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外伝『IF/江戸から異世界14:前略、復帰したイモ子と人質救出作戦』

 前回までのあらすじ。

 虫召喚士ノウェムと一緒に本の世界に取り込まれてヨグと夫婦になったクロウだったが。

 円満離婚してどうにか本から脱出。

 しかし両親の都合に振り回される子供のノウェム兄が暴力に訴えてきた!

 強力な虫召喚術と悪魔の能力で危うくパーティメンバーごと全滅しそうになったが、魔剣マッドワールド内部のアーカーシャ物質内にボディを取り込まれていて、クロウの魂に情報記録を残していたイモータルが不完全ながら復活を遂げた。

 彼女の協力もあって虫召喚士ノウェムを撃退。一行はなんとか地上に帰り着いたのである。


 なおクロウは子供の認知をしようとしないのであったが、これは勿論身に覚えがないからだ。





 ******




 

 徐々に増築されていくスフィの教会。

 新たにイモータルを加えて四人暮らしとなっているが、朝から働き者が三人も居る。

 

「スフィ様。イモータルは侍女ですので家事の類はお任せし、ゆっくりと致してください」

「何を致すのじゃ、何を。大体、家主からすればお主らがお客さんじゃからのー。ぐうたらできんのじゃよ」

「……」


 朝に起きてテキパキと分担し、教会のカーテンを引いて部屋の換気、外の落ち葉掃除、朝食の準備をしているのはイモータルとスフィとイートゥエだ。

 いや、最後のイートゥエだけは首から下のみが黙々と働いている。

 首が無くても胴体だけでも、自己主張は少ないがそれなりの人格があるようで、朝に目覚めたらまだ鼻提灯を膨らませている頭を何故かクロウのベッドに預けて、体のみ働いているのである。

  

「イートゥエも体は働き者じゃのー」


 教会の演奏場チャペルを毎朝の業務としてモップがけしている、エプロン姿の首なし胴体を見てスフィは呟いた。黙々と働くというか喋れないのだから当然ではあるが、耳は無くとも指示は聞ける。果たしてどれぐらいイートゥエの意識があるのだろうかとコミュニケーションを取ろうとしたこともあったが失敗した。一応、感覚は頭と繋がってはいるらしいが。

 小さなパン焼き窯から朝食の焼きたてパンを取り出す新たな仲間のイモータルに説明するように、


「何故か頭がくっついているときは、早起きして家事を手伝っても眠たそうで役に立たないのじゃが」

「イートゥエ様は頭部ユニットが癒やされているからこその効率なのかもしれないと予想致します」

「……まあ起こしに行くのは一度で済むのじゃがのー」


 クロウと一緒に幸せそうに寝ているイートゥエの頭はなんとも羨ましいものがあった。

 なおスフィは意識してクロウと同じベッドに入って寝ようとすると、動悸や呼吸困難で眠れなくなり体力の消耗が激しいという、一つ屋根の下に住んでいるのにこのざまな状況であった。傭兵時代より乙女をこじらせている。或いは死してなお有効なイリシアの呪いが、若干の進展を阻害していることはあるのだが。

 丸く膨らんで皮はパリパリに、それでいて焦げておらず香ばしい匂いを出すパンをスフィは受け取ってバスケットに入れていく。

 このパン焼き窯もイモータルが来てから、彼女が日曜大工で増築して作ったものだ。魔王に作られた彼女は製作者と同じく、それなりの道具作成能力を持っている。

 その恩恵として毎朝焼きたてのパンを食べられるようになったのは嬉しい限りだった。これまでは前日に購入した市販品を食べていたが、それがこんなパンだけで腹いっぱいになるまで食べられそうなものになるのは贅沢な気分だ。

 

「それではスフィ様。テーブルに食器を並べるのを手伝って頂き致しますでしょうか」

「うむ」


 スフィの家事は分担するという意見に対して、強固にメイドとしての主張はせずに程々に手伝いを頼むぐらいの応用力がイモータルにはあった。


「しかしのー、別の私はお主の主人ではないのだから様付けはこそばゆくなるのじゃが」

「イモータルの主人は魔王様ですが、クロウ様はご友人でありますのでその関係者である皆様に失礼があってはならないと判断致します」

「魔王に叱られる?」

「いえ。イモータルは皆様からすれば、クロウ様の友達の侍女というとても遠い関係でありながら仲間になっているので、イモータルが皆様の顰蹙を買えばクロウ様が気に病むと予想致します」

「……なんというかクロー、女たらしじゃのー」

「肯定も否定も致しません」


 ヨグの指示により、クロウのダンジョン攻略支援を行うことになっているイモータルはこうして仲間と溶け込もうとしていうのであった。

 今日はオフだった。ダンジョンには潜らずにゆっくりと過ごす予定なので、朝食も軽めだ。

 焼きたてのパンと、ゆで卵と刻んだチーズの載ってあるトマトサラダ。朝に絞ったフルーツジュース。それに軽くつまめるスコーンがテーブルに置かれている。低消費パーティなので基本的に食事はこんなものだが、時折クロウとオーク神父にイートゥエは暴食に出かけることもある。


「クロー! 朝じゃよー!」


 スフィが呼びかけると、どさ、とクロウが起き上がった拍子にイートゥエの頭部がベッドから床に落下した音が聞こえた。

 そしてのそのそと奥の部屋からクロウが、痛みをこらえて二度寝に入るか悩んでいる表情の女の頭を片手に持ってやってくる。


「ほれほれ、顔を洗ってこんか」

「おう……」

「クロちゃん、わたくしも洗面所に……体の方が今ちょっと裏庭に入った野犬に追い掛け回されてますの」

「大丈夫かよ……イモ子、イツエさんを頼むぞ」

「了解致しました」


 そうして二人と一つの頭部は洗面所に向かう。クロウは肉体年齢が少年で固定されているので髭も生えないから剃る必要もなく、顔を冷水でじゃばじゃばと二三度洗ってタオルで拭くだけである。

 一方でイートゥエはイモータルが風呂場の桶でぬるま湯を使って丹念に肌をマッサージしながら洗い、クリームで下地を潤して薄く化粧を施し、乱れた髪の毛もあっという間に艶やかな金髪の光るストレートに変えた。

 普段は不死者なので肌荒れも気にせずに過ごしている──というか月一ぐらいの確率で頭部を破壊されるから気にしても仕方ないと思っている──のだが、そうしてイモータルの手でメイクを施すとまさにお姫様といった輝きを取り戻した。

 

「あ、あら。なんというかわたくし……磨けば光るのですわね」

「はい。特に額のあたりがよくお光だと賞賛致します」

「デコは美しさのステータスですのよ!」


 云いながら風呂場から出てきたイートゥエの首を見て、クロウは一瞬目を見開いた後に瞑目して首を振った。


「どうされましたの?」

「いや、なんでもない」


 苦笑してクロウは目の前を払うように手を振った。


「ぬうー」


 その微妙な反応にスフィが唸り声を上げる。

 彼女も薄々気づいているのだ。友情はクロウとの間にとても固いものが結ばれているが、女としての魅力はイートゥエの方が優っていると。巨乳だし。

 イモータルを呼び寄せて耳元で囁く。


「今度私にもメイクして欲しいのじゃよ」

「了解致しました。ご安心ください。イモータルのメイキング能力ならば、魔王様ですらクロウ様に『あーはいはい可愛い可愛い』と言わせることに成功させたぐらいだと自負致します」

