34話『薩摩梃子入れ大作戦』
「薩摩の印象を良くしたいのです」
「……」
九郎は目の前のでっぷりとした大店の主の言葉を咀嚼して、なんとか脳にたどり着かせた。
とりあえず置かれた茶を啜る。爽やかな苦味が口に広がり、鼻に抜けるようだった。
「む、上手いなこの茶。何処のだ?」
「阿久根の茶でございまして。うちの店でも取り扱っております」
「そうか、よし買っていこう。それではまた……」
「お待ちを!」
がしっと九郎は手を掴まれて引き止められた。
ここは銀座界隈の西紺屋町にある薩摩からの商品を取り扱っている店、[鹿屋]である。
船も持っている大店で、大阪にも支店があるという。茶、煙草、砂糖などの高級嗜好品から芋焼酎や鰹節などの庶民的な食品まで手広く扱っている。
九郎は二度ほどここの主人と関わりがあった縁で今日招かれたのだったが、
「というか何故に己れを」
「九郎殿の事を調べさせて……ああいえ、すみません悪い意味で怪しんだのではなく、これはもう職業柄みたいなもので……とにかく、いろいろ人伝に聞いた所、奉行所と火盗改の密偵としてあちこちで活躍をして、江戸でも一、二番の版元である為出版にも出入りの仕事を持ち、寂れた蕎麦屋をあっという間に繁盛させたとか……」
「そう聞かされると江戸に来ていろいろやったのう……」
目を瞑れば過去が走馬灯のように浮かんでは消えた。そう、これまでの出来事は決してムダなんかじゃない。いざ、輝かしい未来へ……
意味不明なトリップ寸前だった九郎を黒右衛門は呼び戻す。
「それで梃子入れの話なのですが」
「……ええと、つまり薩摩を好印象的な感じに世間に知らしめたい、とかそういう?」
「左様でございます」
「どうしてまた」
九郎の質問に黒右衛門は深々と頷いて声を小さく告げてきた。
「いえ……公然の秘密というかだいたい関係者は知ってる暴露話なのですが、薩摩は借金大国でして」
「ほう」
「ま、私も正確な数字はわかりませんが少なくとも藩が抱えている借金だけで数十万両以上は……大きい声では言えませんが」
「ううむ、他の藩の財政状況はわからぬが……」
そうだとしてもその借金の量は、
(多い……)
と感じるには充分であるようだ。
七十七万石の大大名であり、砂糖の専売、琉球(更にそこを通して清とも)貿易、金山など利益を得る手段はあるのだが、様々な悪条件が重なり借金は毎年膨らむばかりなのが現状である。
だいたい七十七万石とはいうものの火山灰が年中降り注ぎ土壌は貧弱、米は育ちにくく台風が直撃すれば一気に飢饉になる土地であり、更に江戸に参勤交代は尤も遠い場所にある。大大名としての格式を守りつつ参勤するのにいかほど金がかかるものか……
そこまでは黒右衛門も語らなかったが、苦しい状況なのは九郎にもわかった。
あと殆ど他人に近い九郎に其のようなことを明かしていいのだろうかとも思ったが、九郎が誰かれ構わずに吹聴したら後ろから薩摩武士がダッシュで襲ってきそうなので、云うつもりはない。
「しかしここ最近はどこそこの藩どころか幕府すら貧しい、徳川御三家も水戸と尾張は破綻寸前、紀州は幕府の援助で生き延びている始末。いったい誰が儲かってるんだというぐらいでして」
「まあ……お主ら商人であろう」
「ごほんごほーん! 薩摩のものをより多く売り交易を更に発展させることが藩の為にもなるのです!」
「はあ。それでいめぇじあっぷ、か」
九郎は面倒臭そうなため息をついた。
確かに薩摩の印象が蛮人の如きだったら交易もままならないし、売っている品物の品質も疑われるであろう。しかし、一般人である自分が手を貸してどうにかなるものだろうか。そこまで薩摩に肩入れする理由もない。
それを察知して黒右衛門も、
「勿論、助言して頂ければ礼金はご用意しますが……」
「ふぅむ、それならば一応、幾らか考えてみるか」
少しばかりはやる気を出して九郎は思案しだした。
なにせ右手を怪我しているもので、遊びを制限されてしまっているから暇だったのだ。晃之助と剣術の訓練など出来ないし、碁や将棋を打つにも痛みが気になって集中出来ない。本を読んだり飯を食いに行くにも片手では不便ときている。
経験から云うと、体内の不老魔術の効果──体調を徐々に最善化するというもの──もあってひと月以内には治ると思うのだが、それでも暇は暇であった。
たまには他所の店に口を出すのもいいかもしれない。
折角やるのだから無理やり楽しそうな方向に意識を持っていかなくてはならない。
薩摩イメージアップ大作戦!
