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【RE江戸書籍化】異世界から帰ったら江戸なのである【1~4巻発売中】  作者: 左高例
第四章『別れる道や、続く夏からの章』
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外伝『IF/江戸から異世界2:冒険者に就職編』

 ダンジョン。

 と、呼ばれる魔王の地下遺跡は空間異常の汚染が残存している箇所である。

 一部ではその時折構造が革新的に入れ替わる迷宮を差して[不思議のダンジョン]と呼ぶ者も居る。 

 3つの入口はそれぞれ離れて居るというのに、入ればまず同じ最浅層を経由して複数の場所へ進むことになる。

 進めば進むほどに出現する魔物は強力になり、ダンジョンの不可思議度はいや増す。

 中には川が流れていたという報告も、空が見える広場に出たという記録も、気がつけば帝都市街の映画館に居たという証言もあるほどに内部を進んで何があるのかは解明されていない。

 確かなことは、数十年ダンジョンに潜る冒険を行う者が居ても、最深部には辿り着かないということだ。


 様々な傭兵、腕自慢の戦士を雇った帝国だが其れが故に深層部には中々辿り着かない理由もあった。

 例えば、奥深くに現れる魔物の中には竜族の中でもっともポピュラーなドラゴンが出現した報告がある。

 ペナルカンド世界の中でも強力な部類に入るその魔物を倒せば──日本円にして十万円から百万円相当の価値を持つ魔鉱が手に入る。

 しかし野生のドラゴンを倒したならば、その鱗、爪、牙や肉などから旨く解体すれば数百万円の価値を持つ。

 ダンジョンで戦うには割にあわないと言わざるをえないだろう。


 一応だがダンジョンに生息する、魔物という存在の方が幾分か致命傷を与えればすぐに消滅するので殺しやすく、野生のドラゴンは仲間が報復に来る危険性があるがそれも無いので利点はあるのだが、金銭的効率的は野生を探した方が段違いではある。生息域がある程度決まっている野生種と違い、ダンジョンでも必ずしも出現するとも限らないのだ。

 そもそもドラゴンは普通ならば倒すのに腕利きの戦士が数十人か高位の魔法使い複数人が必要なのでそうそう一人で狩ろうなどと云う者は居ないのではあったが。一部の例外を除いて。なお、ドラゴンもエンシェント級になるともう戦闘になれば世界規模で災害が発生する勢いなので迂闊に挑んだら国際手配を受けて裏世界でひっそりと幕を閉じる。

 

 ともあれ、高脅威の魔物程狩る旨味が少なくなるとなれば、奥深くに潜る開拓員の目的は魔物から逃げつつ回収する財宝になる。

 魔物は殺すか毀せば魔鉱に戻るがダンジョンで手に入る道具類はその程ではない。

 これは、ダンジョンの主であった魔王が無生物の召喚士であった為に召喚の精度が異なるのだろう。

 深い場所にランダムで落ちている道具の中には貴重にして高価な物もあり、一財産築いた開拓員も居る。

 例えば帝都で十数店舗展開しているお粥チェーン店[ホーリーカップ]は無限にお粥が出てくる魔法道具[ダグダの大釜]を手に入れた開拓員が開いた店である。

 他にも[黄金の鉄の塊の鎧]を帝王に売って巨万の富を得た者、音楽や映像を魔法的に記録できる[マジカルDISC]とその再生機器の量産に成功した者などが居る。

 

 魔物を倒して魔鉱を得る者、レアアイテムを探してダンジョンを探索する者。そのどちらも、中層程度で目的は果たせるので──中層に高脅威な魔物が時々出現するように、貴重な宝も稀に見つかる──深層まで潜る者はそう居ない。

 中には強力な戦士や魔法使い、神官がパーティを組んで目指すこともあるが割にあわない上に危険、そして何処まで奥が続いているかわからない場所にそう何度も足を運ぶことは無かった。

 魔王の宝物庫と噂はあるが、誰もそれを見た者は居ない。


 ちょっと秘密基地感覚で案内されたことのあるクロウ以外では。




 *****




 クロウとスフィ、そしてオルウェルがダンジョンに初潜りして暫く直線の道を歩いていると、ようやく気を失っていたオルウェルは目が覚めたようであった。

 

「はれひれ……あれ? ええと、ここは?」

「なんだ、起きたのか。ほれ、自分の足で歩かぬか」

「若いもんがだらしないのう」

「酷い違和感を感じるっす……」


 自分より背が低くて年若く見える二人に口々にそう言われて、オルウェルは悲しそうな顔をしながらクロウから離れて立った。

 履歴書を見た限り年齢では祖父母よりも年が上なのだが。長命のエルフなスフィはともかく、人間種族で95歳少年なクロウなどは何の延命・若返り方法を取ったのだか。悪魔に魂でも売ったのだろうか。

 ペナルカンド世界で不老化するには特定の神か天使、悪魔と何らかの契約をするかアンデッド化するかの二択がメジャーである。無論、神魔と契約は相応の対価が必要でその後の人生を縛られるし、アンデッド化も不都合が多いのでそうそう行われているわけではないが。

 ともあれ。

 あたりをきょろきょろと見回しながらオルウェルは云う。


「ええと……ここはダンジョンの中っすね」

「言わんでもわかることを一々確認のう……」

「此奴、村の入口とかで[ここはナントカの村です]とか云う類じゃな」

「ちみっ子老人が苛めてくるっすよお!?」

 

 やけに冷めた対応をされて軽く目に涙を浮かべて頭を抱えるオルウェル。

 もともとオフィスでお茶を淹れたり一時間で出来る書類まとめを終業時間までだらだら伸ばしたりお茶を淹れたりする仕事をしていたというのに、来たこともないダンジョンに派遣された挙句いきなり凶暴な魔物と遭遇して気絶するなど、困惑しているのだ。

 クロウが悲しんでいるオルウェルに問いかけた。


「そういえばオルウェル。研修と言ったがどのような事をするかはまだ聞いておらぬが」

「うううう、ダンジョンに入ってちょっと進んだ所に社員や開拓員を駐在させてる拠点があるっす。いろいろ構造が変化するダンジョンっすけど入り口からそこまでの地点は変わらない事が判明してるっすから……その拠点の周りで魔物と戦って様子を見るだけっすね」

「ほう」


 スフィが首を傾げた。


「というか、入り口の酒場にまで毒象が暴れ突っ込んでくる状況じゃと、その拠点潰れてるのじゃないかのー」

「……」

「……まあ、そうだのう」


 土か鉱石か不明な床に点々と残る毒象の足跡を見て、クロウは頷いた。

 魔剣だから一撃で倒せたものの、かの魔物は亜竜に匹敵する猛獣なのだ。何人駐在しているか不明だが充分に壊滅させられた可能性はある。

 慌ててオルウェルがクロウの肩を掴んで、


「たたた大変っすよ! 助けに行かないと! ク、クロウさん、いきなりでなんですがお願いするっす!」

「うむ……どうせそっちに行く仕事だったから、さっさと向かうか。よっこら」


 クロウはそう掛け声を出すと、オルウェルを肩に担ぐように持ち上げた。次に、スフィを小脇に抱える。

 そして腰に下げた術符フォルダから[起風符]を取り出し、内部に込められた魔力を開放する。

 [起風符]は彼の持っている術符の中でも使い所の少ないものだった。そよ風を自由に発生させる程度にしかクロウには使いこなせない。

 しかしそれの効果と、風に乗る事ができる[疫病風装]の能力を組み合わせると──自由に飛行し幾らでも加速を行えるようになる。

 目を回すオルウェルの悲鳴を響かせながら三人は直線の通路を飛び進んだ。


(これって労災入るんすかね)