「魔王の威厳がマッハなんじゃが」


 ひそひそと話し合っている二人を見て、クロウは感心したように言う。


「なんというかお主ら、そうしておると仲良しだのう……イモ子が小さいのもあるが」


 イモ子が小さい。

 彼がそう告げた通り───イモータルの背丈はいつもの170cm前後から、スフィと同じく145cmぐらいまで縮んでいる。

 凛々しかった顔つきもどこか幼く見え、手足も短い。メイド服は体に合わせているが、そのせいで小学生がコスプレをしているか或いは法に背く如何わしい店のようだ。

 それは不完全な修理状態でクロウのピンチに緊急復帰したので、全体的にパーツが足りずに小柄な体として再生したからであった。

 イモータル少女形態だ。

 それに伴い、多くの武装や機能はまだ使用不能で大きく性能を落としている。時間をかければ徐々に復調していく予定だ。


「ま、何はともあれイモ子が来てくれて助かる」

「お料理に外れ日が無くなりましたわよね」

「な、なんじゃ? 私の歌神シチューがそんなに嫌か!?」

「……実は」

「……かなりですわ」

「良薬口に苦し! 美食鼻に臭しじゃろー!」


 スフィの作る料理は普段は美味いのだが、定期的に歌神の教団に伝わる由緒正しいシチューが出されるのが二人の悩みであった。

 伝統的な具材としてセミの抜け殻やたくあん、ジャムなどが入れられている独特の味だ。

 決して毒ではないことはクロウも疫病風装の能力で確認済みなのだが、味は「食べられる殺虫剤ただし味は悪くない」とかそんな感じ。

 食べると翌日のカラオケで点数が上がる加護がある。

 それはともあれ、朝食をイモータル以外は食べる。

 メイドなので彼女は後で食べるのだが、それよりも実務的に食事中の仕事があった。


「ん~、サラダも瑞々しくて美味しいですわ~」

「水ではなく湯でほんの僅かな時間さらすと歯ごたえが良くなると解説致します。長持ちはしなくなるという欠点も存在致しますが」


 イートゥエの首を持ってあげているのである。

 とりあえずぶっちぎりで食事が汚いというか、食べにくい体をしているのが彼女である。

 なにせ首と胴体が離れているのだ。

 本来あるべき場所に頭を載せて食卓についても、僅かに俯いただけでテーブルに頭が転げ落ちる。

 食べ物を噛み付いて食いちぎろうと引っ張ったら頭が落ちる。

 テーブルに乗せたら口の位置が低すぎて食べさせにくい。

 となると、胴体が頭を左手で小脇に抱えて、右手一本を使って持っている頭に食べさせるというなんとも珍妙な状態になるのだ。

 鎧を装備しているときは頭も外れにくくなるのだが……。

 そんなわけでイモータルが来てからは、彼女に頭を食べさせやすい位置に持ってもらっているのであった。

 セルフあーんである。

 まあそんな介助も、元々王侯貴族であったイートゥエはさほど抵抗が無いようだ。


「自分で小脇に抱えて食べさせると胸が邪魔でしたのよねー」

「ぐぎぎ……クロー……あやつの乳をもぐのじゃー」

「もがん」


 巨乳に敵意の篭った目線を向けるスフィであった。


 朝食を終えて片付けもして午前も一段落ついた。

 オーク神父と釣りに出かける──というか、恐らく彼は明け方あたりからポイントに行っているはずなので、それに合流してのんびり釣りでもしながら過ごす予定であったのだが、どうも空模様が怪しい。

 女衆はまたイモータルに着せる服を購入したいというオルウェルの熱い主張により全員で服屋へ出かける。

 さすがに女性複数で出かける服の買い物に付き合うのはクロウも勘弁願いたいので釣りは丁度いい、どこの世界でも出来る趣味だった。オーク神父も、旅の先々で食料調達として釣ってきた一流の釣り師だ。釣りの話を聞きながら竿を垂れているだけでそれなりに楽しい。


「クロウ様」


 釣り情報誌で予習をしながらソファーに座っていたクロウの目の前にイモータルがやってきて、呼びかけた。

 

「今日のインストールをお願い致します」

「うむ、いいぞ」


 クロウが手を広げると、イモータルは一礼して背中を向けて──ゆっくりとクロウの膝の上に座った。

 もぞもぞと分厚いスカート越しの尻を動かして、クロウに負担を掛けないように座る位置をイモータルは調整している。

 体重はそう重くない。見た目通りだから苦にもならないので、背後からイモータルの腹を両手で掴んで落ち着かせた。

 そのクロウの手をイモータルは掴んで安定させ、背中をクロウの体に預けて眠るように目を閉じた。

 見ていたイートゥエとスフィはやや白目を向きながら、


「……なんというか、毎日のことですけれども……エロい感じがしますわね」

「考えてても口に出さんで欲しいのじゃよ」

「インストールというかインサートですわ」

「黙るのじゃよ」

「はい」


 このクロウの上にイモータルが座るという行為は、イモータルの機能回復のために必要なことであった。

 イモータルは消滅する前に己のバックアップデータを避難地としてクロウの魂にセーブしていたので、こうして接触することでクロウの魂からイモータルの擬似魂へとデータをダウンロードしているのだ。

 いわば今のイモータルの少女形態は、まっさらなハードディスクにOSだけをインストールして動いている状態。必要なソフトを外付けハードディスクにしたクロウからダウンロードしなければ機能は──徐々に復元しているのだが劇的に早くは──回復しないのだった。

 だがしかしイモータルのバックアップデータは容量が非常に大きく、クロウに触れてダウンロードしようとしても数日は触れ続けなければ元に戻らない。それでは負担も大きいのでこうして一日に決まった時間触れて徐々に復元していくようにしているのだ。

 それにあまり一度に沢山のデータを長時間移そうと触れ合っていると、イモータルの回路が発熱しだすという事情もあった。

 つまり仕方ないのである。毎日こうして膝の上に座ったりするのは。

 決していやらしい行動ではないし、イモ子さんの個人的趣味でもないのだ。

 なお製作者であるヨグに修理してもらおうにも、彼女は現在謎の自己嫌悪で面倒くさいモードに入っているので取り合わないのであった。イモータルにクロウを手伝うように指示を出して引きこもっている。


「しかしあれだのう」


 天井を見上げるようにして釣り雑誌を開き、それを見ながらクロウは呟く。


「知らぬ間に魂に自らの全情報を刻んでくる女って、イモ子は機械だからいいようなものだが、かなり重い気がする」

「確かにですわ」

「大体いつの間にそんなんされたのじゃ?」


 話題を逸らすように、イモータルは安全性をアピールした。


「……ご安心ください。クロウ様の人格や深層意識、思考などには一切影響が出ないように致しております」

「むう……クロー、隣座るぞ」

「おういいぞー」


 釣り雑誌を読んだまま気のない返事をするクロウ。

 スフィが密着して隣に座る。

 すると途端にスフィも動悸がしてきて、体が熱くなってきた。入ったばかりの新入りに取られないように主張しているのだが、やはり恥ずかしいようだ。

 