(……字面から浮かぶ、駄目だこれ感はなんであろうなあ)
左手で頭を掻きながらそう思った。
「ま、まずは薩摩人に対する悪い印象というが……」
と、九郎が考えつつ、黒右衛門と特徴を挙げて言い合う。
「乱暴だとか」
「芋侍とか」
「言葉が通じない」
「冗談を言えない」
「すぐに殺しに来る」
「毎日何かしら命を散らす」
「叫ぶ」
「朝から叫ぶ」
「焼酎しか飲まない」
「犬を食う」
二人はやや無言になり、どちらからともなく咳払いをして、順番に決められたように発言した。
「これは当時の江戸に住む一部の人から見た偏った印象であり、実際の薩摩藩士の行動や生態と必ずしも一致するものでは無い」
「私達は薩摩に好意を抱いている故の忌憚ない意見を言い合っているだけであり、悪意は存在しませんなあ」
発言し終わって、よしと頷いた。これでケジメを申し付けられることはないだろう。
そして話の方向性を戻すに、
「確かにこれだけとっつきにくいと、貿易にも影響が出ようが、この印象を全部覆すのは難しい気がしてならん」
「そうでしょうか……」
「だってお主考えてもみよ。雅な言葉遣いで麗しい仕草をして薄味の京料理と清酒を好み扇子より重いものを持ったことが無く月に涙し風に囁きかけて夜に叫ぶ薩摩人が居たらむしろ気色悪いであろう」
「夜に叫ぶのは要らない気が。いやしかし、確かにそんな薩摩人は死罪になりますからねえ」
「死罪まで行くか」
「ええ、間違いなく」
断言する黒右衛門に九郎は顔を曇らせる。恐るべき土地だ。
なお、余談だが薩摩人は通常であっても夜も叫ぶ。後の西南戦争の時代には薩摩藩士が夜討ちで例の叫び声を上げながら示現流で襲い掛かってくる事が多々あり、明治政府軍にきついトラウマを植えつけたという。
中には猿の鳴き声が聞こえただけで薩摩の襲撃だと勘違いして壊走した部隊も居たほどである。
それはともかく、これらの要素をマイルドにして一般に受け入れやすくすると……
「ううむ……なんとかならぬかなあ」
「難しいですか」
「そうだのう……いや、待てよ」
九郎は現代でご当地を盛り上げるために何をやっていたか必死で思い出した。
現代日本に居た頃など、おおよそ彼の記憶上六十年程前になるので随分曖昧になっているが、
「ますこっときゃらくたあ……」
「それは……?」
「うむ、名産品や観光地などを擬人化して着飾り印象づけるのだ。ちょっぴりゆるふわ系に」
「成程。まずは無害さを前に出して女子供を対象に誤解させて薩摩を徐々に受け入れさせていくのですな」
「まるで薩摩の侵略計画に聞こえなくもないが、そんな感じだ。可愛いのを作って芝居などをやらせたりするといいぞ」
「素晴らしい提案です!」
どうやら何か感じ入るところがあったようで、九郎に深く礼を述べて感謝の品を渡し、また今度用意ができたら改めて呼ぶということになった。
左手で美味しい黒糖が入った箱を持ちながら九郎は、
「マジでやるのかよ」
とだけ呟いて其の日は[鹿屋]を後にするのであった。
黒糖は子供達に人気で、石燕は焼酎に溶かして飲んでいた。さすがに甘すぎだろうと引いたが。
*****
更に数日後。
例のごとく九郎が[鹿屋]を訪れていて作戦会議室──黒右衛門の自室で再び顔を付き合わせていた。
太っちょの黒右衛門が汗を拭いながらにこにこと経過を告げる。
「この前のゆるふわ系薩摩仮装ですが、とりあえず試験的に完成致しました」
「ほう、それは何よりだ」
「小さな子供から奥方、はたまた武家にも人気が出ること間違いなしでございます」
「大抵たーげっとを広く狙ったら失敗すると思うが、とにかく見てみよう」
九郎の言葉に待ってましたとばかりに、黒右衛門は奥の障子を開けた。
その障子の先には、人が居た。
浅黒く日に焼けた肌、ごつごつとした筋肉質の体、白袴に麻の服と力だすき。鉢巻を巻いた顔は凝視といった表情で固まっていて、ぐ、と顔全体に力が篭っていて何かを堪えたような男だ。
笑顔のまま黒右衛門は紹介する。
「薩摩をまるごと味わってもらう計画第一号、名前を『さつまもん』でございます」
「ちょっと待って」
九郎は左手で頭痛を抑えつつ、右手を伸ばそうとして激痛が走ったことに顔を余計顰めた。ツッコミがしにくい、という特殊な状況で骨折が不利になるとは……!
