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91:ジャックとディラン


「ねえ、レベッカちゃん……どこ向かっているの、この車」

「もうすぐ着きますわ。着けばわかります」

「なんか嫌な予感……」


 ブルリと体を震わせたジャックに対し、わたしは笑顔を保った。

 その予感、当たっているよ。


 少しして車は目的地へ到着した。

 わたしが宿としてジャックを案内したのは──ディランの家だ。


 ディランの家は元々皇家所有の建物。そこをディランが一人で使っている。

 壊れた家の改修工事はつい先日終わったと聞いている。だから、ジャック一人泊める余裕はあるはずだ。それにここなら追手も追いにくいだろう。皇家の結界が張られ、なおかつ人嫌いのディランの張った罠や結界があちこちにあるし、ここに忍び込むのは熟練の凶手であっても難しいと言われている。


「ここって……」

「皇家所有の屋敷ですわ。天才魔導士ディランの住む家でもあります」

「やっぱりそうか……! ここはちょっと……」

「あら。なにか問題がありまして? ここほどセキュリティの強化な場所は滅多にないと思いますけれど」

「そういうことじゃなくて……」


 わかっているよ、ディランに会うのが気まずいんだよね?

 ジャックはおそらくディランの兄弟子ジェームズだ。あの火事からどうやって生還したのかは謎だけど……未来が見えるジャックなら生還できても不思議じゃない。


「では、どういうことなのでしょう? それとも……ジャックさんはディランさんが苦手なのかしら?」

「そ、そういう……感じ、かな……」


 しどろもどろなジャックににんまりしてしまう。

 いつも振り回されることが多かったら、すごくいい気味だ。


「苦手とおっしゃるくらいですから、ディランさんとはお知り合いなのですね。知らなかったわ」

「…………レベッカちゃん……君、わざと言ってるだろ?」

「なんのことかしらぁ」


 オホホホととぼける。

 まあ……いじめるのもこれくらいにしてあげるか。


「大丈夫ですわ。ディランさんは人嫌いですし、基本的に研究室に引きこもっています。ジャックさんには本館の一部屋を使っていただければ、ディランさんと会うことは滅多にないと思います」

「研究室に引きこもっている、ねえ……まあ、そういうことなら……」

「納得していただけてなによりです。では、今からディランさんの説得にいきましょう」

「ああ、わかっ…………今、なんて?」

「ディランさんの説得に行きましょうと言いました」

「……許可、取ってないの?」

「殿下からはいただいています。なので、ディランさんが何を言おうとジャックさんは部屋を借りていただいて結構ですが、きちんと説得しないと後々面倒になりそうなので、今から説得します」

「……」


 ジャックは天を仰いだ。

 許可を取っていると思った? 甘いな。ジャックと会うことが決まったのは昨日で、ジャックが追われていると知ったのは今日だ。その短い間に宿を確保し、ディランを説得するなんて無理に決まっている。アンディに許可をもらっただけでも褒めてほしいくらいだ。


「……読めた。レベッカちゃん、君は俺をディランのご機嫌取りに使う気なんだろ?」

「ご機嫌取り?」


 首を傾げ、なにを言われているのかわからない……と顔をしたけれど、心の中で小さく拍手をしていた。

 その通りだよ、ジャックくん。わたしは君を……正確に言えば、君の能力をダシにジャックの宿を提供することを了承させようと思っていた。


 ただ……普段のディランならこれで間違いなく「仕方ないね」と頷いてくれるんだけど……前に見たときにすごい怖い顔をしていたのが気になるんだよなあ……魔獣浄化の日以降、ディランを見ていないし……。

 兄弟子と再会すれば、ディランも元気になるかなという打算もちょっとある。


「俺の未来視の力を研究させるとかなんとか言って、俺が部屋を使うことを了承させる気なんだろ?」

「まあ、その通りです。さすがジャックさん」


 すごーい、と棒読みで言って投げやりに拍手をする。

 あきらかにさすがなんて思ってないでしょ、と言うジャックの言葉はもちろん無視だ。


 渋るジャックに適当な言葉をかけながら、ディランの研究室に向かった。

 研究室は相変わらずの汚さ……いや、前よりも汚くなっている……?

 部屋の奥には必死になにか書いているディランがいた。背中を向けているから表情まではわからないけれど……なんだかすごく切迫している感じがした。


 これは……いつものディランじゃない。魔獣浄化のときになにかあったんだろうか……あの天才をこんなに追い詰めるくらいのなにかが……。

 ジャックを顔を見合わせると、ジャックは肩をすくめた。

 そして心配そうな顔をしてディランを見つめる。


 なんだかんだ言って、ディランのことは気にかけているんだなあ。

 ちょっと意外に思いながら、わたしはディランに呼びかける。


「ディランさん、ちょっとよろしいですか?」


 ディランはわたしの呼びかけにピクリと反応し、ゆっくりとした動作で振り返った。


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