「い、イートゥエも反対側で挟み込むのじゃよー!」

「ええ? わたくしも?」

「色々と分散するんじゃよ! 分散!」

 

 なにやら説得されて、どうしたものかと思いながら近づこうとするが、クロウが躊躇いがちにイートゥエへと手のひらを向けた。

 どうも目つきが荒んでいて、かすれた声を出した。


「イツエさんはちょっと」

「はあ!? どうしてですの!? もしかして臭いからですの!? 臭いからですの!?」

「あー、いや、うん? どうしてだろうな?」

「本能的な嫌悪!? 酷いですわ! 一緒にお風呂にまで入った仲なのに!」


 心外そうに云いながら彼女はクロウのすぐ隣に座った。

 どうもクロウは拒否した明確な理由は本人もわかっていないようだ。スフィがむっとしたのだけ、クロウは感づいた。


「なんだこの包囲網」

「知りませんわ」

「知らんのじゃよ」

「……現在クロウ様からどんどん入り致しております」

「やっぱりエロいですわ」

「のうイモータル交代せんか?」

「なんだこれ」


 左右と膝上を仲間の女性に占領されているクロウはそう呟いた。   

 そうこうしていると講堂より繋がる扉が無遠慮に開かれて、明るい声がした。


「ちーっす。オルウェルっすよー──ってうわ!? クロウさん何してるんすか!」

「己れもわからん」


 ソファーに一塊になっている住人を見て驚いたオルウェルは袋に下げてきた菓子箱を落とした。

 そして暫く思考が固まり、浮かんだ言葉は、


「う、羨ましいっすねクロウさん!」

「……代わるか?」

「はいっす!」


 ひょいとイモータルを持ち上げてクロウはソファーから立ち上がると、座っていた場所にオルウェルを譲って彼女に膝にイモータルを載せてやった。

 本日のインストールは終了かと、少し残念そうな表情に彼女がなった気がした。

 ともあれ両手に花と膝に少女でオルウェルは楽しそうだ。


「いやーイモータルちゃんってちっちゃくてメイド服でお人形さんみたいで凄い可愛いっすね! スフィたんも萌え萌えで、イートゥエさんも美少女! 酒池肉林っすよこの状況! でゅふふふ」

「……のう、オル子」

「なんすか?」


 ひょっとして、とクロウは疑わしげな目になる。

 前々から彼女はやけにスフィに対してボディタッチが多かったし、よく可愛いと口にしている。今もイモータルを愛おしげに背後から抱きしめていた。

 

「……お主、レズのロリコンなのでは」


 左右に座っていたスフィとイートゥエが一斉に飛び退いた。


「ちがっ!? ちがあああうっすよおおお!! わたし、単に可愛いものが好きなだけで断じて幼女に興奮する変態じゃないっすー!!」

「いいか、オル子──ロリコンのクソ共はみんなそう言うんだ。己れは詳しいんだ。知り合いに居たから」


 爽やかな表情を浮かべる稚児趣味同心×2をオルウェルと重ねあわせながら言う。

 ぶんぶんと首を振って、涙さえ浮かべながら彼女は否定するが。


「違うんですってー!! そりゃ男の人との出会いとか全然無いっていうかダンジョンに出会いを求めても仕方ないんすけど、いやだからこそ癒やしを求めてただけっす!」

「……などと意味不明の供述をしており」

「精神鑑定の必要も考えられると引き続き取り調べが行われることとなっている」

「うああん!」


 嘆き叫ぶオルウェル。当然ながら、年齢不詳のイモータル以外はオルウェルよりとんでもなく年上なのでからかっているだけなのだが。

 

「ええいもう、早く出かける準備するっすよ! 外は雨が振りそうなんすから! ほら雷の音も! デパートでお買い物っす!」

「ふむ、空が暗いと思ったら……オーク神父は釣りに出ているが大丈夫かのう」 


 釣り竿を振り上げた拍子にその先端に雷が落ちて感電死。

 特に開けた海や河原などでよく起こる事故である。無論、旅の専門家である彼はそんな迂闊なミスをしないと思うが……。


「それでしたら一度ご連絡を取ってはいかがでしょうかと提案致します」

「おお、そうだ。通信機があったのだった」


 クロウは腰帯につけていた小型の携帯電話めいた通信機を取り出した。イモータルが仲間になった際にメンバーに渡した、この世界で流通していないクロウ達専用の連絡手段だ。 

 装備者の生体電気で充電することが可能で──生体電気を高められるヴァオウドレスを着ているオルウェルに渡すと凄い速さで充電完了する──耐水性など頑丈に作られている。

 イモータルの武装インストールも、容量の大きい強力な武器よりもこうした便利な日常に使えるものから優先して復元していっている。

 なおこの通信機はクロウが去り際のノウェムにも渡していた。喧嘩を売られるのは勘弁だが、何かあったら連絡をするように、と一応クロウは仮初めの空間で子供だった相手に気をかけたのである。ふてくされて引っ込んだノウェム兄はともかく、妹は素直に頷いて受け取った。

 クロウがオーク神父に通信をかけようとした時に、まさにその相手から呼び出しが鳴った。

 通話ボタンを押して耳に通信機を押し当てる。


「もしもし」

<クロウくん、聞こえる?>

「ああ」


 妙に囁く、小さな声だった。

 

<僕は今、犯罪者に拉致されて建物の中で監禁されている。他にも人質が十三人居る。僕らを捕まえた彼らは帝国議会に何か要求していて、受け入れられない場合人質を殺して帝都に向けて魔王の作った爆弾を発射すると脅しているようだ。自爆する危険もあるかもしれない>


 突然のピンチであった。

 だがオーク神父はそんな冗談を云う男ではないし、彼なら余裕であり得る日常茶飯事的ピンチだ。クロウも納得した。

 

「魔王の爆弾……? もしかして[草薙剣デイジーカッター]か。あり得るな、前に港で見かけたぐらいだ。発掘されるなどして残っていても不思議ではない。それにしてもお主がどうして人質に」


 草薙剣は魔王ヨグの作ったミサイルの対神格弾頭で、爆発すると周囲1kmを吹き飛ばす強力な兵器だ。

 クロウがこっちの世界に来てから騒動に巻き込まれて爆発したことがあり、港が一つ消えて海岸線が書き換わった。


<船釣りのできる遊覧船に乗ってたんだけど、それに政府の要人と家族が趣味の海鳥観察バードウォッチングで乗り合わせていたらしくて一緒に船ごと乗っ取られて連れて行かれたんだ。陸に上がって馬車に載せられてどこかの建物に入って閉じ込められた。荷物は奪われたけど、通信機だけは体に埋め込んで隠していてね>

「確かにお主の体からは探しにくいだろうな」


 僅かにお互い笑いをこぼす。なにせ、でっぷりとした身長2m50cmの体をしているオーク神父だ。隠そうと思えば小さな通信機一つどことでも隠せる。下っ腹のシワに入れておけば持ち上げるのも一苦労だろう。