とりあえず、何を言ったものか。
感じたままに告げることにした。
「のう、ゆるふわ系って聞いたのにどう見ても討ち入り前の薩摩隼人にしか見えない」
「なにせさつまもんですからね。藩邸に頼んで都合してもらった、示現流の達者です」
九郎は残念極まりない目線でさつまもんを眺めた。
殺気立ったその姿は関が原を駆け抜けそうな気迫を感じる。というか気迫しか感じない。ゆるいとかふわいとか萌え四とかそういう要素を全然感じない。
(どうせ薩摩藩で食い詰めた下級郷士が、唐芋ばっかり食う生活よりもと見せ者に成ることを選んだのだろう。身分は侍の癖に毎日芋粥ばっかり食ってる芋侍め……)
「そういう目をしたッ!!」
「だああああ!?」
突然刀を抜き斬りかかってきたさつまもんの攻撃を紙一重で避け、安全圏まで畳が焦げ付くような脚さばきで退避した。
縦に振られたさつまもんの刀は深々と畳の下の床まで貫通して鍔元までめり込んでいる。
恐るべき威力の一撃が、さつまもんを見ていただけの九郎に振るわれたのだ。
黒右衛門がおずおずと告げる。
「相申し訳ない、さつまもんは少々被害妄想があってじっと見られると馬鹿にされたと勘違いして斬り合いが始まるので」
「阿呆かお主、お主ら阿呆か!! そんな狂犬を薩摩から出すな! そしてせめて真剣を持たせるな! 波平の立派な薩摩刀ではないか!」
ひと通り怒鳴り散らして、警戒の色を濃くしながら九郎はさつまもんからやや離れた場所に座りなおした。
そして奇跡的に溢れていなかった知覧茶を一口で飲み干して、きょとんとした顔の黒右衛門と所定の位置に戻ったさつまもんへ交互に視線をやり、口を開く。
「……だいたい、ゆるふわは何処に消えた」
「こう……ゆるりと近づきふわっと襲いかかる的な」
「薩摩的な発想をやめろ。こんな暗黒面に落ちた薩摩剣士隼人を世に出してみろ。薩摩の評判は野蛮な狂人と……あれ? 現状そうであるな……」
それにしても、そこまで認識の違いが合ったのかと嫌になる九郎。
余談だが、実際に居る現代のご当地ヒーロー[薩摩剣士隼人]はこのように凶暴な野生の藩士ではなく、剣は持つが決して相手を傷つけない、悪役とも言葉でお互いに歩み寄りをし、否定ではなく認め合って友とする立派なヒーローである。
「心の剣にやいば無し、道は交わり和を結ぶ」
と、格好の良い決め文句まであるのだが、あいにく九郎は知らないキャラであった。なんとなく名前が出ただけで、とんだ風評被害である。
宣伝はともかく、
「駄目ですか……」
項垂れて黒右衛門は呟く。
九郎は頭を掻きながら半目で、
「これでよしと思ってたのがむしろ怖いが、これではなあ……」
ちらちらと厳しいさつまもんの面を見つつ、言葉を濁す。
明らかに黒右衛門は「ゆるふわ系を売り出す」という過程の為に「薩摩をイメージアップする」という目的を見失っていた。
様々な試行錯誤の後に見失うならまだしも、一歩目で思いっきり踏み外している。
雇われたさつまもんが、冷や汗を流しながら唾を飛ばして怒鳴る。
「わかり申したッ! この一件は、おいが不忠にて招いたしくじりッ! ならばここで腹ば掻っ捌いて詫び申すッ!」
「おい駄目だしされただけで死ぬなよゆるふわキャラ」
「うむッ! よか死に頃じゃ~ッ! さつまもんの腸とくと見よッ!」
「だあああ!」
上半身裸になって切腹しようと刀を己の腹に向けたさつまもんを止めるため、九郎は固めた左拳で当て身を入れる。
怪我をしているとはいえ、余人の放つ当身ではない。
横隔膜を的確に狙った拳が突き刺さり、さつまもんは絶息して、
「ぬぅん……」
と、気を失った。
げんなりとした気分になりながら、腹に爆弾が仕掛けられていた奴の切腹を止めるのが目的のテレビゲームを昔やってたよなあと妙な記憶が蘇ったが、とりあえず座り直す。
「よいか、臓物とか死人が出る見世物は駄目であろう」
「ふむ……では芝居の題目『ひえもんとり』というのも」
「恐るべき程に駄目だ。もっとなあ、着ぐるみ的な……」
少なくとも形状が丸っこかった気がする。マスコットキャラというものは。煮詰まった憎悪を立ち木を打つ形で発散させているようなキャラではない。まあ、恐らく半々ぐらいの確率で。
黒右衛門が頭のなかで検討しながら聞いてくる。
「着ぐるみとは?」
「全身を動物やらに形作った布などですっぽり覆ったものでのう」
「獅子舞みたいに?」
「ま、そうであるな……」
発想としては似たようなものもあるか、と肯定する。
