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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
「単話4」
98/287

雪猫

寒い日が続いていますね。

コタツにミカンという日本的な風景って未だにあるのでしょうか。

ちょっとミカン買ってきます。


本項のタグ:「雪景色」「雪」「猫」

 

 まっさらな新雪をまっしろな猫が歩いている。

 うっすらと足跡を残して、ほっそりとしたシルエットで。


 ぴんと伸びた鍵しっぽが時折揺れて、その足が止まる。



 じっと前を向いたまま、片耳だけが向きを変えている。

 視界の端にある雪だるまの動きを聞き取るように、しばし黙考するように。



 何も語ることもなく、どこにも動き出すことのない雪だるまに軽く尾を振って、まっしろな猫が再び歩き出す。


 日の差している雪を避けるように、その縁の影の中を悠々と歩いていく。




 いくつもの家を抜けていくつもの道を越えてまっしろな猫はまっさらな新雪の上を歩いていく。

 人が歩けない場所もまっしろな猫には立派な道だ。

 垣根の隙間。

 庭木の枝の上。

 塀の上も立派な道だ。



 新雪のない塀の上で立ち止まり、道の座るものを眺める。



 雪ウサギ。



 恐る恐る伸ばした指先で触れて、その冷たさに驚いた。

 思わず指先に舌を這わせる。


 それでも動かない雪ウサギに、ゆっくりと鼻先を近づける。ちょんと触れた鼻先に僅かばかりに雪がつく。

 痺れるような冷たさに目を瞑り、弾けるように目を見開いた。

 冷えた鼻先を温めるように舌が覆って、冷えた舌を口内に戻して温める。



 それでも動かない雪ウサギを眺めて、やがてまっしろ猫は歩き出す。

 雪ウサギを跨ぐように、壁の上を歩いていく。



 時折雪だるまに耳を向けて。



 時折雪ウサギを跨ぐように。




 やがて真っ白な車の前に差し掛かり、まっしろな猫は足を止めた。


 ひくひくと鼻を動かし、ぴくぴくと髭を動かし。


 そっと真っ白な車の下へと、まっさらな雪に腹を擦り付けながら潜り込んでいく。




 まっしろな猫はそのまま出てこない。






 時間が経って日が動いて、真っ白な車のボンネットに日が差しても。


 そこに乗っていた雪が溶けて滑り落ちても。



 まっしろな猫は出てこない。





 やがて周囲の家が賑やかになった。



 その一つから出てきた車の持ち主が、真っ白な車のボンネットをこんこんと叩く。


 鍵の開いた電子音が、こんこんと叩く音に重なる。



 すると車の下からまっしろな猫が、するりと這い出てくる。



 車の持ち主を一瞥し、少し眠そうな声で小さく鳴いた。

 軽くのびをして、鍵しっぽがぴんと立つ。




 そうしてまっしろな猫はまっさらな新雪の上を歩いていく。



 新雪の上に残る微かな足跡だけが、どこまでも長く並んでいく。






雪景色は美しく、猫はかわいい。

この世の真理ですね。(妄言)


猫バンバンしてね。という宣伝? かも? 皆さん、車に乗る際はご確認ください。

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