<恐らく帝都からそう離れていない場所にある施設で、閉じ込められているのは地下だ。見張りは部屋の外に居る> 

「わかった。こっちでその場所と悪党の情報を探ってから助けに行く。お主は殺されぬように上手いことアドリブを効かせておれ」

<ありがとう。どうも屋内でこっそりするのは苦手だから、一人じゃなんともできないんだ。それに他の人も居るから>


 オーク神父も悪党に捕まるのは十度や二十度の経験ではないので落ち着いている。

 外ならばカモフラージュや旅神の秘跡能力を活かした逃走技術があるのだが、さすがに巨体で建物からこっそり抜け出るのは相性が悪い。

 危険な救出になるだろうが、オーク神父もクロウの腕を信頼しているので素直に頼んだ。

 クロウは他の仲間達にも目配せをして、頷いた。前はオーク神父の勇気に命を助けられた。今度は彼を助ける番だ。 

 



 ******* 

 



 

 イモータルの通信機からの逆探知と航空写真。

 スフィの教会関係者から、イートゥエの魔法関係者から、オルウェルの開拓公社からのそれぞれの情報を統合してオーク神父が攫われた場所と犯人のことは半日ほどで知れた。

 犯行グループは帝都軍の魔法実験中隊[ファイアアームズ]。

 爆発魔法で大砲の弾を飛ばす砲撃の応用で、魔法の銃火器転換を実験していた部隊である。

 彼らは計画的に帝都の経済産業大臣とその家族、及び参加した要人を目的に船をハイジャックして拉致した。中には他の政府要人の家族らも集まり、ペナルカンド野鳥の会副会長と行く海鳥の観察ツアーだったらしい。

 拉致の際に抵抗した野鳥の会メンバーは射殺されて海に捨てられたという。

 オーク神父はその船の船長とたまたま知り合いだったので船に同乗して釣りへ向かった。こういう場合、旅神の神父は歓迎されるのが常であった。

 

 犯行グループは帝都郊外の化学産業廃棄物処理施設を占拠。そこに爆薬を持ち込んでいて、帝都に魔王の爆弾を打ち込む、或いは自爆すれば広範囲に化学物質が撒き散らされることになると宣言している。

 要求は三つ。まず事件の即座な公表。現金300億クレジットか宮廷召喚士の処刑。そして隣国の神聖女王国への亡命。

 要求を飲まず、軍を差し向けるなどした場合は魔法実験で開発した投擲射出魔法で帝都を爆撃する。


 それらの情報を分析して、魔法使いのイートゥエが言う。

 

「これはあれですわね。ヘカテリアの諜報工作員が入り込んで扇動してるはずですわ。不遇な帝都の魔法軍に働きかけて、亡命と恫喝、それにお金を要求しているのはきっと召喚士との関係悪化を狙っていますのね」

「都民に公表させたのも、人質と爆撃される可能性と大金に、召喚士の命を天秤に載せさせたんじゃろうな」

「この前の戦争では、召喚士で洒落にならない被害を出したからっすねー神聖女王国」

 

 牛召喚士の大暴走以外にも、猿召喚士によるゲリラ攻撃に犬召喚士による警備、精霊召喚士による航空戦力の壊滅などほぼ召喚士によって勝負が決まった、非常に稀な国家間戦争になった。

 単体ならまだしも複数の召喚士を雇い入れて戦争に投入するという手段は、召喚士の性格上の問題でこれまでどこの国でも行われなかったのだ。

 同時に召喚士に対する恐怖は戦勝国でも密かに抱えている問題だろう。そこを揺さぶるのが目的と思える。

 本当に草薙剣を所持しているかどうかは不明だ。ただ、その威力自体は帝王を始めとした上層部に知られているので脅しには十分だった。特に帝王は直撃を何発も魔王城攻防戦で食らっているので、真摯に受け止めるだろう。


「しかしこうなると、警察や軍に通報してどうこうというのもできぬな」

「下手に真っ向から軍で攻める姿勢を見せると、人質もろとも自爆される危険性があると判断致します」

「上司のベネさんに聞いた話だと、人質になってる大臣はこのカオスな帝都の発展に関して相当重要な人で、これまで七期も大臣をやってるから死なれたら損失が半端ないらしいっす。特殊部隊を派遣するかどうかまでは教えてくれなかったっすけど」

「イモ子の機能でなんとか安全に救出できぬか? 空間転移が使えただろう」


 だが彼女は首を振り、


「機能が不完全でマーカーが無ければ転移不可能な状態です。クロウ様の居場所でしたら、魂の繋がりでどこへでも転移できるのですがと白状致します」

「ふむ……」


 ではこうしよう、とクロウは作戦を決めて言う。


「犯人を刺激したら危険だからな。己れがこっそりと敵の本拠に潜入して、オーク神父ら人質と接触。そしたらイモ子を呼んで全員転移させて救出する」

「相手が爆弾を帝都に発射したらどうするのじゃ?」

「その場合に備えて、帝都と施設の間にミサイル防衛プログラムを入れたビット兵器を配置致します」


 イモータルがそう宣言すると、彼女の背後の空間が歪んでメカニカルな壺のような物体が出現し、浮かんだ。

 

「クロウ様が回収したプロトタイプ・メアリーの武装を使って作成した[琉璃瓶るりへい]ならば、亜空間に吸い込むので大規模爆発する弾頭を安全に処理致せます」

「うむ、そうか。任せた」

 

 クロウは他の仲間を見回して、


「大人数で行っても見つかる可能性が高いからな。己れがさっと行ってさっと帰ってくる。現地の状況はわからんから、通話でお主らの知恵を借りるかもしれんのでバックアップを頼む」

「危なくなったら助けを呼ぶのじゃぞクロー」

「できるだけこちらでも敵部隊の情報について調べておきますわ」

「頑張ってくださいっすクロウさん! オーク神父さんをよろしくっす!」


 皆の激励を受けて、仲間を救うためにクロウは向かうことにした。

 外の雨は本降りになっているようだ──




 *******




「現地に到達した。かなり視界が悪いのう」

 

 大雨が降れば気流がランダムに乱れて疫病風装による飛行は困難になる。

 おまけに雷の危険もあったのでクロウは飛行ユニット[風火輪]をつけたイモータルに、化学生産業廃棄物処理施設近くへと運んで貰った。風と火の力で飛行するそれは僅かな空気のバリアを張って飛行するので、雨も打ち付けない。

 しかしびちゃびちゃに濡れた地面に降りて、イモータルは琉璃瓶の配置に向かってしまったので大雨に濡れながら、煙る視界と薄暗い天気で見えにくいことこの上ない。目を見開いているだけで、雨が目蓋に入ってきて鬱陶しい。

 施設は環境に配慮してか、元砂漠だった残滓が見える岩場に作られていた。窪地になった場所では草は芽吹いておらず、大きな煙突を上に付きだして寂しげな墓標のようになっている。