 こみ上げる吐瀉物の苦酸っぱい味を覚えながらも彼女はそう思った。

 




 *****



 

 酒場のある入口から暫く続く直線通路、一応ここにも魔物は出るが脅威度の低いなスネコスリか鎧ゴキブリ、味噌スライム程度のもので入り口の堅い木の扉は破壊できないようになっている。

 故に本当の出発地はその先にある駐在拠点からと開拓員は認識していた。

 クロウらは通路を一直線に高速飛行して進む。広さは列車が二車線通れるトンネル程だろうか、あちこちに魔術文字による灯りがあって暗くはない。

 余談だが、廃れていた付与魔法と魔術文字だが世間を騒がせる魔女が使用していたということでその対策と再評価により一部の術が普及するようになった。都市国家クリアエの魔法協会にて所有者不明な研究室が発見されてそこから広まったとされている。

 ともあれその明るい通路の先に、薄紅色に輝く半透明の壁をクロウは見つけた。

 魔力障壁だ。

 その先の空間に居る誰かが──恐らく開拓員が、これ以上魔物を通さないように仕掛けたのだろう。

 しかし既にあちこちにひび割れのような筋が入り、表面から徐々に魔法粒子であるレイズ物質化して消えつつある。

 障壁の直前で急制動をかけて飛行を止める。


「んにゃああああ!?」


 小脇に抱えていたスフィはともかく、肩に載せていた程度で固定が緩かったオルウェルが反動で一人だけ前に吹っ飛び障壁に激突していった。

 硝子が割れるのと同じ音を出しつつ突き破り部屋に転がり込んでいくオルウェル。


「……労災通るかもしれんぞー」


 一応、安心させるように声をかけつつクロウも室内に突入した。

 そこではまだ戦闘が続いている。剣や斧を持った軽鎧の開拓員達が、毛むくじゃらの熊やオークに似た緑肌の怪人と武器をぶつけあっていた。

 魔法使いが二名、燃える粘着性の物質を次々に奥の通路に向けて投射して敵の援軍を防ぎ、もう一人は土魔法で生み出した硬質の石塊をバットのような杖で打撃して巨大な鰐に遠距離からぶつけて気を引きつつ逃げ回っている。

 乱戦だ。テニスコート二面分程の広さの部屋に敵味方合わせて30程の数が入り乱れて争っている。あたりは砕けた机や転がっているロッカーや血の跡が見られるものの死体はまだ無い。

 

「援軍か!? 手伝ってくれ!」


 声がかけられてクロウは狂世界の魔剣を抜き放つが、顔を顰めつつ地面に転がっていたオルウェルを引っ張り起こす。


「おい、開拓員にも人間以外の種族っぽいのも居るが魔物との見分け方は無いのか」

「は、はうう……首に社員証かけてるのが開拓員っすよ! ちょっと光るやつ!」

「そうは言っても乱戦だからのう……」

 

 少しぐらいなら、先っちょぐらいなら刺してもいいかとクロウが判断しかけた時に隣に居るスフィがずい、と前に出た。

 

「私に任せておくが良いのじゃよ。秘跡は魔法と違って融通が利くからのう。意識すれば味方には効果を外せんじゃよー」


 息を吸い込む。


「聖歌[軽やかなる音楽団]より、楽章[寝ていい夢見]──!」


 唄う──。

 それは癒しの聖歌の中でも、眠りを誘う歌だ。

 聴いたものはただ穏やかな演奏と静かな歌にしか感じないが──声とともに発せられる魔力に当てられた魔物は目に見えて動きを鈍らせ、全身の筋肉が弛緩して倦怠感に襲われ足掻けぬ眠りへと陥る。

 通常この歌は癒しの歌の中で精々が快眠を齎す子守唄程度の効果しか無いのが普通なのであるが、スフィが歌えば戦闘中で気が荒ぶっている者でも即眠らせるぐらいに能力は増幅されたのだ。

 クロウは効果を目の当たりにしつつも、


(はて……? スフィの歌ってこんなに強力だったけか)


 と、思う。

 なにせ前に一緒に戦ったのが数十年前なので記憶に乏しい。

 ともあれ、敵らしき魔物は次々に戦意を喪失して倒れ出した。短剣を持った熊戦士(爪で殴りかかった方が強いはずだが)やヌンチャクを持ったオーク、刺々しい外殻を持つ大鰐も目を閉じ、反撃に出た開拓員が致命となる箇所へ剣を刺すと次々に消滅して魔鉱へ戻る。持っていた武器は戦利品として回収される。

 ただ巨鰐に関しては下手な攻撃をして起こしたら危険だということで、クロウが近寄り魔剣で倒した。

 

「まだ寝てない奴が居る! 助けてくれ!」


 盾を持っている開拓員が他に救援を求めている。彼はビームライフルを持ったイルカに襲われていた。進化し地上侵略を行うイルカ人間だ。

 高熱を持つ低密度ビームを半濁音に聞こえる発射音を鳴らしながら乱射している。必死にセラミックの盾で防いでいるがとても近寄れないようである。

 イルカは眠らない。正確には脳を片方ずつ眠らせると言われているので睡眠の歌を受け入れつつ、覚醒しているのだ。


「ええい、保護などするから反逆に来るのだ」

 

 クロウが剣を構えて地面を蹴り駆け寄る。

 こちらに気づいた。ビーム煌めく。フラッシュをバックにイルカの影を見ながら、正確に射線へ魔剣を盾に放たれたビームを打ち払う。速度に反応できた訳ではないが、予め防ぐ位置を決めていれば可能だ。それに低質量亜音速ビームだと風が発生しにくく、疫病風装では避けにくい。

