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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
「単話3」
63/287

ある日、耳が生えてきた

ツイッターで某ゲームキャラの「耳」について論じる漫画を見て書いてみた話。



本項のタグ:「耳」「雷の寓話で聞いたような話」「お好みはどれですか?」

 

 目覚ましに起こされて寝ぼけた頭でテレビをつける。流れてくるのはいつもの新人ニュースキャスターの辿々しいアナウンス。



 そんないつもの朝がある日、壊れた。



 ニュースキャスターの言葉がわからない。

 ニャーニャーという声に特番だろうかと画面を見れば、映っていたのはいつもの新人。

 その綺麗な顔は引き攣って、視線は不安に揺れている。口からはニャーニャーと言葉?を発し、手元にある紙を読み上げていた。



 その頭についているのは、猫耳のカチューシャ。

 バラエティ色が強くなった昨今のニュースでも、そんな格好が許されるのは芸人くらい。

 新人キャスターがなにやってるんだ?と疑問に思うが、まるで普通のニュースのようにそのコーナーが終わった。



 スタジオへと戻ってきた映像にはベテランキャスターの男女とコメンテーターが二人。

 全員カチューシャをつけていた。



 ベテラン二人は犬だろうか。コメンテーターのうち政治学者だという老人はウサギだろう。芸人崩れは顔立ちのせいか牛に見えるが、ロバにも見える。

 ニューステロップが流れて、文字は普通に読めているのを確かめた。その新しいニュースについて、スタジオの四人がワンワンキャンキャンモーモーと、思い思いにコメントしていく。



 全く何を言っているのかわからない。



 テロップは意味がわからない。

 大規模な言語障害が世界的に発生。文字は読めるが言葉が通じなくなっていると、テロップが流れていく。

 それなら何故このニュース番組は普段のように論じているのか。そんな疑問に囚われて、パジャマから着替えることさえ忘れて座り込む。




 しばらく見ていてわかったことは、彼らも全く会話による意思疎通ができていないらしいこと。番組に頻繁に流れるテロップが字幕放送のようなものだということ。リアルタイムで流れるそれは、時に打ち間違いが混ざっていること。

 このチャンネルのジョーク放送ではなく、どの放送局も同じ状況だということ。国営放送で再放送しているドラマでさえ、出演者全員がカチューシャ付きになっていた。



 時代劇なのにカチューシャ。

 あまりにシュールで意味不明な時代劇がなんだか面白く見えて、気づいた時には最後まで見てしまった。

 今後の番組の案内が始まり、ボウバウと鳴くようなナレーションが流れ出す。何の番組なのかわからないが、仕事に遅刻することはわかった。



 慌てて立ち上がって携帯を掴み、会社に電話しようと思って何と言えばいいのか考える。

 世界がおかしくなったので、ちょっと会社に遅れます。いやそれならもう会社なんて休めばいいだろうと、まだ寝ぼけているのかと頭を振った。



 この状況に答えが欲しくてチャンネルを回してみても、誰もがカチューシャをつけたまま困惑顔で番組をこなしている。もちろん、何を言っているのかわからない。

 とりあえず会社にはメールで伝えるほうがいいだろう。頭がおかしくなりそうなので休みます。しばらく仕事ができません。

 そんな言葉を打ち込んでいたら、ふと言葉が聞こえた。



 カチューシャをつけたアイドルグループが、普通に歌っているコマーシャル。

 その歌声がいつもと同じで、思わず画面を凝視した。中学生だか高校生だかわからないような、女の子たちが十数人。普通の言葉で歌っていた。




 一過性の幻聴や幻覚だったのだろうか。




 自分の頭は大丈夫だろうかと、不安に頭をおさえて気がついた。

 歌い踊るアイドルの言葉だけがわかったのは、自分の頭にも同じカチューシャがついていたから。





 ハハッ。





 思わずそんな笑いが口から溢れた。







耳って言われて思いつくのは福耳くらいなんだけれど、ケモ耳に福耳ってあるのかしらん?


(そもそもケモ耳の耳たぶってどのあたりだ?)



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