 帝都の人口が増えることで様々な衛生政策や食糧増産などの活動は行われた。それで生まれては望まれずに消えていった洗剤や農薬、薬品に実験動物などを安全に処理する処分場。毒素を出さない燃焼魔法なども研究されていたここは、今や爆薬の城である。


<クロウ様。多目的ゴーグルを転送致します。暗視モードによる熱赤外線探知機能がついていて水中での使用も可能な装備だと解説致します>


 イモータルの通信に返事があり、クロウの手の上にゴーグルが出現した。

 目元を擦ってからクロウはそれを装着し、腰を屈めながら周囲を観察する。高い壁に囲まれた敷地の周りに、雨の中合羽を着て歩哨している兵士の姿が浮かび上がった。

 入り口は大型の馬車を搬入できるほど大きいが、そこには常に二人の兵士が張り付いている。また建物の周囲を見まわりする兵士が数名。

 クロウは岩陰に隠れながら[隠形符]の透明化機能を使ってみた。そこに通信が入る。


<クロちゃん、透明魔法を使っていますのね>

「ああ」

<それは潜入に便利に見えるけれど、今回は使いどこが難しいですわ。相手は魔法特殊部隊とも言える集団で、魔法を感知するゾーンを張り巡らせている可能性がありますの。また、魔法の発動に敏感で、見えないところで一瞬使うならまだしも、使い続けていると怪しまれることになりますわ>

「なるほど。それは厄介だのう。注意することにする」


 となるとあまり力んで 相力呪符の能力を発動させるわけにもいかない。魔法を使い続ければどんどん警戒度は上昇していくだろう。

 

「それにしてもあやつら……あからさまに銃を持っておるのだが」


 そのぼやきに応えたのは軍の情報を上司から聞いてくれたオルウェルだ。

 クロウが端末を向けた画像をイモータルが処理してクリア化した装備を見て忠告してくる。


<基本武装としては手に持っているのが中遠距離用連射可能な無詠唱魔法弾を打ち込む魔法の突撃杖[M(まほう)-16]っすね。それ以外に近接射撃用の拳杖[M(まほう)9]を持っているはずっす。あと体に幾つか[M(まほう)26]手榴弾をつけてるみたいっす。どれも射撃音や爆発音で他の兵士を呼び寄せるから、くれぐれも交戦は避けてくださいっす」

「なんだかなあ……魔法、魔法ってなんだ」


 まるでクロウの居た世界の兵隊のようだった。この世界では兵士というか戦士が主力で、個人の武力が物を云うのだが。


<武器の解説が聞きたいっすか? 魔法銃器の類は予め銃弾に射出魔法を封入しておくことで、引き金を引くだけで魔法が発動して発射されるっす。火薬式じゃないから硝煙は出ないっすけど、弾速が音速を超えるので破裂音はなるっすね。弾頭は補給の問題から魔法で作り出された圧縮水が多いっす。M-16は弾数が二十、M9は十発。水鉄砲と馬鹿にしてると、岩に弾痕がつくレベルっすから注意して欲しいっす。M26手榴弾は爆発したら破片が100m以上飛び散るっすから必ず遮蔽物に隠れるっす。どちらにせよ使われると音で警戒レベルが跳ね上がりそうっすね>

「わかったわかった。くれぐれも正面突破ランボープレイは控えるのだろう」


 言いながら岩陰に隠れて外壁を一周ぐるりと周る。裏口らしい扉はあるのだが、そこも警備の兵士が居て歩哨も回ってくる位置だ。

 窓のような穴は無く、壁を壊そうにも強行突入ではない潜入なのでマッドワールドは置いてきている。

 敷地の中にある建物の屋上は煙突と出入り口らしいものがあるのを航空写真で確認したが、屋上にも見張りの兵士が居るようだ。

 さてどうしたものかと思って相談をしてみた。

 スフィが思いついたことを告げてくる。


<地形図で見たのじゃが、その辺りは窪地になっていて土地の保水力もイマイチそうじゃ。それにいくら廃棄物を燃やすといっても、洗浄設備ぐらいはあるはず。そう考えると側溝とか下水道がないかの?>

「探してみる」

<ただ……廃棄物処理ということでその水は余り綺麗ではないかもしれぬが>

「安心しろ。装備の効果で無毒化できる」


 クロウは応えて側溝を探すと、案外すぐに見つかった。

 澱んだ汚水の垂れ流されているところならば多少怯んだかもしれないが、雨水が流れてごぼごぼと水流が溝の上まで溢れんばかりだ。

 一応毒素の有無を調べたが、犯行グループが占拠して処理を行っていないおかげか安全そうではある。溝の大きさも、大人ならまだしも子供ならば腹ばいに通っていける広さをしていた。

 ゴーグルをしっかりと固定し、装備を流されないようにして[起風符]を口に入れて潜水した。この術符は風を操るというより空気を作り出して風にするので、低出力で使えば口の中で空気を作ってアクアラングの代わりになる。この程度の微弱な魔力反応ならば、水と一緒に流れて気付かれないだろう。

 前から流れてくる水流でゴーグルが顔に食い込みながら、クロウは手足を突っ張って溝の中を施設の方へ進んだ。

 手足が冷たい。自分のあずかり知らぬ国の方針で、今にも頭の上で爆弾を使った自爆が行われるかもしれないと思えば心まで萎えそうだったが、だから急いでオーク神父を助けなければならない。

 その場に居合わせて捕まったオーク神父なので、何かの見せしめに殺害される人質としては選ばれやすいだろう。

 人間に比べて怪力なオークではあるが、屋内では逃げ場を奪われてあの魔法銃で蜂の巣にされてしまう可能性が高い。

 それを想像すると、踏ん張って水流に逆らい進む体に力が篭った。


 暫く進むと敷地内の外で側溝の蓋が金網になっている場所があり、クロウはそれを掴んで溝の中から周囲を観察した。

 壁で囲まれた内部には兵士の数は少ないのか見当たらず、近くに物陰もあった。意を決して網の蓋を押し開けて溝から出て、蓋を直し物陰に隠れる。

 兵士が見回りに来た。資材の影に隠れたクロウには気づかずに通り過ぎていく。多少の音は、雨が隠してくれた。そうなると一方的に多目的ゴーグルで視認できるクロウが有利である。

 建物内部に入らないといけない。クロウは近くにある少し高い窓に飛びついて、内部に兵士が居ないことを確認し窓を開けて入り込んだ。幸い、鍵は掛かっていないようだ。

 予め爆弾の搬入など準備はしていただろうが、この施設に犯行グループが集結したのは今朝方のことで、半日と少ししか経過していない。全ての窓に施錠するまで手が回らなかったのだろう。或いは、兵士を巡回させておけば十分と思ったか。

 中はシャワールームのようだった。側溝はここに繋がっていたのである。体についた化学汚染物質を洗い流す為に必要な設備だ。寒々としたタイルとコンクリートで出来ていて、海水浴場にあるシャワー室を密閉したような寒々しい部屋だ。

 

