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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
かくれんぼ【夏のホラー2021】
72/287

「404」

【夏のホラー2021】の【かくれんぼ】という題材で書いています。

それ系の言葉を使っていればOKかなぁ、という緩めの基準なので、若干テーマとはズレているかもしれません。



本項のタグ:「夏のホラー2021」「かくれんぼ」

「404」「それ系の言葉が見つかりません」

 

 ある日、彼女が消えた。


 その声は残っている。

 その姿もそこにある。

 けれども彼女は魂を失ったのだろう、その中身が別の誰かになっていた。



 楽し気に笑う声を聞いて一緒に笑う日々が懐かしい。

 今では別人のように笑う声が楽し気なのは全く笑えない。


 優しく語る声に癒された日々が愛おしい。

 今では別人のように囁く声に怒りさえ覚えてしまう。


 切なげに歌う声に涙した日々を振り返る。

 今ではその歌声が耳を通り過ぎていくだけで何も感じない。


 2Dから3Dになり、画面越しの姿はより鮮明に滑らかに所作を伝えてくる。

 なのにその一つ一つが彼女ではない誰かにしか見えない。




 だから彼女を探すことにした。



 同じ髪色は見つからない。

 だから同じ髪色を用意した。


 同じ衣装も見つからない。

 だから同じ衣装は手作りした。


 同じ目の色も見つからない。

 だから義眼を用意した。




 そうして画面越しの誰かを見続けながら消えてしまった彼女を探した。



 何日も。

 何日も。


 何ヶ月も。




 時折、彼女の面影を見つけては確かめて見たこともある。


 それでも彼女は見つからない。



 まるで最初からいなかったように。


 頭の中に思い描いていた彼女と、画面越しの彼女にある違和感。

 それがどうしても納得出来ず、諦めきれずに彼女を探した。




 そうしてある日、彼女の声を聞いた。




 全く違う髪色で。

 全く違う制服を着て。

 全く違う目の色で。

 楽しさなんてカケラも無い目を見せた彼女。



 そんな目をした彼女を見て、救わなきゃいけないと思った。


 それができるのは他にはいない。

 そういう確信があった。

 だって誰も画面越しの彼女が偽物の彼女だと気づいていないのだから。




 だから、彼女を救けるために一生懸命調べた。

 名前。

 住所。

 バイト先。

 好きなアーティストや配信者。

 家族構成。

 間取り。

 それ以外にも、あらゆることを。



 公表されている身長や体重とは少し誤差があったけれど、あれは彼女だ。

 目も髪も違うけれど、同じ声を出していたことがあったから。



 あの声をもう一度聞きたいと、話しかけた。

 怯えたような困惑するような目を向けられて、彼女らしくないと思った。



 だから、彼女らしくなるように整えようと思った。


 髪色をあわせて。


 衣装も合わせて。


 汚らしい色の目も取り替えた。




 涙して見つめてくれる彼女の頬を拭い、優しく笑いかける。

 彼女のように。



 彼女のように優しく語りかけ、歌い、囁き、笑う。


 画面越しに流れてくる偽物の彼女の歌声がとても心地いい。

 今度こそ本当に本物の彼女がここにいる。

 これまで何度も偽物だったけれど、今度こそ本物だ。



 大丈夫。

 何も心配はいらない。




 そう彼女に笑いかけて、画面に映る偽物の彼女を消した。


 偽物なんか消えてしまえばいい。



 本物の彼女もそう思っていることだろう。

 それはこれから、ゆっくりと確かめていけばいい。








あれ? かくれんぼを連想させる言葉って入ってなくないか?


ということに投稿しようとした時になって気づいたので、気づかないフリをしています。


で、でも一応ホラーにはなっていると思うんだ。

(論点が違う)



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