何やら着想は得たようだったので、其の日はそれでお開きと為った。
九郎は渡された土産の高級本鰹節を持って帰りつつ、店をちらりと振り向いて、
「……不安な」
と、呟いたが、彼自身もこの時代の薩摩について詳しくは無いためにこれ以上具体的なアドバイスは出来ぬと諦めて家に帰るのであった。
*****
数日後。
やはり呼び出された九郎が企画会議室で茶を啜り羊羹を摘んでいた。
羊羹はこの江戸中期にまさに大流行した茶菓子で、薩摩からの安定した砂糖供給により製造が容易になったという、奄美の方の血と汗が引き換えな甘味だ。
ほとんどは練り羊羹が主体で家庭で作る事も多かったらしく、当時の料理本などで紹介されている。
九郎は甘い物に目がないというほど好きではないが、目の前に出されると、
「己れは甘いものには鼻が無くてのう」
などと嘯きながら平らげる程度には好んでいる。
しかしなかなかにこの阿久根で採れた茶が美味い。爽やかな風味と口当たりの良い苦味が甘いものにとても合う。薩摩藩では茶の栽培を奨励しており、薩摩北部で当時はよく作られていたそうである。現代では知覧などの南部で作られる茶が有名だが、こちらは明治期になってから開発が進んだ土地だ。
茶を一杯飲み干したぐらいで、別の用事を済ませていた黒右衛門が会議室にやってきた。
三度目となると互いに軽い目配せをしただけで意思の疎通は済みそうな気がした。人類が鳴き声という通信手段を手放す日も近いかもしれない。
「例のものが完成しました」
「うむ……見てみよう」
「承知」
今度はそこはかとない自信を感じる力の篭った目つきだ。
彼が合図すると、部屋にすっとさつまもんが入ってきて襖の前に待機した。
「……さつまもんは続投なのか」
「ええ。それでは薩摩振興要員を紹介致します。さつまもん、戸を」
短い返事だったが、そうまで断言するのならばまあ軽く諦めた。
ともあれ、さつまもんが油断無い動作で戸を開ける。
その先のプレゼン室(九郎が勝手に名付けた)に、着ぐるみは居た。
見た目の印象は芋。
巨大な長球型のさつまいもに、手足が生えていると言った風貌だ。
「これが新たな刺客、[からいもん]です!」
「むっ……かなり正解には近い気がするぞ」
「そうでしょう、そうでしょう。幾ら薩摩武士が芋侍と馬鹿にされようが、江戸の人達はさつまいも──薩摩では[からいも]と云うのですが──が大好物でして。薩摩で収穫したものを船に積み込めば江戸に辿り着くまでに丁度熟成されて甘みが増すのですぞ」
「ほう……確かに馬鹿にされるそれ自体の印象を上げてしまえば良いな」
感心して九郎も頷く。
確かに江戸でもさつまいもを売っている店や屋台が多い。値段も安く、砂糖よりも簡易な甘い食べ物として人気がある。この時代、庶民としては大変珍しいことだったのだが、江戸は肥満の者が多かったとされるのも、このさつまいもの影響だという説もあった。
このマスコットキャラクターをアピールすればさつまいもの売上増進に効果があるだろう。
黒右衛門も嬉しそうにからいもんへ手を向けてにこやかに九郎に告げる。
「呼びかけると可笑しげな動きで応えます。やってみてくだされ」
「ほう。どれ……おい、からいもん!」
九郎は軽い気持ちで呼びかけたのであったが、さつまもんが突如立ち上がって怒鳴り始めた。
「なにィッ!」
「さつまもんがキレたのだが!?」
「自分が馬鹿にされたと勘違いしたのでしょう」
「なんじゃッそん眼はッ!!」
瞬間、再び抜き放たれた薩摩刀が気迫の大絶叫と共に九郎を襲う。こう、遠慮とか前の反省とかそういうのはあっさり怒りメーターを振り切り無かったものになったらしい。
しかしながらこういう自体も考慮して、九郎とて無手にこの場所へやって来たわけではない。
片膝を立てて持ってきたアカシック村雨キャリバーンⅢを鞘に入れたまま左手に構え、示現流の一撃を受ける。
石灯籠を振り回す九郎の怪力であったが、さすがに相手は田舎剣術と馬鹿にされるが、同時に恐れられている薩摩示現流。並みの剣士ならば受け止めても刀が折れるか、押し込まれたまま己の刀の背や鍔が体にめり込んで死ぬと言われている攻撃である。
だが九郎は受け止めた。
代わりに九郎とさつまもん、双方の足元の畳が踏み込みと受け止めに耐えきれず、弾け飛ぶ。
そこで互いの重心の差により、さつまもんは大きく体勢を崩す。其の隙を逃さずに九郎は鞘に入れたままの刀で鳩尾へ打撃を与えた。