<クロウ様。建物内部ですので水を拭った方がいいと判断致します>


 通信と共にバスタオルが転送されてきた。

 ありがたいことだ、と苦笑してクロウは髪の毛や着衣を絞るように拭って、水が滴らないようにした。

 拭い終えたタオルをシャワー室のロッカーに入れて隠し、入り口の扉へ向かう。

 床に耳を付けて足音を探ると、遠ざかっていく足音に近づいていく足音がある。暫くその場でその規則性を確かめることにして、どうやら回廊のようになっている廊下を何人かが巡回しているようだ。兵数はかなり余らせているのか、余裕を持って警備が多い。

 廊下を進むのは難しいかもしれないが、確認する必要がある。

 足音がどちらも離れている合間を見計らって、クロウは僅かにシャワー室の引き戸を開けて左右を確認した。

 手には手鎌サイズで小さく現出させたブラスレイターゼンゼが握られている。いざとなれば眠り関係の病気数種を打ち込んで寝かせるしかない。

 例えば施設全部に病気を撒いて無効化する作戦は、人質がヤバイので取れないのである。


 クロウが顔を出して確認した周囲には見張りの兵は居なかった。だが廊下に隠れながら進めるような便利な場所は無く、足音も響いている。

 やはり廊下を進むのは難しい。そもそも人質を取られている部屋もわからない状況で、右往左往しても仕方がない。地図を把握するのは重要だが。

 ふとクロウが天井を見上げると、それなりに高い天井に太いパイプがむき出しに通っていた。

 メンテナンスの都合で現代日本とは違い、施設の明かりは人間の頭より少し高い位置の壁に仕込まれているので天井あたりは暗い。これならば、パイプの影に隠れて進めそうだった。

 クロウは音もなく浮かび上がって天井に張り付いた。疫病風装は魔力というより概念で飛べるので感知はされない。ブラスレイターゼンゼの病気弾もそうだ。

 再び巡回の兵士が来るが、やはり天井には気を掛けていない。一応の見張りであり、まだ建物内部に誰か入ってきているとは思いもしていないからだろう。

 にやりとクロウは笑みを浮かべて兵士の頭上を無音で進んでいく。途中で大きめのゴキブリがパイプを這っているのと目があって、少しだけ表情を固めた。


 やがてホールに辿り着いて、クロウはパイプの影に隠れながらゴーグルで見回した。

 入り口ホールらしい場所に案内板らしい建物の地図がある。廃棄物を搬入した業者が迷わないようにだろうか。倍率を上げて拡大し、地図を記録する。

 地上三階建てで地下一階もある。炉のある処理棟はやや離れた場所にあるようだ。


<クロウ様。オーク神父様の情報からすれば地下にいると判断致します>

「地下か。そこへの出入りは階段だけだったのう。兵をどれだけ置いておるか」


 地図を確認しているとイートゥエからの推測が通信に入った。仲間たちはチャンネルを開けたままで、会話を共有して聞いているのだ。


<犯行グループの主力や弾頭は発射を行うという脅迫からして地上に居るのではないかしら。地下からは発射できませんもの>

「兵士もそっちに多いといいんだがな」

<調べた所、彼らの射撃魔法は銃器のような筒状の物を使って威力の収束、弾道の安定を行うのですわ。だからもし大容量の爆弾を発射するとしたら……ここの炉に使われている煙突は頑丈な特殊金属製で、吹き抜けになってるらしいですの。きっとそれを使うと思いますわ。だからそちらに集まっていると思いますわよ>

「煙突を砲身にか……ダイナミックな変換だのう」

<そういう風に戦場で使われる魔法を研究していたのに、実際の戦争では召喚士の一騎当千で出番が無く、予算も削られた恨みがこの蜂起にはありそうですわね。人質は救出したけど街に砲撃されて壊滅した、だとあんまりだからイモータルが迎撃に出てくれていなかったら、砲の破壊もしなければいけないところでしたわ>

「まったくだ」


 こそこそと会話をしていると、近くの兵士が立ち止まってあたりを見回した。


「なんだ?」


 話の声は聞こえなかったが、音が発生したというのは聞こえたらしい。きょろきょろと見回している。

 まずい、とクロウは身を隠す。しかし原因が掴めずに警戒されるのも厄介だった。

 通信機から控えめな音が鳴る。


<ちゅー……ハハッ>


 かなりリアルな、甲高いネズミの鳴きマネである。驚愕なのは、通信機越しで普通の会話をしていたら聞こえるノイズをスフィが全てキャンセルしてその場に居るかのような声を出したのであった。

 

「なんだネズミか……」


 兵士も納得して離れていく。ほっと一息ついた。

 スフィから静かな声で通信が来る。


<私の秘跡で集音と防音処理を行っておいた。お主の声はほんの僅かな囁き声でも聞こえるし、こちらの通信機からの声は音波に指向性を持たせることで他には漏れぬぞ>

「この電話越しでよくできるのう」

<にょほほ、声さえ届けば歌の効果だって届けられるかもしれぬのじゃよー>


 感心してひとまず通信機を耳から離した。

 すると新たな通話を示すサインが画面に浮かんだ。相手は──初めて掛かって来るものだった。


<お父さん、その建物の中に居るの!?>

「……うぇ、ウェム子か」


 音を小さくしていて良かった、と胸を撫で下ろす。

 親子関係はまったくもって存在しないのだが他人と云うには少し知り合いなので一応通信機を渡していた相手、虫召喚士ノウェムの妹の方であった。

 兄より妹の方が扱いやすいのではあるが、少しばかり単純なところもある。クロウは一応呼び分けとして、兄をノウェ、妹をウェム子と呼ぶようにしてある。


「あとお父さんじゃないからな。全然。マジで」

<え? じゃあお母さんに確かめていい?>

「いいか。ヨグは虚言癖だからな。健全な精神のために会話をしたらいかん」

<お父さんっぽい意見ありがとう>

「違う」


 短く否定をして、連絡した要件について問いただした。


<そうだ、お父さん大変だよ。その建物はもうじき爆撃されるよ>

「なんだと?」

<犯人が殺しちゃった野鳥の会の人たちが、鳥召喚士のコールさんと仲良しの人たちで、話を聞きつけたコールさんが消滅させてやるって意気込んでて>

「ちょっと待て。己れは人質を助けに行ってるんだが、止められんのか」

<コールさん、国に雇われているわけでもないし召喚士一族で一番好き勝手にするのが鳥召喚士だから……>


 クロウは渋面を作った。彼も少しばかり何代前か知らないが鳥召喚士と面識があるが、とりあえず凶暴なチンピラに最大限のパワーを与えたような存在であった。

 実際に魔王討伐にやってくるような超人の類である。クロウが魔王城に居た頃に襲ってきた、シモンという女チンピラを思い出した。あの凶悪な火力がもうじきここに叩き込まれる。

 単純火力では竜召喚士や精霊召喚士に劣る鳥召喚士だが、物量と攻撃の種類に関しては召喚士随一の能力を持つ。


<それで時間がないから無理矢理にでも人質を救出する作戦を取ろうと、帝王さんに協力してたんだよ>

「それは?」

<まずわたしがその施設内にゴキブリを一億匹ぐらい発生させて、混乱した隙に帝王さんが正面から突っ込んでいって壁を壊し突入、そのままの勢いで人質を全員抱きかかえて施設から逃げる作戦>

