表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/137

94:決意の日


 レナちゃんがそんな危険な目に遭っていた……?

 確かに、魔獣浄化に戻って来たとき、レナちゃんはぐったりしていた。ベッドからも起き上がれないようで、今も休んでいるけれど、それはただ光魔法を使ったからだとばかり思っていた。

 いや、その認識で間違いはないんだけれど、もっと軽いものだと、そうわたしは思い込んでいた。


 そんな大変な目にレナちゃんが遭っていたことも知らず、わたしは呑気に無事だったなんて思い込んで……。

 ああ、どうしてディランが怖い顔をして、あそこまで自分を追い込んでいたか、その理由がようやくわかった。


 それはそうなるよ。自分の考えた魔法の術式を使ったらレナちゃんは死にそうな目に遭ったんだから。自覚しているかは知らないけれど、自分の大切な女の子を自分のせいでそんな目に遭わせてしまったのだとしたら、自分を責めないはずがない。


 わたしは喋ろうとして、知らず知らずのうちに息を止めていたことに気づいた。

 一気に苦しさが襲ってきて、息が乱れる。


『レベッカ……? どうしたの?』


 心配そうなアンディに息が整ってから、なんでもないと答える。


「ごめんなさい、びっくりして……じゃあ、ディランさんは、レナさんがそうなったのは自分のせいだと思っているのね……」

『おそらくね……まあ、本人は絶対に認めないだろうけれど』


 プライドが高いからなあ、ディランは。

 そして……レナちゃんが魔獣を浄化していくのは無理だと判断されたと言うことは、なにも状況は良くならないということでもある。

 問題は山積みだ……レナちゃんの光魔法改良には絶対にディランの力が必要だ。それはディランもわかっているだろうし、むしろ自分がなんとかしなけれならないと追い込んでしまっている……そんな状況で、果たしていい成果が出せるものなんだろうか。


 魔獣に関してもだけど、ジャックのこともあるし、わたしの呪詛のこともある。

 本当なら自分のことだけに集中したいところだけれど、そうも言っていられる状況ではない。自分のことだけに集中した結果、この国は滅びました──なんて笑えない。


 頭が痛いとはこのことだな……せめて、レナちゃんの光魔法がもっと気軽に使えるようになれればいいんだけど……。

 ……いや、レナちゃん一人が光魔法を使えるようになったところで、状況が一変することはない。多少はマシになる、程度の効果しか期待はできない。要するに一時凌ぎだ。

 もっと根本を叩かないと……でもそれには、【黒の魔力】が溢れ出す源泉を見つけなければならないし、それを塞ぐ方法も考えないといけない。


 ……正直なわたしの感想としては『お手上げ』だ。

 でも、一つずつ解決していくしか方法はない。まずはディランをなんとか本調子に戻さないと……でもあんな別れ方しちゃったしなあ……。

 今度はレナちゃんを連れて行こうか。レナちゃんがいれば態度が変わるかもしれないし……。


『……レベッカ』

「なに?」

『君はなにも考えなくていい』

「え……?」


 それってどういう意味……? わたしが考えたところで無駄だってこと?


『僕は君に頼りすぎていた。君はこの国のことなんて考えなくてもいい。それは僕たちの仕事だ。君はまだただの僕の妃候補というだけの女の子だ。この国のことを背負う必要はないんだよ』

「アンディ……」

『僕の話を聞いてくれるだけで十分だ。それ以上はなにもしなくていい』

「……」


 アンディがわたしのことを気遣ってくれているのはわかっている。

 きっと……わたしが悩んでいることも気づいているんだろう。その悩みの内容までは知らなくても、わたしが自分のことで精一杯になっていることに気づいているんだ。だから、そんなことを言う。


 でも……でもね、もう遅い。わたしはこの件に深く関わりすぎている。それにこれはわたし自身まったく関係のない話でもない。だから、アンディのその優しさを、わたしは棒に振る。


「ありがとう、わたしを心配してくれて。でも、わたしはもうこの件に関わりすぎているわ。それなのに、今日からわたしは一切関わりませんというのは無責任だと思う。だからわたしは、わたしにできる限りのことはやるつもりよ。アンディに必要ないって言われてもやるんだから」

『レベッカ…………そうだね。君はそう言う人だった』


 アンディは少し諦めたように言う。


『でも、これだけは覚えておいてほしい。君は僕にとって必要な存在だ。だからどうか、無理はしないで』


 真剣なアンディの言葉に息を呑む。

 そして、少し泣きそうになってしまう。


 ……ずるいな、そんなことを今言うなんて。


 涙声にならないように気をつけて、わたしはありがとうと答えた。

 そしてアンディとの通信を切った。


「……なんで今、そんなことを言うのよ……」


 小さく呟いたはずなのに、誰もいない部屋にはやけに大きく響いた。

 ハッとして、眠っているヴァーリックの様子を覗く。起きてはないないようでホッとする。


 そしてそのまま、自分のベッドにダイブして顔を枕に押し付ける。

 ──涙を堪えるために。


 わたしはおそらく、一年もしない内にアンディの前からいなくなる。

 それを知った日に「必要な存在だ」なんて言われるなんて、なんの悪い冗談だろう。

 必要だって言われて嬉しかった。それと同時に、自分が消えたあとのアンディのことを思うと辛くなった。


 わたしのアンディの関係は、友達よりも近く、恋人とは少し違って、家族よりは少し遠い、そんな関係。

 そんなそんな存在がいなくなってしまったら、わたしならきっと立ち直れない。


 アンディは人前では何事もなかったかのように振る舞える人だ。

 だからこそ、一人になったときのアンディが心配だ。自暴自棄にはならないだろうけれど……健康面を害しそう。


 わたしを大切に思ってくれている人たちのためにも、わたしは死ぬわけにはいかない。

 なんとしてでも、生き延びなくては。


 ──そう、改めて決意をした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