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暇潰市 次話街 おむにバス  作者: 誘唄
「単話3」
58/287

世界の外の雑な話(3/5)

異世界転生って、自我がいつ目覚めるのかによって話の展開が変わってくると思いませんか?


本項のタグ:「チートとか迷惑です」「酒でも飲もうか」「グチリとキキ」

「そうそう、転移だけじゃなくて転生もいくつも貰ったのよ。でも、ちょっとね」



 今日もまたご近所さんからのいらないプレゼントの話をつまみに酒を飲んでいると、ふとそんなことを言い出した。

 怒っているというよりも困惑しているような声に、いつもの迷惑行為じゃないのかと不思議に思いながら先を促していく。



「転生した人間って、ほとんどが前世とか全部関係なくなるじゃない。あれって意味がないと思うんだけれど」


「ちょい待ち、なんでそんなことになるの?」




 ◆△■▽◆△■▽◆△■▽◆




 かつては自分の人生で体験したはずのことではあるのだが、それを覚えているわけもなく、自我の芽生えた状態から追体験するというのは新鮮だった。

 そう思えたのは、ほんの一瞬だけだったが。


 赤ん坊というのは泣くことと漏らす事しかできない。


 その事実があと何年続くのか。いや長くても2〜3年だと思うけれど、その根拠もない。両親の耳の長さからしてエルフだと思う。エルフの授乳期ってどのくらいなんだろう。


 暑くても寒くても飢えても漏らしても、泣く以外できない。


 毎日起こる、生前と同年代くらいに見える男女に楽しげに笑われながら下の世話をされるという拷問。

 同世代の女性の乳房に吸い付いて母乳を啜るという怪しげなプレイ。飢えに耐えられるはずもなく、理性とモラルが崩れるのを感じながら、その滋味に涙した。


 それに泣くのも飽きてきた頃、ようやく食事が授乳だけではなくなった。それはさらなる拷問の始まりでしかなかったが。


 祖父らしい髭面のおっさんが、噛み砕いたものを口から出しているのを見て俺は何をされるのか理解した。



 離乳食という拷問が、これから食事のたびに行われる日々が毎日続くのだ。




 ◆△■▽◆△■▽◆△■▽◆




「……もしかして、自我をそのまま転生させてんの? そんなんしたら大抵のやつは壊れるでしょ?」


「そうなのよ。だから転生した記憶も飛んでチートも使えないのね。稀に思い出しても夢だと思うみたいで、ほぼ実害はないわね」


「もしかして、転移転生前に面談して要望聞いたりとかしてないの?」


「しないわよ。自分の世界の人間にだって干渉しないようにしているのに、なんで異世界の人間を贔屓するの? むしろいらないくらいなのに」


「それならなんで転移転生させてんのよ」



 面倒くさそうな言い草に思わず酒を吹き出しそうになりつつツッコミを入れる。



「だってそのまま放置していたら、こっちの気にあてられて神格化しちゃいそうじゃない? そうなってから棄てたら周りにも悪影響がありそうだし。それなら自分の世界で使い潰す方がいいかなって思うのよね」


 そんな返しを耳にして、傾けた酒が溢れた。

 ちょっと思い至るところがあるんだけど、え、ウソ、まさかだよね?



「……あれ? 聞こえている?」


「んぅ!? き、聞いてるよ!」



 ヤッベェ。転生させてみようと思って取り出したヤツ、どこにやったっけ?





現在の自我が保たれた状態だが、逃げることも抗うことも出来ず、髭面のおっさんが咀嚼したものを笑いながら口に押し込んでくる……というのはたぶん拷問だと思うんですよ。

え? 思わない? 本当に?

じゃあ食べさせてあげるから手足縛って(おまわりさーん)

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