「うわあ死ぬほど嫌だちょっと待て確実性も無いだろう」


 とりあえず勢い重視な作戦にクロウは心底嫌そうに声を上げた。ゴキブリの群れにまみれることになる。

 スマートではない、ノックアウト強盗めいた電撃作戦だが帝王が正面から突っ走ってきたら恐慌して自爆しかねない。

 

<それで人質の位置を探ろうと虫を這わせていたらお父さんが居たから……>

「さっきのゴキブリか、ひょっとして」

<うん>

「……とにかく、その作戦はちょっと待て。己れが安全に人質を全員救出するように動いている」

<わかった! じゃあ帝王さん達を止めておくから、お父さん頑張ってね! 爆撃までもう時間は無いよ!>

「だからお父さんではないと」


 通信が切れた。音を出さないように舌打ちをする。いつか円柱状に吹き抜けのホールで戦いの果てに言わねばならない。アイアムノットユアファーザー。父親になった記憶など無い。

 お房やタマ、子興にお八、雨次などに対しては父親めいた心情を持たないではないのだが、とても不思議なことにノウェムにはそうならない。それこそが証左ではないだろうか。自分を納得させる。

 それよりも急がねばならない理由もできた。このままでは鳥召喚士の爆撃に巻き込まれる。


 ホールの天井は廊下より明るいが、廊下の天井にエアダクトへ入る格子状の隙間があったのでそこに身を潜らせてホールの反対側へ向かう。

 かなり狭いので意識を集中させて、胸に刻まれた術式で体の大きさを十歳前後に縮めた。これでどうにか進めるようだ。

 後ろを振り返ることもできないパイプの中を進んでいき、記録した地図を参照して階段の手前でまた格子状になっているので、頭を出して周囲を確認し降りる。

 階段の近くの観葉植物の影に隠れて様子を伺った。

 人が三人は横に並べないぐらいの広さをした階段は、その踊り場に兵士が一人待機している。

 眠らせて進むか、とも思うがあの位置では階段の手前を巡回しにきた他の兵士に見つかるだろう。

 変わったライフル──ではなく魔法の杖を装備しているので画像を送ってオルウェルに小声で聞いてみる。


<それは新型の[P(ファンタジー)90]っていう連射魔法杖っすね。装填数は50発。水圧弾は特殊加工されてて貫通力が高いっす。人間工学に基づいたデザインで、左右の持ち替えが用意なのが特徴っす>

「なるほど……それにしてもお主、詳しいのう」

<クロウさんが潜入救出するってことで上司が資料を回してくれたんす。期待されてるってことっすよ>


 事件が始まって一日も経過していない。現場レベルではかなり混乱が見られて、帝王の強行突入など錯綜してる感があった。

 とりあえず銃をどう対処するかと思っていると、観葉植物に再び大きなゴキブリがついていてクロウは僅かに身震いをした。顔のすぐ近くに、手のひらぐらいの大きさをしたゴキブリが居たのだから当然だ。

 チャバネゴキブリをそのまま巨大化したような嫌悪感を催す虫だが、逃げるわけでもなくクロウの近くに居る。

 さてはノウェムの動かしているものかと、指を動かして合図をしたら頷くような仕草を見せた。気持ちが悪くなる。

 クロウはゴキブリに指示を出して、階段の踊り場に佇んでいる兵士の顔面に向かって羽ばたかせた。


「うわ!? ご、ゴキブリ!? デカッ!」


 急な害虫の襲撃に慌てたように、P90を振り回して撃退しようとする。

 ただし銃身が突き出ておらず、幅広の板に似た形をしている為にやや手間取って、視界も大きく遮られた。

 そしてその瞬間だけは兵士の頭にはゴキブリのことだけが占められていて、視界の端で何か動こうとも認識できなくなる。

 クロウはさっと階段の手すりを越えて飛び降りて踊り場をショートカットして地下階に降り立つ。足音を殺して着地。踊り場から見えない階段の位置に隠れたが、兵士は居なくなったゴキブリに対して安心混じりの悪態を漏らしているだけで、クロウには気づかなかったようだ。

 隙を見て階段から出て地下の廊下を進む。地面に耳を付けて足音を探るが、歩いている兵士の数は多くない。

 音を殺してクロウは廊下を進む。己が完全に静かになれば、後は異音のように聞こえる兵士の気配だけが明確に浮かび上がってくるようで、誰にも見つからずに何度か角を曲がって恐らく人質が居るらしい部屋に辿り着いた。

 オーク神父は扉の前に兵士が立っていると言っていた。それで実際、二人の兵士がM-16を構えている。

 暫く観察をして、他の兵士が見回りにやってくる様子も無かった。


(二人だけならばいけるか)

 

 クロウは角から僅かにブラスレイターゼンゼの先端を出して、兵士に向けて突発性睡眠病の因子を打ち込んだ。目には見えない微細な病魔が、兵士の鼻から侵入して体内で増幅する。

 途端にナルコレプシーの発作が起こったように膝から力が抜ける。


「おい、どうした……うっ?」


 声を掛けたもう片方も、額を押さえて壁に手を付いて強烈な眠気で床に崩れ落ちた。


「よし」


 意外に便利だが、病気を放置してどんな風に悪化するかまでは予想が付かないのであまり善良な人間に使うべきではない手段だ。

 しっかり眠ったのを確認してクロウは出てきて扉の前から退かす。がちゃがちゃとドアノブを回すが、鉄製の扉は開く気配が無い。

 通信機を操作する。


「オーク神父か。今、お主らが閉じ込められていると思しき部屋の前まで来た。ドアをそちらから開けられぬか?」

<さっきのドアノブの音だね。ドアに何か仕掛けをしていたらしいのはわかるけど……魔法的に封鎖されているかもしれない>

<そうだとすると力任せにはできませんわね>

<クロウ様。今そちらに向かい致します>


 イモータルの通信の後で、クロウのすぐ近くに彼女が空間転移して現れた。

 どういうわけか、片手はオルウェルと握られていて彼女を連れてきたようだ。


「うっぷ。転移ってなんか酔うっす……」

「オル子。どうして」

「わたしの強酸でドアの周りを溶かしてやるっすよ!」

「お願い致します。この程度の壁すら、座標が取れずに転移システム[無限光路]の不調で抜けられないものですから。クロウ様。オルウェル様が作業をしている間、イモータルと周囲の警戒を致しましょう」

「わかった」


 イモータルも麻酔銃を取り出したので、クロウと共に廊下で待ち構えた。

 オーク神父に指示を出して人質を扉から離れさせ、オルウェルはヴァオウドレスによって生成された強酸を噴出して扉の周りをどろどろに溶かしていく。

 異臭がただよい、巡回の兵士がやってきたがイモータルの正確無比な射撃で反応する前に昏倒させられ、並べられていく。

 やがて建物全体に爆発音が響いた。動揺するような空気に包まれるのをクロウは感じる。


「いかん。鳥召喚士の奴の爆撃が始まった」


 単なる鳥と思ってはいけない。口の中に燃焼剤と同じ成分のよだれを貯めている鳥や高熱で爆発する鳥、飛ぶだけで周辺に破壊的な衝撃波を撒き散らす鳥など様々に存在する魔鳥が、数千数万と召喚されて命を惜しまずに突っ込んでくるのである。