「ぐぬう……」
と、さつまもんは倒れる。
ひとまず危機は去った。いや、本当に去ったと言っていいものか、九郎としてもかなり怪しいところであることは薄々自覚していたが、そうとでも思わなければいちいち相手にしている己の行為が虚しくなるのでそう思わざるを得なかったのである。
これをマスコットに続投させているのは、何か大きな圧力がかかっているのか、黒右衛門が視野狭窄に陥っているのか、そのどちらか或いは両方だとしても、被害を被るのが他人──この場に限っては何故か九郎になるというのが問題である。
指摘の意を込めて黒右衛門へ視線を送ると、やおら彼は頷いて、
「では、からいもんの他にもう一体を御紹介致します」
と、九郎の疑問には気づかなかったか、敢えて無視したのか、話を進めた。まだ思考と目線のみで分かり合うには、人類は革新していないようだ。
黒右衛門の言葉に応じて、プレゼン室に現れたのは、またしても着ぐるみ風の者であった。
デフォルメした巨大な火縄銃から手足が生えているといった形である。
「こちらは種子島を元にした薩摩振興要員三号[きもねりん]で御座います」
「名前が出落ちって指摘されなかった?」
「いえ?」
かなり自信があった確認だったが、否定されてしまった。世の中の不条理を嘆くが、そんな何処にでも転がっているものをいちいち気にしてどうするのかと訴えかけて来る深層意識に従って、仕方ないことなのだと割り切る。
怪人・火縄銃マンとでも云うべきそのマスコットについて思案する。可愛らしさにおいてはからいもんに及ばないが、男の子と云うものは少なからず銃に心惹かれる性分がある。硝煙に酔う気質がある。行き過ぎると火消しになるか放火とかしちゃう両極端なものだが。
ヒーローとして[さつまもん]。癒やしとして[からいもん]。怪人系として[きもねりん]。
(揃ったといえば揃ったのだが)
何が足りないのか、何が必要なのか出てきそうで出てこない。B級映画ならば狂人とゾンビと人類に反逆するコンピューターが揃ったような条件ではあるのだが。
九郎が思い悩んでいると、にこにことした黒右衛門が九郎の肩を掴んで、
「それではこれから薩摩藩邸にて、折角なのできもねりんを使って伝統の[肝練り]をやろうという趣向になっておりますので九郎殿もさあさ」
「えっ」
「九郎殿考案として藩士達にも自慢しまくってますから、是非」
九郎の左右の肩を、きもねりんとからいもんが掴んで運び出すのであった。
*****
何故か駕籠に入れられて脱出することなど不可能な状況に陥った九郎はそのまま運ばれていく。
いや、狐に憑かれたふりでもして錯乱し大暴れで有耶無耶に逃げ出すことは出来ないではないのだが、大きく九郎の評判を下げる為にそこまで頑張って逃げるべきではないと判断して大人しくしているのだ。なにせ、黒右衛門は九郎の居候している蕎麦屋の所在も調べている。二度と接点のない相手にならばともかく。
はてどこを現在進んでいるのかと駕籠の外の景色を眺めていると、特徴的な大門が見えた。
(あれは増上寺……ならばここは芝か)
と、九郎は頭に地図を思い浮かべる。
現代で云う港区の辺りは、当時は大名屋敷が多く並んでいた。遊びに来ても面白い場所で無し、あまり九郎は足を運んだことはない。
増上寺から南、然程は離れていない場所にあるのが薩摩藩の中屋敷である。
七十七万石の大大名となれば、借金はあれども江戸に大名屋敷を複数持つのが格式というものである。普通、大名自身が江戸に参勤した際に寝泊まりなどを行う屋敷を上屋敷、別宅扱いや大名の趣味の庭園、或いは倉庫のような様々な扱いを受けるのを下屋敷というが、中屋敷は藩から参勤で付いて来た藩士や大名の家族などが寝泊まりするものであった。
薩摩藩の中屋敷も広く作られていて塀の中には屋敷の他に長屋もある。
正面の御成門前で九郎と黒右衛門は駕籠から下りて、門番に迎え入れられた。九郎らの後ろに、さつまもん、からいもん、きもねりんも続く。あの後あっさりさつまもんは目を覚まして付いて来たのだ。悪の怪人を引き連れた幹部の気分がして、九郎は既に顔が曇っている。
廊下を並んで歩きながら、小声で黒右衛門が告げてくる。
「九郎殿。この藩邸で、一応知っておかねばならない作法をお話するのを忘れておりました」
「入ってからなんでそういうこと云うかのう……で、なんだ」
「話しかけられた時以外は唖のように無言で。言葉尻に突っ込みを入れたりしたら殺されますから」