 発射の間隙を狙い片手に持った石塊を投げつける。命中。ライフルのエネルギーCAPを砕き小爆発を招く。

 踏み込んで魔剣で一閃。邪悪なるイルカ人間は消滅して地上の危機は免れた。


「よし、これで全部か?」


 クロウがあたりを見回す。軽い怪我を負ったものは居るが、健在だ。 

 石塊で攻撃をしていた魔法使いの青年がクロウに尋ねる。


「感謝する。ところで一匹、強力な魔物がここを抜けていったのだが……」

「ああ、毒象か。倒しておいたから安心せよ」

「よかった……」


 魔力障壁を張っていたのは彼らしい。坊主頭にバットのような杖を持っているので高校の野球部を彷彿とさせて好感を抱く。

 ふと、クロウが社員証をつけていないことに気づいて聞いてきた。


「あんたらは? 見ない顔だが」

「己れらは今日からの新入社員でな、研修に来たのだ。しかし、最初の拠点とは言うがここはいつもこうなのかえ?」

「いや……何故か奥から中層でしか出ないような魔物が追い立てられるようにやってきたんだ。駐在していた開拓員にも手伝わせたが、正直苦戦していた」


 疲れた様子で、しかし魔鉱の回収は忘れない浅い場所での稼ぎを主にする開拓員を見回しながら、恐らくはここの駐在社員である魔法使いは云う。

 逃げなかっただけ儲け物と見るか、或いは魔力障壁は魔物だけではなく開拓員の退路を断つ目的もあったかもしれない。


「ブラックの気配じゃのう……」

「ううう、内部駐在員にはなりたくないっす」


 オルウェルはきっぱりとそういった。開拓公社では駐在部署に異動することを通称[開拓地送り]という心躍る呼び名で言われている。そう戦闘経験も無い者は送られないが。

 もう一人の魔法使いはまだ警戒して奥の通路を見ていた。煌々と魔力の炎が燃え盛りこれ以上の侵入を阻んでいるが……

 なお、ダンジョンは単なる洞窟ではなく魔王城の地下シェルターでもある為に空気供給システムは万全である。ガス状の毒が長時間留まることも火の燃やしすぎで酸欠になることも無い。

 その時である。

 音が響いた。

 鋼鉄の塊を金槌で殴りつけたような大きな異音であった。

 同時に通路で燃えていた炎が、跡形もなく消滅する。


「な──」


 警戒していた魔法使いが見えない手で引きずり込まれたとしか言い様がない勢いで通路に向かって吹っ飛ぶ。

 炎の消えてにわかに薄暗くなった通路から三叉の金属が突き出された。食器のフォークを馬鹿げた程に巨大にした形をしているそれが、吹っ飛んだ魔法使いの肩に突き刺さると── 


「う、うわああ!? なんだ!? 動かな──動けない!」


 刺した場所が空間で固定されたかのように動かすことが出来ずに、中空に虫ピンで刺された標本のように固定された彼は混乱して騒ぎ立てる。

 足音が聞こえたと同時に、通路から一体の人影が部屋に入ってきた。

 形は人に酷似している。半袖と太ももまでの短いスカートはエプロンドレスを意匠とした形だ。頭部には鼻から上を機械的な兜で覆っていて、[メ]と毛筆で文字が書かれていた。短い丈の袖から見える手足は関節部が球体になっていて、ところどころにワイヤーやエネルギーバイパスが露出している。

 右手に巨大フォーク、左手に巨大スプーンを構えた小柄な少女の形をしていた。

 それは敢えていうならば──メイド型の機械人形。

 首元に社員証が掛かっていない事を確認してクロウは術符フォルダから符を取り出し発動させる。


「[電撃符]!」

 

 気合を込めた言葉を放つのは彼が魔法の発動に慣れていないからだ。熟練した魔術文字使いなら言葉も必要ない。

 発動と共に指向性を持った雷はジグザグに大気を焦がしながらメイドロボの少女へ向かった。

 着弾は一瞬であるが、それよりも先に相手は左手のスプーンを振るう。

 再び鋼鉄を殴りつける強撃音。

 それを発したスプーンの腹に吸い込まれるように、雷は削り取られ掻き消える。

 

「やはり使えんなこの符……」

「クロー!? あれは?」

「魔王の試作型侍女式機械人形[メアリー]だ。イモータルとの戦闘記録を見たことだけはある」


 電撃のいざというときに役に立たなさに失望しながら、そう言った。

 ヨグが現在の万能タイプの武装メイドロボを作る前に作成した二体のメイドロボが居て、戦闘試験でイモータルが撃破した後に地下に封印──何かそのうち面白くなりそうだから廃棄はしなかった──されたとクロウも聞いていた。

 料理担当機械人形のメアリー。主武装として空間圧搾匙[瑠璃瓶るりへい]と空間固定叉[三尖刀]を持つ。そして当然魔王が作った機械なので人類反逆回路を搭載している。 

 顔面を半分ヘッドディスプレイで覆ったメアリーは口を開けて八重歯を見せながら笑う。


「わーい! 人間が一杯だ! お姉ちゃんにお土産で持って帰れる!」

「気をつけよお主ら……持って帰られたらお世話されるぞ」

「どういう注意っすか……?」


 訝しげに聞いてくるオルウェルに、メアリーから顔を背けずに応える。


「監禁されて毎日病原菌入りの飯を食わされる」

「うわあ……厭っすね」


 顔を顰めるオルウェルだったがメアリーは周りを見回して、


「でも多いなーちょっと減らすかー。じゃーん、疫病汚染兵装[瘟丹おんたん]!」

「不味い。スフィ、オルウェル、下がっていろ!」

 

 メアリーがどこからともなく古めかしい機関銃に似た武器を取り出して開拓員らに向けてきた。 

 それに警戒して防御体勢をとれたのは何人いたか、銃口から無数の弾丸が吐き出されて部屋中を踊る。手足を撃ちぬかれて逃げ惑う開拓員の叫喚が響く。

 おまけにこの武器は弾丸に病性が付与されていて末端部に当たっただけで即座に体調を崩し始めるのだ。

 

「あはは! あはははははー!」

 

 無邪気な笑い声を上げながら致命の銃弾をばら撒く。

 ロボット三原則など魔王が守るはずもない。人に危害を加えることにタブーなど無かった。

 だが、楽しんでいるわけでもなかった。決められたプログラムに従い人類に敵対し、決められた人格の通りの性格を演じているだけの人形である。彼女らに魂は無いのだ──基本的には。

 クロウは即座に破壊を決めて瘴気に似た硝煙渦巻くメアリーへ飛行し接近する。

 近づくこちらに銃口が向けられるが速度を最適に上げて最小の自動回避をするクロウには触れもしない。

 魔剣を振り上げる。同時に彼女は左手の瑠璃瓶を振るう。

 音は空間をえぐり固め潰す世界の軋みの音だ。

 それを発生させて彼女は──自身の真横の空間を削り、削った分の距離を瞬間移動してクロウの一撃を回避した。彼女にかかれば削った空間の先にあるものを引き寄せるのも、自分が空間に移動することも思いのままだ。

 メと書かれたバイザーで隠された中の目が輝いているように思える。


「レア者いっただきー!」


 三尖刀がクロウを縫い止めようと襲う。

 普通の武器ならば勝手に服が回避するのだが空間に関わる武装は空間の座標自体に干渉するために上手く発動せず、僅かに袖の端を掠めた。

 触れた場所が固定される。クロウの動きが止まった。

 

「生憎メイドはイモ子だけで充分だ」

  

 クロウは即座にメイドが三尖刀を握っていた右腕を魔剣で切断した。

 これが魔物ならば刃が食い込んだ時点で消滅するが、実体ある敵なのでまだ毀れていない。

 続けて固定された着物を肌蹴て、片方の手を延ばす。丁度メアリーの腹部に触れるように掌底を合わせ、


「発雷」


 仕込んだ電撃符で直接の雷を浴びせた。

 全身からショートした火花と煙を上げ始めるメアリーだが、左手を再び振るうと空間を自在に圧搾する能力を使用してクロウから離れる。

 同時に取り残された腕と三尖刀が自動で復旧するプログラムに従い、彼女の手元に戻った。

 殆ど内部回路を焼き付かせて半壊したようになっている。

 あちこち焦げ付き全身から異常を知らせる音を鳴らしているメアリーだったが、


「ミミミミ見つけた。ゴ主人を見つケタ事をお姉ちゃンに報告……」

  

