 3

メリシャを襲撃した戦士二人をどうするのか。

(リネアよ。ここで甘い顔をすると示しがつかんぞ)

(ですが、部族長の護衛に付くくらいですから、彼らはおそらく優秀な戦士です。今後のことを考えると、若い戦士を失うのは得策ではないのでは?)

 リネアの指摘も一理あると玉藻は思案する。

 訓練された戦士は一朝一夕では育てられない。今後、メネス王国と争う可能性を考えると、戦士が一人でも多く欲しいのは確かだが。


(だがな、メリシャを王として信頼していないのであれば、またいつ謀反に及ぶかわからぬ。……いや、…簡単に処罰するより手懐けてしまうのも良いかの…)

(玉藻様、何か良い方法を思いつかれたのですね?…良かったです)


「ウゼル殿、罪人を庇い立てするなら、部族自体に叛意ありと見做すことになりますが」

 玉藻との相談は伏せたまま、リネアはじっとウゼルを見つめて処罰の話を続ける。


「決して叛意などありません。ただ、彼らは若く優秀な戦士です。彼らを失うのは、部族としてもヒクソスとしても大きな損実。儂の責任で二度とこのようなことは起こさせないと約束いたします。どうか…」

 リネアはちらりとメリシャとフィルを振り返って小さく頷いた。二人が頷き返すのを見て、ウゼルに視線を戻す。

 処刑するつもりはもう無いが、それは無罪放免という意味ではない。当然、何らかの処分は行うが、それもメリシャの役に立つようにうまく利用できるようにしたい。


「ウゼル殿、王たるメリシャを襲った以上、その罪を問わないわけにはいきません。しかし、今はメリシャを王とし体制を固める方が大切な時です。此度の件は、後日、改めて判断することにしたいと思います」

 リネアは一旦処分を棚上げすることを告げた。

 …猶予を与えるから、王に対する叛意はないことを示せ、ということか。リネアの言葉をウゼルはそう理解した。


「メリシャ、これで良かったですか?」

「うん、いいよ。ありがとう、リネア」

 メリシャはウアス杖でカツンと床を突いた。


「改めて処罰を言い渡すまで、彼らの身柄は部族長たるウゼル殿に預ける」

『はっ』

 揃って頭を下げたウゼルとシェプトに、他の部族長や戦士たちもその場に跪いた。もはやメリシャが王となることに異議を唱える者はいなかった。


 部族長会議が解散となった後、メリシャはサリティス、シェプト、ウゼルの三人を部屋へと呼んだ。


「最初に言っておくけど、ボクたちはヒクソスがセトと呼んでいる神様じゃないから」

 砕けた口調になってメリシャは言った。

 だが、口調よりもその内容に驚いた三人は、呆然として言葉も出ない。特にサリティスは絶望とも言っていい表情を浮かべている。


「だけどボクたちは、こことは違う世界で神と呼ばれていたことがある。ボクはアルゴス族、フィルは大妖狐九尾、リネアは巨竜ティフォンと呼ばれていた。…ボクたちは、世界を渡る旅の途中だったんだけど、サリティスたちの召喚儀式によって、この世界に呼び出されたみたいなんだ。…そうだね、例えるなら、道を歩いていたら突然横から引っ張られて、知らない家の中に引きずり込まれたようなもの、かな?」


「メリシャ、その言い方はあんまりじゃない?…人さらいみたいに…」

 フィルがくすくすと笑いながら言う。

 だが、フィルたちの意思に関係なく、いきなり見知らぬ世界に呼び出されてしまったのだから、例えとしてはあながち間違ってはいない。


「この世界もヒクソスも、わたし達には関係ないけれど……呼ばれたのも何かの縁だし、わたしたちはヒクソスに力を貸してもいいと思ってる」

 フィルの言葉に、おぉ、とサリティスは表情を明るくする。だが、シェプトは冷静に尋ねた。


「フィル様とリネア様が神の如き力をお持ちなのは、この目で見ております。…メリシャ様もまた何か力をお持ちなのでしょうか?」


「ボクはフィルやリネアのように強いわけじゃないけど、未来を見ることができる。ボクの目は、百の未来を見通すことができるんだよ」

 孔雀の羽根の模様に紛れてメリシャの服を彩っていた百の目が、花弁がほころぶように開き、一斉にその視線をシェプトに向ける。

 己の全て見透かされてしまうような感覚に、シェプトは思わず息を飲んだ。

次回予定「メリシャの考え 4」

メリシャは自分が王として、ヒクソスたちを導かんとする未来を語る。

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