「黒右衛門この野郎」
改めてとんでもない伏魔殿に確信犯的に連れて来られたのだと告げられて、九郎は太っちょの商人をとにかく睨んだ。
暫く案内された部屋で待つ。きもねりんは何処かへ連れて行かれたため、からいもんとさつまもんを合わせた四人だ。
しかしそこで問題が発生した。からいもんが着ぐるみの形状上の問題で座れないのだ。尻方向に伸び出た芋の型が邪魔をする。お辞儀のような体勢になれば可能だったが、酷く不安定でさつまもんが支える羽目になった。
このからいもんの着ぐるみはやけに重そうである。
芋を支えているという状況にストレスを感じたのか、都合二度ほどさつまもんが刀を抜き放った後に、初老の男が奥の院からやってきて、気の張った声をかけてきた。
「鹿屋殿~ッ! 肝練りの準備は整い申したッ! 皆待っちょるから始めっどッ!」
「ははーっ!」
黒右衛門が頭を深々と下げ、怪人二人も続いたので九郎も倣った。
目に覚悟の光を灯した老人は声だけで障子が破れそうな勢いで、続けて云う。
「我らも、もそっと参加すっごと用意しちょるッ! 今日は楽しか肝練りじゃッ! おいッ! [さつまもん]ッ! なんぞ心残りはあっかッ!?」
「なッ………………………………………ンもござり申さッ!」
「よか!」
(ここで心残りがあるとか答えたら死罪なのであろうな)
九郎は激しい声量でのやりとりを聞きながらそんな事を思ったが、決して口には出さなかった。
どかどかと入ってきたその上役の男は、さつまもんを連れて一足先に奥へと向かった。
ようやく顔を上げた九郎はとりあえず黒右衛門に、
「あの偉そうなのは?」
「叱っ。薩摩藩の御奥番頭、新納様ですよ。江戸では家老当役に匹敵する権力があるんですから」
「そんな上役が肝練りの主催か……なんというか、薩摩って」
「なんとも言わないでくだされ」
確かに一言に纏めるには難しそうな問題であったため、黒右衛門の提案に従いその問題は先送りにした。まあ、人類が言葉を無くして思念で会話できるように大脳あたりが進化すれば問題は解決するだろう。
とりあえずここで時を過ごすことは出来ない。どちらかと言えばすぐに回れ右して市中に戻り、湯屋にでも入って帰りに一杯引っ掛けて寝たい気分ではあったが、その選択肢は取れないようだ。
諦めたか覚悟を決めたか──其の二つにどれほど違いがあるのか不明確であったが──九郎と黒右衛門も奥へと向かう。
そこは食事を取る広間であった。薩摩では多くの人が集まって、大皿に盛られた料理を己の小皿に取り分けるという食事方を好んだとされている。これは当時の中国──清の食卓を取り入れた形式で、鎖国中の日本からしてみれば最新の大陸式食事をしているという自慢があったのか、それとも単に薩摩の気風にあっていただけなのか……
とまれ、この日ばかりは円状に肩を並べた藩士達の目の前に、膳が置かれている状況であった。肝練りとは、其の囲んだ中央に火縄銃をぶら下げて、吊し縄を捻り捩らせ回転するように細工して縄に火をつけ、銃口がぐんぐんと己の頭を狙い回転するのを見ながら物怖じせずに酒宴を行うサツマン・ルーレットめいた儀式である。
薩摩では好まれている武士の遊戯で、現代の鹿児島でも(インテリアとしてだが)天井から火縄銃を吊るした飲食店が残っているほどである。
だがこの場では、円で囲んだその中心に、天井から吊るされた巨大な火縄銃怪人──[きもねりん]がいる。
(……はっ)
危うくマッハでツッコミ入れかけた自分を抑える九郎。明らかに巫山戯た絵面なのに、囲んでいる薩摩藩士達は真剣そのもの、表情に憎しみすら感じる厳しさなのがギャップで余計ひどかった。絶対に笑ってはいけない薩摩である。
二人が入ってきたのを確認して、御奥番頭──殿中における諸事を担当する、藩主側近の一人である──が獣のような目をぎらつかせて頷く。
「皆ン衆喜べ! こン鹿屋殿とへごン考えで、江戸でも肝練りが出来っごとなったッ!」
「応ッ!」
(嬉しいのかよ……というかそんな考え提案してないが)
凄く口を挟みたかったが、なんとか声帯を震わせないように呼吸を止めた。困難だったが、やり遂げた。
マスコットキャラの話が何故か合法的に肝練りをする象徴へと認識が変化したらしい。
そもそも合法の肝練りとか違法の肝練りとかあるのだろうか。むしろなんでやりたがるのだろうか。九郎にはさっぱり理解不能であった。河豚を食って当たった場合、鉄砲に当たったというが、実際に江戸でリアル鉄砲に当たりたがる集団がいるとは。