 言いながら手を振り上げ再び空間を弄る。

 すると匙が削り開いた場所から黒黒とした泥めいた流体がこぼれ出す。彼女の空間操作能力はイモータルの亜空間武装庫にも応用されている技術である。

 

「ソソソそれでは今日は挨拶マデニ。お近づきノ印に、甘イ物デモ──[糖蜜大洪水ボストン・フラッド]」

  

 異空間からこぼれ出ていた液体──どろりとした糖蜜が鉄砲水のように押し寄せてきた。

 まるで蟻の巣穴にホースで水を入れたような勢いだ。部屋に居る全てが糖蜜の質量で押しつぶされかねない。


「まったく、死ぬほど迷惑な奴め!」


 こちらに向けて糖蜜の津波が迫る。

 まず固定されていた箇所に魔剣で触れて解除し、クロウは周囲を見回して落ちているロッカーを拾い上げそれに氷結符を貼り付け離れた。

 彼に可能な最大能力の凍結速度は糖蜜が触れた瞬間に相転移を起こして急速に凍りつき、壁を作る。

 その壁を更に押し寄せる糖蜜が破壊しようとするが次々に氷点が連鎖して──やがて通路方向まで含めた巨大な固形糖蜜の塊に変えてしまった。

 当然、見ていた者達は唖然としている。

 

「ク、クロー……なんかやたら凄い魔法じゃのう。お主魔法使えなかったのじゃー?」

「ああ、イリシアの残した術符でな。街で売ってる冷蔵庫でも使ってるのあっただろ? 氷の符」

「……市販の符ではジュースの氷を作るのが精一杯なんじゃがのう」


 呆れた様子で言う。

 クロウ本人もあまり大出力で使う事は無かったので予想以上に強力に使えて驚いたが、再現されある程度普及している付与魔法の術式と較べても桁違いの力と云えよう。

 これも魔女イリシアの残した魔力あってのことではあるが。


「しかし氷の中から符は掘り出さんといかんな……」

 

 言って、クロウは魔剣で掘ろうとする。刃に触れた箇所のみ氷の魔力を奪われどろりと液になって溢れるので楽だ。

 やがてロッカーまで辿り着いて、べとべとするそれを顔を顰めながら引っ張りだす。

 立てたぬるぬるのロッカーから慎重に剥がそうとして、

 

「む、符までべたついて……よっと」


 引っ張ると、ついでにロッカーの扉が開いた。

 中で肌が青白く冷やし饅頭のような血を感じない質感になった女が眠っていた。


「……」


 シャツの胸元に社員証が付いている。魔物ではない。というか生き物ではない。思いっきり大氷塊を作った魔法の中心に居た、ええと何かだ。

 クロウはそっと目を逸らしてロッカーを閉じた。


「? どーしたのじゃクロー。ロッカーの前で黄昏れて」

「いや、ええと」

「服が挟まっておるぞ。ほれ」


 と、近づいたスフィが閉じたロッカーの扉に挟まっているクロウの服を引っ張ると、再び扉が開いた。

 中に入っている女のような者は確認しなければ生きているか死んでいるか判らないというのに、愚かにも再確認が行われる。

 スフィは見上げて、安らかに睡るようにしている女を認めて、ロッカーの扉を閉じた。

 

「……」

「……」

「とりあえず、お湯でもかけてみるか」

「うむ」


 お湯かけたら生き返った。ロッカーの妖精という妖精種族だったようで、そうそう死なないらしい。



 なお、糖蜜大洪水の際に通路付近で空間固定され助けられずに巻き込まれた魔法使いは残念ながらもう……重度の虫歯になってしまったという。





 *****


 


 結局、クロウとスフィの研修はダンジョンに入って一時間もしないうちに終わりまた二人は入り口の酒場に戻ってきていた。

 オルウェルは報告の為に会社に戻った為、二人はそこで昼食を取ることにした。糖蜜で通路を固められたので暫くダンジョンは立ち入り禁止になるらしい。既に潜っている者が戻るために通れる穴を早急に作る必要もある。

 拾った魔鉱──毒象とボルテックシュートアリゲーターと侵略イルカ男の分を換金して食事代にあてることにした。

 

「おお、結構な金だのう」

「小一時間でざっと半月は暮らせる稼ぎか。開拓員も集まるはずじゃのー」


 周りで見ていた他の開拓員は、


(そうそう毒象とか遭遇しねえし楽勝でもねえから……!)


 と、心のなかでツッコミを入れる。

 とりあえず受け取った金の多くは入り口の複合施設──[第一魔鉱採掘場]というとても味気ない名前だが──にある商業の神が行っている銀行に預けようということになり、ようやくクロウも女友達から生活費を払ってもらう日々から開放されるかと期待したが、


「……いや、やっぱりスフィの口座に預けよう」

「なんでじゃー?」

「己れの口座凍結してたし……下手に振り込んだら差し押さえ食らうかもしれん」


 そういう理由でやはりスフィに財布は預けるクロウであった。

 食事も頼める酒場でメニューを眺めると、さすがに都会だけあって豊富な食材が揃っている。

 折角なので江戸では食べられなかった物を頼もうかと目を滑らせるが、


「……このミノタウルスのビーフステーキって。確かあれ牛成分頭だけじゃなかったか? あと[骨の肉]ってのもあるがどこの肉使ってるんだ?」

「エルフ味の野菜サラダって嫌なもんもあるのう……確かに食人種族からすると野菜感覚なんじゃが」


 などと言い合い、無難にパンジャンドラム肉(羊肉)のシチューと名物であるダグダのお粥を注文した。有名な魔法のアイテムであるダグダの大釜は麦粥でも米粥でも自由に出せるらしい。

 歯応えが柔らかなものを頼んでしまうのは老人だからだろうか。

 シチューの材料に使われている羊は体内に1.8トンの生体炸薬を持つために飼育、解体が難しいが肉の味はすこぶる良い。生物として致命的に間違っていると評判の特殊な生態をしている。

 緑茶も注文して二人で向き合って食べていると、テーブルにローブで全身を隠した何者かがさりげない動きで近づいてきた。

 少し屈んだかと思った瞬間、テーブルに立てかけているクロウの魔剣の鞘を掴んで持ち去ろうとする。

 一瞬で毒象を仕留めた強力な剣を奪おうとする輩である。一日目だが、それだけ印象に残る活躍であったのだ。

 だが、


「──ぬわあああ!? 」


 鞘を持ち上げて数歩進んだ途端に全身から力が抜けてローブの男は気絶し床に倒れ伏した。

 周りで様子を見ていた他の開拓員が騒ぎ出し、とりあえずひったくりを起こそうとするが完全に意識を失っている。

 気味が悪そうに床に転がった魔剣を見る目が集まる。

 クロウは何とも無くそれを拾い上げて、


「呪われておるからのう、これ。触らんほうが良いぞ」


 と、気無しに言ってまたテーブルに立てかけて食事を再開する。 

 この世界に於いては強力な武具には呪いがかけられていることも多いが──例えば呪いの剣だとしても柄を握らなければ呪いの効果は発揮しなかったりするというのに。

 狂世界の魔剣の場合は鞘──それもクロウが数日前に自作した木製のそれを触っただけで、剣と因果が繋がり魔力の剥奪という呪いが発生するのである。魔王ヨグが渡すときに嵌めていた概念遮断の義手でも長くは持てない。

