世界の外の雑な話(5/5)
被造物にとって造物主への反抗ってデフォルト設定されたものかもしれません。
そういう意味では転生したヤツが予想外の行動をとるのは必然なのでしょう。
本項のタグ:「チートとか迷惑です」「酒でも飲もうか」「グチリとキキ」
「それで? ちゃんと説明してもらいましょうか?」
「たははっ、ごっめぇーん」
気楽な調子で謝罪を投げて、それで済んだとばかりに酒に手を伸ばすのを睨みつける。
転生させようと思って取り出したまま忘れていたダンジョンが、異世界チートをプレゼントしてくる相手の正体だった。
私が創る世界が元々の世界に似通っていたため、受け入れ先として選ばれていたらしい。
そんなことを説明して、代価として異世界チートを渡そうとしてくる相手も着座させる。
「それで、何で私の世界に似通ったものをあなたが持っていたのよ? 私はあなたにダンジョンをプレゼントした覚えはないんだけれど?」
問い詰める言葉に、酒を注ぐことで誤魔化そうとするのを笑顔で返す。
酒を飲み続けては口籠り、まともな答えが出てこないので、別の当事者から話を聞くことにした。
……何で正座しているのかしら?
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いくつもの兄弟姉妹が陳列されているのを見て確信した。
ダンジョンとして生み、世界から引き剥がしたのが誰なのか。
受け入れて貰おうとして異世界チートをプレゼントし続けていた自分の行動も、理由がわかった。
自分が誰の世界を模したダンジョンだったのか。
どれだけの想いが込められているのか。
根ざした世界から剥がされても、その世界の創り手を見つけ出すほどに育ってしまうほどの。
それは自分というダンジョンを創り出した、創り手の思い。
陽光の柔らかさや優しい風や愛らしい生物を内包した、世界を突き抜けるほどに深いダンジョン。その一つ一つに込められた思いを伝えるために、自分が世界から剥がされたのだろう。
それは例えば、出せずにいたラブレターの山を勝手に投函されたようなものかもしれない。
自分の創り手が羞恥に悶絶しているのを見ながら、このくらいの意趣返しはしてもいいだろうと言葉を連ねていく。
◆△■▽◆△■▽◆△■▽◆
「……ひとおもいにとうめつしやがれください……」
羞恥に崩れ落ちた姿を見ながら、自分がどれだけ思われていたのか今更ながら理解していた。
涼しげに淡々と元ダンジョンが語る言葉が、それに追い討ちをかけていく。
全身が熱いのはお酒のせいだけではなく、自分を思いながら何度もダンジョンを生んだという暴露のせいだ。
私たちにとって世界を創るのは珍しいことではないけれど。
それが同類を増やすほどのことになると、自分を思いながら擬似生殖したと言われるようなものなのだ。
当事者が悶絶しているから、こちらは平静を装っていられるけれど。
「……この……元ダンジョンさんを、さっさとあなたの世界に戻しなさい」
「あい」
真っ赤になって身悶えつつも、それは元創り主。
軽く指を振るだけで、正座して説明を続ける姿が消えた。
並べられているダンジョンの雛型に追加されたものを眺めると、その大きさと細やかさがよくわかる。
どれだけ丹念に想いを込めて創り出したのかも、よくわかってしまった。
まじまじとそれを見ていることで、そこから想いが読み取られていることがわかったのだろう。
「……くっ…………殺せぇ……殺しやがれください……」
肴に酒を飲みながらそんなものや悶えている姿を見ていたせいで、少しあてられたのかもしれない。
「このダンジョンが入る世界を、今度一緒に創る?」
悶えていた姿が固まったのを見て、どういう意味のことを言ったのか理解して、全身が熱くなった。
今度から少し、酒を控えよう。
顔が真っ赤になっていくのを感じながら、同じように真っ赤な顔を見つめる。
まぁ、たまにはそんなことがあっても、いいか。
とうめつしやがれください。
という言葉がなんだか気にいっています。
使う機会が全く思いつきませんが。