 下手をしたら地殻まで到達しそうなビーム砲撃が飛んでこないとも限らない。


「オル子! まだか!」

「ええいあとちょっと……もう切るっす! ブレイド!」


 衣装の袖を刃物に変えて斬りつけて、酸で崩れかけた扉の基部を切断した。

 扉が内側に倒れこみ、人質達の恐怖半分安心半分の表情が見える。


「全員集まれ! 帝都まで飛ぶぞ! 頼むイモータル!」


 クロウが部屋に入り込んで呼び寄せて、オーク神父を含めた人質十四人にクロウとオルウェルを連れてイモータルは空間転移でスフィの教会まで脱出した。

 


 その少し後で、最後っ屁のように煙突から帝都に向けて何かの弾頭が発射されたものの施設と帝都の中間地点で迎撃兵器[琉璃瓶]に飲み込まれて消滅し。

 そして上空から太陽の神鳥ヴェルヴィムティルインが放つ巨大な光の柱に見える光線で、施設は内部の化学物質ごと粒子分解された。





 ******

 



 

 それから、イモータルがマーカーで設定していたスフィの教会まで来た一同であったが。

 

 助けられた要人らはしきりに礼を言って来たがとりあえずオーク神父を助けることが目的だったので、適当に返事をして送りもせずに家に帰した。

 通信機でノウェム妹へ連絡をして、人質の開放を帝王にも伝えるように頼んでおいた。前後して施設が鳥召喚士に消滅させられたと聞いて背筋を冷やしたが。

 それよりクロウは大事なことがあった。

 転移をしてきたところで、イモータルが熱を出してしまったのである。

 とりあえず様子を見るためにソファーに寝かせて、額に氷結符をタオルでくるんで当てて冷やす。

 上気して紅潮しているイモータルは静かに己の具合を告げる。


「……空間転移は同時に転移する人数が多ければ多いほど、乗算的に処理能力が必要になります。不完全なイモータルでは、十六人を連れての転移で、処理装置の電子回路が過剰な熱を持ってしまったようだと自己診断致します」

「そうか……無理をさせたのう」

「いえ。侍女ですので……クロウ様」


 イモータルはクロウを向いて、告げる。


「この状況を改善するために、冷却装置などのシステムをインストールする必要があります。よろしければ、接触致してください」

「おう、わかったわかった」


 クロウはソファーで、イモータルの枕元に座ると彼女に膝枕をしてやった。

 イモータルの目がそっと閉じられる。それはまるで機械だというのに疲れたような仕草である。


「クロウ様」

「どうした?」

「イモータルは……お役に立てたでしょうかと確認致します」

「勿論だ。どうして聞く?」


 薄く開かれた、色の薄い唇から声が紡がれる。


「イモータルは不完全なままクロウ様のサポートを命じられました。しかし思うのです。不完全な侍女など、以前のイモータルよりも能力の低下している今のイモータルでは、お役に立てずに失望致されているのではないかと」

「……」

「主人の命に全力を尽くすが侍女の役目。しかし、イモータルは──そう、不安になり致しております」

「イモータルや」


 クロウが彼女の名前を優しく呼んで、額のタオルを撫でるように触れた。

 イモータルの世界は狭い。彼女の世界は、生きているうちではヨグかクロウとしか繋がっていなかった。だからこそ、そのどちらかの役に立たねばならないという自分の立場に固執している。

 特に、今のイモータルは体のみではなく若干異なる存在だ。コピーデータを元に再現されているので、本来の擬似魂の要素に欠落がある。空間転移が少しばかり上手く行かないのもその為だ。

 だがしかし、そういうことではなくイモータルが居なくなったときにヨグも自分も思っていた感情は違うのだと、クロウは伝えようと思った。

 

「己れもヨグもな、お主が完璧なメイドだろうがドジっ子メイドだろうが、別に良いのだ」

「……」

「お主が居ないと寂しかったから、役に立とうが立つまいが、イモータルは大事だよ。お主の淹れたコーヒーは好きだがな」

「ピコーン」

「なんか鳴った!? まあともかく、休め。今日はお疲れ様だ」


 そう言ってクロウはスフィを手招きすると、隣に座らせた。


「スフィ、疲れの取れる歌を頼むぞ。己れもイモ子も疲れた」

「うむ。任せておれ」

「……機械人形のイモータルにも、歌は効くでしょうかと疑問に思い致します」

「効くかどうかはわからぬが、己れの好きな歌だ。機械ではないが岩人形のゴッチという仲間も好きだった。お主も好きになるよ」


 クロウに褒められて嬉しげにスフィは、部屋に透き通るような綺麗な歌声を披露した。

 それを聞いていて、イモータルは眠っているように安らいだ表情でクロウの太ももに頭を預けていた……。





 ******





 団欒している居間に、食材の入った駕籠を持ってきたオーク神父がやってきた。


「助けてくれたお礼に今日の晩御飯は僕が作って片付けるよ」

「命の危機が日常茶飯事じゃのー」

「あんなことあったのに晩御飯の買い出しとか出かけられるあたり、精神的に相当タフっすよね」


 クロウとオーク神父からすればこの類の命に関わる厄介な事件に巻き込まれるのは、そう珍しくない。

 なのですぐに日常に戻れるしお互いに助け合うから精々メシを奢るぐらいの出来事なのであった。


「ところで何を作るんですの?」

「この教会、パン焼き窯があるから折角なのでピザを焼こうか。野菜ピザやらシーフードピザやら、小さめにたくさん焼くよー」


 オーク神父の巨体の後ろから、ノウェム妹も現れる。


「お父さーん、気の抜けたビールも買ってきたよー」

「うわ、おい。オーク神父お主こいつを連れて来おって……」

「い、いや町中であってついてくるって……家庭の問題だしあんまり口出しはしないようにと」


 気まずそうにオーク神父が云う。


「クロー……お主、お主……」

「待て何度も言うがこいつはあれだ。お父さん的な存在と認識しているだけでまったく己れとは関係のないというかついこの前出会ったばかりの見知らぬ相手だ。本当だ」

「人をロリコンなんて言ってクロウさんの方がドゲスじゃないっすか!」

「黙れオル子」


 とりあえず勘違いしているノウェム妹はどうすればいいだろうかとクロウは真剣に頭を悩ませるのであった。

 彼は自分の子供と認めない。

 身に覚えがないから当然である。

 果たしてノウェムの親は本当にクロウなのか……本の世界のまやかし以外にそんな描写は無かったのだから、怪しいところである。

 そう信じて、クロウは深く考えないようにしつつ異世界を駆け抜ける。

 新たに仲間になったイモータルを加えて、ダンジョンを攻略していくのであった……。




 

「クロウ様。イモータルも、たとえお役に立てなくなろうとも、魔王様とクロウ様を大切にお慕い致しております」


ロリイモ子さんはちょっと性能が低いのと小さいのでクロウも普通イモ子より面倒を見てしまいます

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