(文化が違う……)
こんな時、やたら石燕と語り合いたく成る九郎であった。
怒鳴り声は続く。
「鹿屋殿が我らに焼酎もずンばい用意しちくれったッ! よか酒じゃッ!」
「おおお~ッ! 此は故郷の焼酎じゃァ~ッ!」
「おいは一晩中舐めて過ごっどォ~ッ!」
(感動し過ぎだが……普段なにを飲み食いさせられてるんだ……)
藩邸に住んでいるというのにすこぶる貧しそうな身なりの藩士達は、やはり藩の借金問題もあるだろう。藩主やひと目に付く御用人が相の悪い格好をするわけにはいかないために、金は無くとも何処からか作り豪勢にしなければならない。その分のしわ寄せは、中屋敷に住む藩士達に及んでいるようであった。
不満がくすぶり、恨みと憎しみが身を焦がし、叫びと余った力を受け止める殴り用立ち木も折れる。
ならば肝練りでもやって気を晴らそう──そういう趣向に、偶然黒右衛門のアイデアが拾われてこのようになったのであった。
ある意味、藩邸の中は奉行所や火盗改でも無許可で立ち入る事は出来ぬ治外法権なのだ。藩ではなく、江戸の中で肝練りをするという違法すれすれの行為に男たちは酔っていた。
「さあ皆、もっと寄れい寄れいッ!」
「う、うむ」
九郎と黒右衛門──それにからいもんとさつまもん──も座らされて、円を構成する一員にされた。
弾が外れぬように人の隙間を減らし、ぎゅうぎゅうに詰まる。
酒が行き渡ると、きもねりんの胴体に繋がっている火縄に火がつけられて、太く結われた荒縄で吊るされているきもねりんがゆっくりと残虐なオブジェの如く回転を始める。
きもねりんの頭部に位置づけられている黒々とした銃口が、ちょうど座った者の頭の高さで犠牲者を選んでいる。
「……ところであれって本物が仕込まれてるのか?」
九郎の呟きは合唱のような叫びにあっさりと掻き消される。
「避けてはならんッ! 逃げてはならんッ!」
「当たっても痛いち云うてはならん! 隣の者が倒れようとも笑って酒を飲めッ!」
「ああ、よか酒じゃッ!」
「よか宴じゃッ!」
(小奴ら……気ぃでん狂っちょっとか)
上がってきた薩摩人のボルテージに九郎も思わず薩摩弁っぽい感想が浮かんだ。
しかし確率は低いとはいえ、こっちに銃弾が飛んできたらどうすればいいだろうか。なんで己れは商屋のマスコットキャラを提案したら射殺されかけているのかと悲しくなりそうな思考を現実に引き戻しつつ、考えた。
銃口の軌道自体は単純で、きもねりん自身の重さが反動を受け止める為に火縄銃だけを回すよりは射線を読みやすい。当たりにくい場所に予めさりげなく体を動かす事は可能だが避けても逃げてもいけないそうだ。ローカルルール(とはいえ、薩摩以外無いが)では前のめりに伏せて避けるのは許可されたりもするが、今回はまさに[本肝練り]である。赦されるとは思えない。
受け止めるのはどうだろうか。しかし、人間の反射能力では発射されたのを視認してから行動を起こすにはあまりに近い位置だ。これが通常の銃ならば、射手の指などに注意してタイミングを測ればいいのだが、相手は火縄の長さすらよくわからない着ぐるみである。把握出来ない。
本気で考えているうちにやはり現実は悲しいことばかりなのだという厭世感が溢れてきて、余計に思考速度を遅らせた。最も安全なのは即座に席を立って邪魔するものを刀で切り捨てて脱兎の如く……という案なのだが、若さに任せるには年を食い過ぎた。有り体に言って、面倒だ。
「安心して。君は、からいもんが守るよ」
「いや、誰だよお主」
「ははっ」
なんか隣に座っている手足の生えたさつまいもの着ぐるみに、甲高い声で話しかけられたので素でつっこみを入れた。
っていうか喋るのかよって気分だった。どうでもいい心地になりつつ茶碗に入れられた焼酎を飲む。薩摩藩の使っている陶器なので薩摩焼だろう。疑うべくなく。
くるくると回るきもねりん。それを取り囲む決死の薩摩藩士。喩えようのない不安感に包まれながら、九郎は諦念と共に酒を飲んだ。
この酒宴の特徴はクライマックスが前半に来ることだ。
やがて火種はきもねりんに仕掛けられた発射機構へと辿り着き、銃弾が放たれる。
九郎はゆらりとこちらを向く銃口の奥から、感じるものがあった。
(む……これはこちらに来る……)
と、予兆は見えぬというのにそう感じるのは、九郎が長年生きてきて培った、死の臭いに対する直感的なものである。