 ペナルカンドでは殆ど全ての知的生命体は魔力を持っていて、それを完全に失うと気絶する。クロウは地球人で魔力など無いから平気なのだが、この世界に於いては魔剣は他人に盗まれることは無いだろう。

 猜疑やら畏怖の目で周りが見てくるが、そんなものは魔女イリシアと旅をしていれば慣れたものである。

 魔女が魔剣に変わっただけだ。

 

「そういえばクロー。あのメイドとは知り合いかえ?」

「ううむ、知り合いのOBというか……魔王城で昔働いていた武装機械人形だな。確かあれがメアリーで、姉っぽいミザリーという奴も居るはずだ」


 クロウが自虐気に紹介していたヨグが見せた姉妹メイドロボのスペック表を思い出す。

 姉のミザリーは背が高く髪を膝まで伸ばしつつも、スカートの中には脚が無い妖怪のようなメイドだった。顔を覆っているバイザーは[ミ]と書かれている。主武装は空間裁断鋏[金蛟剪きんこうせん]と空間歪曲布[戮魂幡りくこんはん]を持つ、切断と拉致監禁能力に秀でたお世話ロボである。

 そもそもなんで執拗に魔王がメイドに戦闘能力をくっつけようとしているのか不明であったが、「ロマンだよくーちゃん!」と意味不明の答えが返ってくるのはわかっていた。

 それでいてメアリーはサルモネラ系の菌を食事にうっかり混ぜてくるしミザリーは主をベッドに固定してくるのでまったく欠陥としか言い様がない……らしい。実際に稼働しているのを見たのは今日が初めてだったが。

 ともあれその二体がダンジョンを徘徊して人類へ反逆心をむき出しにしているようである。

 

「なんというかクロー。言っちゃなんだが、目をつけられた気がするのじゃー」

「嫌だのう。ポンコツロボの世話になったら一巻の終わりだ」


 イモータルの世話になっても駄目人間になりそうで困るのだが。あれは上級引き篭もりの魔王用である。


「しかし糖蜜、こっちに流れた分は凍らせたがダンジョンの奥にも結構な量流れこんでいったが、中の連中は大丈夫かのう」

「なぁに、ダンジョンというのはかなり道が枝分かれしていて上ったり下ったり崖なんかもあるらしいのじゃ。相当運が悪く無いと大丈夫じゃろう」

「そうだな、はっはっは」




 *****




 一方その頃、ダンジョンの中。

 暗闇に全身の鎧を擦らせ、地面を引き摺る足音を立てて進む大きな影があった。

 手には疲れきった表情の生首を載せている。時折天井の低い場所もあるので、巨鎧の上に載せていてはぶつけるし足元が見えないのだ。

 デュラハンのイートゥエは壁に書かれた矢印を見つけて顔を輝かせた。


「ようやく! ようやく人の痕跡が見つかりましたわ! これでこの矢印を逆に辿っていけば地上まで戻れますわよ!」


 ちょっとした三叉路になっている小部屋で喜びのあまり小躍りしている。

 もうこのダンジョンで迷ってどれぐらいの時間が経過しただろうか。太陽を長らく見ていないので感覚がない。

 複雑怪奇に枝分かれして繋がり時に空間跳躍まで発生して迷わせるダンジョンは、マッピング専門の旅神司祭を連れて行くパーティも居るほどに迷いやすい。

 実際にイートゥエ以外にも迷子になった開拓員は多く居るのだろうが、それらは魔物に襲われるか食料が尽きるかして行き倒れて死ぬのだろう。

 彼女は幸いにそこらの魔物に負けぬ頑丈な鎧と、食事を取らなくても死なないデュラハンの体を持つのでとにかく長時間迷子のままなのだが。

 ひとまず目印を見つけて喜んでいたイートゥエだが、遠くから何か音が聞こえて持っている首を傾げさせた。

 ご、とか、ざ、という音だ。

 音の次には風が来た。甘い匂いをした空気が押されて物体よりも先に到達する。

 

「ま、まさか……」


 イートゥエが強張った顔を通路に向けると──何処から流れてきたか糖蜜の洪水が押し寄せて彼女の体を打撃しそのまま流して行く。ここではない、どこかへと。


「なんでダンジョンに糖蜜が流れていますのよー!? もう嫌ですわお風呂入りたいいいい!!」


 これから数日、湧き水の泉を見つけるまでひたすら鎧の隙間がベタベタしたままダンジョンを彷徨うデュラハンの姿があったという……

 彼女の冒険は続く。





 ******

 

 



 何処かで誰かが泣いていようが、この世は人情紙風船である。

 暫く入れなくなったダンジョンを後に、クロウとスフィは開拓公社から社員証も貰い日常を過ごしていた。


「ううむ、五年という期限があるのだがなあ、どうも最初から躓いている」

「仕方なかろうクロー。それにこう云う回り道が正しいルートだったりするんじゃよー」

「そうだなあ。まあ、為るように為るか」


 と、言うことで二人は帝都を観光して廻ることにした。

 ここに来て数日は生活を整えるのに近所しか行っていないのである。

 スフィは平坦な胸を張り、


「案内なら私に任せてみよ! ……と、言いたいところじゃが……」

「どうした?」

「私もあんまり帝都について詳しくは知らんのじゃよ。こっちに来てずっと隠居してたからのう……遊びに出かけることなんか……無かったから」


 顔を曇らせるスフィを慌ててクロウが頭を撫でて宥める。

 時折クロウが地雷を踏んだり自分で踏みに行ったりと、中々50年の月日によって溜まった寂しさは消えないようだ。


「暗くなるな暗くなるな。……五年の間に色々出かけようか、スフィ。それぐらいバチは当たらんだろうさ」

「──うんっ」


 そして二人はまず観光ガイド本を買いに、本屋へ向かうのだった。

 しかしながら、自分の口から説明したいというスフィの思いにより立ち読みでガイドブックを完全記憶してしまったのだが。


 二人がまず向かったのは帝都三番街にある、帝都でもっとも大きなデパートメントストアのうちの一つ──という表記がガイドブックでされていた。正直わかりにくい──デパート[商店街デストロイ]である。

 その正面門の前に立って五階建ての巨大な店構えを見上げながら、燦然と輝く[商店街デストロイ]の文字が目に入りクロウは口を馬鹿みたいに半開きにして聞いた。

 

「なあスフィ疑問があるのだが」

「クロー。多分それはガイドブックに書かれてあった『客の9割がまず思う疑問』で間違いないと思うのじゃが」

「ああきっとそれだわ」


 名前である。

 [商店街デストロイ]である。

 創業者はどれだけ商店街に恨みを持っていたというのか。


「ともあれ近くにある三番街の商店街を潰す。ただそれだけの理由で建てたデパートらしいのじゃよ。商店街にある種類の店は全部デパートに設置してのー」

「なんとも迷惑なような……で? どうなったのだ?」

「うむ。商店街の店と激安値下げや過剰サービス合戦が続き、そのうちデパート側が通商破壊を行ったり商店街が共産主義や邪教崇拝に目覚めたりし出したあたりで国から調停を受けてな、『続けると殺すぞ』と。とりあえずは落ち着いたのだが社名はそのまま……といったところじゃな」

「馬鹿が建てた店で買い物するのか……己れら」


 何はともあれ、ダンジョンに持っていくリュックやライトなどの道具も揃えなくてはならない為にとりあえず入った。

 中は綺麗に磨かれた大理石の床と様々に並べられた商品が程広い感覚で置かれている大店だ。

 昇降機まであり、その前の掲示板に各階の売り物が記されている。一階が家具等雑貨、二階が食料品、三階が衣料雑貨、四階がサバイバル物品、五階が飲食店である。

 ダンジョンのある街だけあって、四階には野外生活に役立つものから武具の量販店まであるようだ。それ以外にも登山用品や釣り道具も同じ階にある。

 そこへ向かおうと昇降機の上階行きに乗り込んだ。


「凄いな、エレベーターまであるのか」

「うむ、ガラス張りで景色も良い……ほらクロー、下を見れば動力も見えるぞ」

「……あれが?」


 スフィの頭の上からクロウは下を覗き込むと、取っ手のついた柱を必死に回す男達とその周りで鞭の音を鳴らしている者が見えた。

 有り体に言ってフィクションでよく見る[何やってるかわからないけど強制労働させられてる奴隷]の光景だった。

 軽く目眩がする。


「ディストピア感が……」

「勘違いしとるようじゃがあれちゃんと日雇いじゃからな。単純労働で共同作業だから面接もそこそこにその日から働ける。給料だって1日働けば2日3日は食っていける。世界中から人が集まるこの都市での労働政策の一つとして認められておるのじゃよー」

「いや見た目のインパクトが凄いからのう」


 なお、鞭役は[居たほうが緊張感がある]という理由で存在し交代制である。

 二人は四階で降りて様々に並べられた道具を見回し感嘆の吐息を漏らした。

 簡易テント、防水寝袋、多目的ポシェット、簡易燃料コンロ、靴ずれを無くすパウダーや塗り薬、魔術文字光源、手投げ弾各種など多数の商品がある。

 

「こりゃいい。必要なものはここで買おう」

「そうだのう。あ、商品お届けサービスもあるぞ。教会に送ってもらうのじゃよ」


 言い合ってダンジョン探索に役立ちそうな物を見繕う。

 スフィがリュックを見ながら、


「しかしのう、クローに荷物を持たせるとびゅんびゅん飛び回った時に散らばりそうなんじゃが」

「うーん……でもスフィが持てる量は少ないしなあ」

「戦闘が始まったら荷物を一旦捨てるかのう」

「そうだなあ……ま、暫くはオルウェルがついてくるみたいだからあいつに持たせるか」

「にょほほ、若いもんが働かないといかんからのう!」

 

 言い合って、この場には居ない開拓公社社員に押し付ける算段をするのであった。

 一回目の研修で充分に魔物を倒せる能力を持つと判断されたクロウとスフィであったが、一応ということで上司命令が出されて十回目まではオルウェルが同行するという連絡は受けている。本人は目の幅涙を流していたが。

 武器なども売っていたがまだそこまで金銭的余裕があるわけではないので買うのは後回しにした。 

 クロウの場合だと片手で投擲できる物があれば便利だと思ったのだが、暫くは石塊で良い。

 五階にあるデパート直営の見晴らしの良いレストラン[商店街が滅ぶ風景]でオークカレーを昼食に取った。これはオークの肉が使われているのではなく、オーク料理長が作ったスパイスの調合法により作られたカレーである。

 トマトをふんだんに入れたフレッシュな酸味のある味わいだが、刺激的なニンニクを炒めた風味と丸鶏の出汁が効いて、


「うまい……」


 のである。 

 辛さも選べて、スフィの甘口も少し貰ってクロウは食べたが、どちらも深い味わいをしていてこちらのほうが辛口よりも大衆向けであるようだ。甘いほうがどろりとしていて、辛いほうが少しシャバシャバしたカレーの粘度だったが薄まっているとかそういう要素もなく、旨い。 

 隣のテーブルに居たニンニクが苦手なタイプの吸血鬼も「たまげた」と声を出して消滅していたほどだ。まあ、夜になれば復活するだろう。多分。

 吸血鬼は血を生力に取り込む種族だけあって、ニンニクを摂取すると血中のヘモグロビンが破壊される効果が体質により過激なダメージを受けるのだ。


 満足の行く食事を取って二人は今度はガイドブックに乗っていたスタジアム近くに来ていた。

 帝都国立競技場という大きな総合運動グラウンドで、毎日何らかの競技が行われている。全天候型でここまで大きいものはペナルカンドでも類を見ない。

 二人が付いた時に丁度行われていたのは、


「ええと、ペン回し世界選手権じゃなー」

「これはあまり興味がないのう……」


 と、見物には行かなかったのだが。

 しかし日程の貼られたポスターを見てクロウが目を引いたのは、


「むっ……野球もやっておるのか」

「そうじゃな。週に2日、夕方から夜にかけて」

「見たいのう……」

「見に来ればよかろう」

「そうか」


 クロウは少し嬉しそうな声を上げた。  

 彼が居ない間にペナルカンド世界でも野球文化が発生したようだ。なにせ、他世界からの漂流者も居るので似た文化は発生する。

 特に魔法使いに人気で、前に見たダンジョン駐在員の魔法使いもそうだが魔法の杖をバットにして、様々な属性を打球に乗せた一撃は見た目も派手で盛り上がる。死傷者は時々しか出ない健全なスポーツである。ご安心ください。

 ポスターを見ていた二人の後ろを子供達が走って行く。


「向こうでプロ野球選手がインタビュー受けてるってよ!」

「見に行こうぜ!」


 などと言い合っているのを聞いて、クロウがうずうずとしているのでスフィも笑いながら、


「私らも行くか」

「うむ」


 誘い、そちらへ向かった。

 スタジアムの正門をバックに三名の球団関係者が多数の記者の前で写真を取られたりマイクを向けられたりしている。 

 華やかなエルフの女と、ユニフォームを来た人獅子と、ペンギンに似たもこもこした燕人間だった。


「オーナーのルビーよー」

「4番ピッチャーのカンヌなんぬ!」

「マスコットの燕人ハルヒ様だ!」


 三名はそれぞれ宝剣とクレセントアクスバットとバズーカを掲げて、


「我ら生まれた時は違えど優勝する時は同じであらんことを……!」


 と、唱え合っていた。

 帝都のメジャー球団、[ショッカンダイトクーズ]の三人である。

 遠くから呆然と見ていたクロウの袖を、引き攣った笑みを逸らしながらスフィが袖を必死に引っ張る。


「ク、クロー。もうよかろう。離れよう今すぐに」

「あれってお主の母親と義弟の……」

「知らなかったのじゃ! ええい何をやってあるかあの馬鹿女は!」


 憤慨しながらクロウを引き摺ってとりあえず逃げるように厄介な親類から離れるスフィであった。

 エルフの母親はともかく他種族の義弟らは寿命が来ていてもおかしくないはずだが、特殊な契約により三名の寿命が同じになっているのだ。代わりに、誰かが不慮の事故死をしたら他も死ぬのだが。