達人というほど鍛えぬいたわけではないが、見知らぬ土地に放り出されて戦乱の世界を半生過ごした経験が、危険予知のような形で発揮されるのは多々あることであった。
まあいい。
ここで人生を終えるのも、最高の落とし所ってやつかもしれない。
(いや、まったくそんな事はないのだが)
どこからか浮かんだ諦めにつっこみを入れた瞬間、銃口と目があった。
音が先に届くはずはないのだが、九郎は音を感じる。ドカ、という思ったよりも激しく重い音だ。
衝撃は隣から来た。
九郎の体を、着ぐるみのからいもんが押しのけて自ら銃弾に当たりに来たのだ。
外張りの布が千切れ飛び、中を満たしていた小サイズの芋がもろもろと布の破れ目からこぼれ落ちる。
(キモ……)
庇ってくれた相手に対する感想ではないが、素直にそう思った。ボクの芋をお食べよ、と体の中から芋を取り出す販売戦略だった為に、着ぐるみの中は芋だらけなのだ。重いはずである。
九郎は、はっとして自分の代わりに銃弾が直撃して動かなくなったからいもんに呼びかけた。
「おい、からいもん! 大丈夫か!」
其の瞬間、円を組んでいた薩摩藩士が怒り心頭に総立ちした。
「なにいィ~ッ!?」
「今なんちゅうたッ! 唐芋じゃとォッ!!」
「聴き逃がしならんッ!! 引ィ取れッ!」
「よか!」
「ああもう面倒臭いな! 小奴ら!」
うっかり禁句を言ってしまった九郎も刀を持って立ち上がる……
*****
「やあ九郎君、元気かね?」
昼下がりの緑のむじな亭に、珍しく鳥山石燕がやってきていた。
店の中でだるそうに、包帯の巻かれた腕をお房に突かれながら蒸かした芋を食っている九郎がいる。
なんとか薩摩藩での騒動が平和的に落着(奇跡的に死人は出なかったので、まあ平和だろうと判断した)して数日。今だに耳に奴らの叫び声がこびり付いている気がしてここのところ寝付きが悪いのだ。
それを見て若干残念そうに石燕は持ってきた包みを彼の目の前に、外で買ってきた焼き芋を置いた。
「なんだ、折角買ってきたのに芋を食べていたのかね」
「ああ、ちょっと土産に貰ってな……」
「あたいが食べるから平気なの」
「ふふふ、ほら」
食い意地の張ったお房が手を伸ばすのでまだほかほかと暖かい芋を渡してやった。
九郎は茶を啜りながら石燕へ顔を向けると、彼女が自慢気な表情をしている事に気づいた。
「どうしたのだ。何か良いことがあったのか?」
「ふふふ、いやね、この焼き芋、なんとお化けが売っていたのだよ! 近頃は妖怪も市民権を持ったものだねと感心してね?」
「お化け……もしかしてそれは巨大な芋の着ぐるみに手足が生えた……」
「そう、きぐるみ!」
と、彼女が懐から取り出した紙には、得意の墨絵を使って独特の画風で芋を配る芋の姿が描かれていた。
隣に【妖怪、名を気狂身といふ】と註釈も入れられている。
九郎は其の絵を眺め、そして記憶にある着ぐるみという単語を数度脳内で噛み締めて、再び[気狂身]を見た。
「……まあ、薩摩的ではあるな」
「そうだろうそうだろう。これは恐らく土着の芋妖怪が変異して伝わった怪異だと思うのだよ! それと、やや高価だったが其の店で売っていた砂糖菓子も買ってきたよ!」
「むぐむぐ」
「もう房が食べてるね!?」
黒い麩菓子のようなものを口に突っ込んで茶で流し込んでいるお房。彼女の食欲はここのところ上がり調子だ。九郎と六科が飯を二杯食ってお房が一杯だけだった日々も遠く。
おおよそ、九郎がこの家に来てからは経営が上向きになり食事に余裕ができて、かつ九郎がそこそこ美味いものを用意するので少食気味だった彼女も反動で食うようになったのだろう。
九郎も茶を飲みながら黒菓子の欠片を口に放り込む。
麩菓子を黒砂糖の蜜に浸して乾燥させたもので、表面にざらざらとした黒い砂糖粒が浮き出ていて非常に甘味な物だ。
マスコットキャラによるイメージアップを断念した九郎が、薩摩の茶の美味さと砂糖の生産に目をつけて茶と菓子をアピールする方に話を持ちかけた事で作られたものである。
荒々しい薩摩の地でも心安らぐ茶の文化は根付いていると知らしめるのだ。
九郎はこれを強面の中年男性が喫茶店でパフェとか食べてると和む作戦と心のなかで名づけている。
一応、マスコットにも折角居るのだからと配らせているようだ。
「しかし、あの唐芋妖怪、流行ると思うか?」
「いや」
「だよな」
あっさりとした返事だから、迷うこと無く九郎もあっさりと納得してこれ以上薩摩と関わるのを止めることにしたのであった。