 彼女は新聞をとっているが、お固い記事の物なのでスポーツ記事は殆ど書かれていないので母親が同じ街で球団を立ち上げている知らなかったのである。


 ……その新聞を購読している理由も、定期的に探し人の欄にクロウへメッセージを投稿して為であったが。

 今何処にいるのか、とか。

 ちゃんと食事はとっているか、とか。

 たまには顔を出せ、とか。

 誰かクロウを見たら教えて下さいお願いします、とか。

 そんな他愛の無い事を、何十年も──届くはずは無く、返ってくることも無いと思いながらもずっと。墓に祈りながら、それでも信じたくなくて。

 

 

 


 *******


  

 


 帝都中央公園にあるモニュメントをクロウは見覚えがあった。

 公園の中央に一本、30m程の柱が立っている。それは帝王であり勇者であり狂戦士であった男が使用した、軌道エレベーターの主柱を加工し武器に変えた棒──[天柱]である。

 対神格ミサイルの直撃を受けても歪まず弛まず、あるいはそれでも直っているこの物質は形状記憶自己増修復カーボンで出来ていて一度に完全破壊しない限りはいくら使おうが時が過ぎようが壊れることはない。

 地面に刺さった天柱の根本まで観光客は来れるようで、次々に近寄り写真を撮る者も見えた。なお、普及しているのは魔法カメラなので技術的なことはご安心ください。


「おや? あの天柱……地面の近くに柄があるな」


 クロウは人の手で握れるように加工されている箇所が誰にでも触れる場所にあることに気づいた。

 スフィはクレープを片手に応える。


「ああ、必要なら誰か持って行ってもいいと帝王のアピールじゃな。あんな重い棒を持ち上げられるわけは無かろう」

「確か身体強化魔法では最大倍率で256倍に強化できるんじゃなかったか? それを使えば持てそうなものだが」

「クロー……」


 何故か呆れたようにスフィが見てくる。


「お主、魔法学校で働いておったのに……良いか、身体強化魔法は便利で魔力運用法を嗜めば使えるがその倍率は1.5倍から2倍程度が殆ど。難易度は倍率を増すごとに乗算式に跳ね上がり10倍使える者など殆どおらぬ。オーク種族は結構得意らしいがな。256倍は理論だけ発表されて、発表した魔学者も心臓が1回動く以上の時間使ったら死ぬと言っておったぞ。

 そんな魔法をしかも他人に問題なく使えるのはそれこそ魔女じゃなけりゃ無理なんじゃよ」

「ううむ、己れさり気なく危険だったのだなあ」


 首に巻いた、体に害が及ばないように段階的に必要なだけ強化される[相力呪符]を撫でながら応える。これが無い時は魔女に普通に強化されていた。

 スフィがクロウを上目遣いに見ながら聞く。


「クローなら持ち上げられるのではないか?」

「あんなん持ってもなあ。ダンジョンで使えぬし、モニュメントを壊すのもな」

「そうじゃな」


 納得して対城級武器から離れた。

 中央公園は城から続く正面通りに作られていて帝都でも一番華やかで人気のある場所である。 

 クロウとスフィはベンチに腰掛けてクレープを食べながら歩きや公営馬車などを乗り継いで移動した疲れを癒していた。

 人が多いだけあって様々な人種がごった返している。中には着物に似た衣服の東洋人風顔も見られるが、帝都の港から行き来できる東方の島国の人種だ。ニンジャやサムライは居るが、どちらかと言うとアメリカ人が考えた和風といった雰囲気の国である。

 仰げば帝城がすぐに見え、時折は帝王が無駄に塔のてっぺんでライトアップされたりする。その時は魔法ぶち込んでいいらしい。落ちても死なないから。

 少しばかり帝都を回ってみたが、


(跡形も無いなあ)


 と、クロウは呆れと感心を合わせたような感情を持つのであった。

 魔王城であった形跡など、地下ダンジョン以外に無くなっている勢いで街が敷設されているのだ。

 公園で人形劇をやっているのを遠目に見える。

 帝王が世に憚る災厄存在、[外法師ヨグ]に[魔女イリシア]、[第四黙示クロウ]を次々に倒していく実際とは異なる話だ。

 これは帝王ライブスが書いた自伝に乗せているサクセスストーリーな為に歴史として刻まれている。

 なお知名度の低い侍女イモータルはひっそりとベンチで冷たくなっているところが発見され、鳥召喚士と闇魔導師は病院で息を引き取るという謎の内容でむしろ笑えた。

 遠目で見ながらも、寄りかかってくるスフィが疲れているようで徐々に息がゆったりと正確になるのをクロウは悟った。睡る彼女を起こそうとはしない。




 *****




 目を瞑り体を預けたスフィは幸せな気持ちであった。

 出会えなくなったはずのクロウが側にいて、ただそれだけで生きている実感が感じられる。

 ずっと。

 ずっとずっと、会えなかったら長い寿命が尽きて朽ちるまでに待ち続けただろう人が来てくれたそれだけで救われた気がした。

 会えなくなるぐらいなら一緒に行こうと言ってくれた。

 寂しがるぐらいなら過ぎた時間の分楽しもうと誘ってくれた。

 どんなに嬉しかっただろう!

 本当は……それでも本当はもっともっと近づきたいのだったが、これからまだ時間があると──



『本当に?』



 声が聞こえた気がして、スフィは目を開けた。

 帝都中央公園、ベンチ。

 そこに彼女は一人で寝ていた。 

 手を振り回す。

 触れる場所には何もない。

 体に触れていた温かさは消えていた。

 当たり前だ。

 彼はもう何十年も前に──


「違……」


 死んだのだから。

 

「く、ろ」


 寂しいと思う心が見せた幻覚に。

 自分が思う理想の誰かに。 

 一人で話しかけていただけなのだから。

 だから──気がつけば誰も居ないのである。


「あ、ああ」


 そんなつまらない嘘を信じ続けられるはずがない。

 くだらない欺瞞はすぐに晴れる。 

 そしてまた今日から──1人で過ごす日々が始まる。


「いや……」


 無駄な希望さえ持たなければ。

 勝手な妄想さえしなければ。

 いや、昔に──意地を張って拒まなければ違う今があっただろうに。


「くろ……」

 

 涙を流しても応える者など居ない。

 取り返しがつかない事をねだっても無意味だ。

 そう思ったスフィの──心が、罅を増やしながら、今にも壊れそうに震えていた。




 *****




「ふう……凄いな帝都。公園のトイレだというのにウォシュレットだったぞ」


 クロウが僅かな時間離れて向かった手水から戻って来た時、ベンチに座っているスフィがかたかたと震えていた。

 虚ろになった目からは涙を流し、口からは意味を持たない言葉を流し続けている。

 

「スフィ!?」


 慌てて近づいて両手を握り、正面から顔を見る。

 しかし、視界よりも思考に囚われた目にはクロウの姿も写っていないようだった。過呼吸になりかけているらしく、浅い呼吸を続けて汗を浮かべている。

 何があったのかはすぐにクロウも知れた。

 知らぬ間に自分が居なくなって不安になったのだ。

 しかし、短い時間だというのにこれほど精神が弱るとは──クロウも想定外だった。 

 懐から紐を通した一文銭を揺らして、スフィに呼びかける。

 

「大丈夫だ、安心しろ。己れはここにいる」

 

 こんな子供だましにでも頼らねばならない程に、彼女の心は弱っている。

 いつも気楽に明るく接して来るのはその反動のようなものだ。

 背中を撫でながら思う。


(ゆっくりと、スフィと過ごさねばな……)


 悲しみが晴れるように安心させねばならない。

 このままでは不慮の事故でも寿命でも事件でもなんでも、自分が居なくなった時に大変なことになる。 

 彼女は過去に依存している。人は何かしら悲しみに折り合いをつけて進む事が肝要なのだが、それを行えそうになかったことに気づいた。

 いつか、自分との思い出がスフィに取って前に進む糧になるように。泣いてその後を生きていかぬように。別れが辛くてもまた笑えるように。

  

 呼びかけ、背負い、教会に帰る頃には、スフィはまた元の調子に戻っていたが、クロウは決意した。




 後日。

 スフィがクロウの部屋──教会の一室を私物置き場に貸した──を掃除していると、いろいろダンジョンの魔物図鑑や解説本を買った中に紛れていたある本を発見した。

 [簡単! 誰でもできる強力催眠術][催眠術で心を自在にする100の方法]の2つである。他にも[マスターオブジゴロによるヤンデレ対策]という本もあったが、それは彼女の目に付かなかった。ちなみにそっちは雨次への土産用だ。

 マッハな勢いでいかがわしさ満点であった。


「クロー……こういうのは中学生ぐらいならともかく……どうかと思う」


 食事の席でそうコメントして聞かせたが、酷く微妙な顔をしていた。

 彼なりに催眠療法の勉強のつもりだったのだが、どう見てもアレな感じの本だったのは否めない。単純な艶本や春画を見つかるよりつらい。彼の尊厳と引き換えにマインドコントロール技術は上昇した気がした。




 ともあれ、シャロームの指輪を手に入れ大事な友人の魂を開放するのと同じく──スフィの心の闇を払う事を、クロウは目標とするのであった。

 

 スフィとの友情イベントを多くこなして彼女の闇値を下げねばならない。彼の異世界生活は始まったばかりなのである……






 *****





「あはは! お姉ちゃんも気に入ってくれた!? あの御主人!」

「うん……探して、連れて、私達の御主人様になってもらおう……」

「楽しみだなあ! 早くダンジョンに来ないかなあ!」


 ダンジョンの隠された密室で、二体の機械侍女は言い合う。

 認識するは特異点と魂の繋がりを持つ人間──クロウ。 

 彼女らが彼女らである為に必要な御同類パーツの一つ。


 引き寄せ、固定し、切り落とし、詰め込む。そうすることで廃棄された侍女は完全になると判断する。


 機械人形は欲する。求めているのは、プログラム故か自己判断か。

 魂無き彼女らは、明るい魂の輝きを。






 *****




 ある荒野にて。

 黒煙を上げ爆発する邪教を祀る古城を背景に二人の対照的な人物が脱出していた。

 一人は黒い修道服にでっぷりがっちりとした巨体を包んだ、顔付きは牙が口から出てて豚か猪寄りに見えるオークの神父。

 もう一人は面頬とマフラー以外は胸にサラシ腰に褌を巻いただけの格好をして、背中に巨大鎖鎌を担いだ忍者少女であった。

 並んで走り爆発が連鎖する古城から逃げつつも爆音に負けぬ大声で会話をする。


「神父殿! 貴殿のおかげで悪魔シャックスに生贄を捧げ信仰する狂信者どもを壊滅させられたでござる! 感謝の極み!」

「なんで僕は旅をするだけでこういうのに巻き込まれるのかなあ……!?」


 汗を掻いて息を切らせながら大股で走るオーク神父。

 彼はいつも通り帝都に向かって旅をしていただけだというのに、邪教団に拉致され生贄にされかけてなんとか脱出し、同じく罠に嵌まり捕まっていたクノイチの少女を助けて逃げる羽目になったのである。

 羊舎で生贄用に飼われていたパンジャンドラム羊を利用してシャックスの偶像と祭壇を完全爆破しつつも、悪徳の使徒の囲いを振り切り崩れ落ちる城から劇的に脱出したところであった。

 船旅をすれば海賊に襲われたり馬車旅をすればモヒカンに襲われたり地震が起きて古代地下遺跡に滑り落ちたり謎の集落に纏わる怪しげな儀式に巻き込まれたりと、オーク神父は旅先でやたら事件が起きるのが悩みであった。

 このクノイチは世に蔓延り人を不幸にする悪魔を退治している闇の忍びの一族だという。


(なにそれ怖い)


 あくまで普通のオークである彼としてはさんざん振りかかるトラブルは無茶ぶりもいいところなのだが、なんとかこれまでも運の良さと現地協力者のおかげで長年生き延びている。巻き込まれること自体が運が悪いのかもしれないが。

 マフラーで口元は隠しているがオーク神父へ頼もしさを感じて友好的な笑みを浮かべている忍者少女が名乗る。


「それがし、ユーリ流鎖鎌術継承者候補、サイスノスケと申す者でござる! 是非神父殿にお礼をば!」

「いや……別にお礼とかそういうのいいから。あと服着たほうがいいから」

「本来ならば褌とサラシも脱いで戦うのがユーリ流の秘伝なのでござるが……」

「昔の知り合いにも居たけどあれだよね。彼はおっさんだったからまだギャグだったけど女の子がやる流儀じゃないよねそれ」

「し、忍びとはいえそれがしも女子。見せたならば相手を殺すかヨメに貰って頂くかしかござらん」

「いや別にまったく脱げとは言ってないからね僕。話聞いてないよね。なんで顔を赤らめてるのこの子」


 真顔でげんなりしながら言葉を返すが、器用に走りながら彼女はしゅるりとサラシの留め具に手をかけた。


「しかし神父殿の頼みとなれば……!」

「どうして僕は変な子しか出会わないかなあ……!? 素敵なオークの雌とはいつ会えるんだあああ!」

「あっ待ってくだされ神父殿ー!」


 速度を上げて帝都へ向かう街道を爆走する神父とそれに付いて行くクノイチのサイスノスケ。

 事件に巻き込まれる度に出会った女性と一方的なロマンスが発生しかけるのだが、未だに好みの子とはさっぱり出会えないオーク神父であった。





※つづかない

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