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90:死因


「取引……?」


 怪訝そうな顔をするジャックに頷く。


「ええ。わたしはジャックさんに安全な宿を用意しましょう。追手がやってきても手出し不可能の場所に心当たりがあります。ですがその代わり、ジャックさんには見てほしい未来があるのです」

「なるほどね……」


 ジャックはそう言ったあと、すぐに「わかった、乗ろう」と答えた。

 あっさりと乗ってきたジャックにちょっと拍子抜けする。あれ……もう少し腹の探り合い的なやりとりが発生するものかと覚悟していたのに……。

 いや、そんなものない方がありがたいんですけれど。


「あっさり頷くんですね……?」

「まあね。殿下の信用を勝ち取るために、まずは君の信用を勝ち取るのがいいと思って。それに、寝床に困っていたのも事実だしなぁ」


 わたしから陥落させようってことか。そしてわたし経由でアンディの信頼も少しずつ勝ち取っていく……なかなか考えているじゃないか、ジャック。

 だけどね、わたしを堕としたところで、そう簡単に信用するアンディじゃない。アンディは信用できる人かどうかは自分で判断する人だ。決して、わたしの信用がないとかそういうことではない。


「それで、なんの未来を見てほしいの?」

「先に見てくれるんですか?」

「別に減るものじゃないし、君の知りたい未来って、そう遠くない先のことでしょ?」


 力使うと疲れるんじゃないの? まあ、見てくれるならその言葉に甘えるとするか……幸い、ここにはわたしとジャックしかいない。


「……ええ、そうです。ジャックさんに見てほしいのは……わたしの未来です」

「君の未来? 意外だな、君は自分の未来のことを知りたいと思うタイプじゃないと思っていたけど。というか、知っているんじゃないの?」

「わたしはジャックさんみたいな能力はありません。ただ……普通の人よりも記憶がたくさんあるだけで」

「記憶がたくさん……?」


 首を傾げるジャックに曖昧な笑みを向ける。

 前世の記憶があるなんて言うわけにはいかない。それで変な誤解を生んで妃候補から外れたくないし、なにより……前世の記憶はあまりいいものじゃないから、極力話したくないのが本音だ。


「よくわからないけど……君の未来を見ればいいんだね?」

「はい、お願いします」


 わかった、とジャックは頷く。

 未来を見るってどうするのかな……じっと見つめるだけで見えるものなのかな?

 少し緊張しながらジャックを見ていると、彼は突然長椅子に座り、寝る体勢になった。

 え? なんで?


「……」


 ジャックは目を閉じて、そのまま眠ってしまった。

 もしかして……未来を見るには寝る必要があるの? それってすごい不便なのでは……。


 そんな心配をしていると、すぐにジャックは目を開けて起きた。

 目が痛むのか眉間をほぐすように指で押して、わたしを見た。その目は少し充血していた。


「…………なるほどね。君が自分の未来を知りたいって言った意味がわかったよ」

「……どうでした?」

「結論から言えば……君の一年後の未来を見ることはできなかった」

「……そう、ですか……」


 予想していたことだけど、実際に言われるとショックだなあ……。しかも一年後はないとかね……。


「驚かないんだ?」

「……ええ、まあ。ショックは受けていますけれど……予想は、していましたから」

「……ふうん?」


 一年か……わたしの命は長くて一年。

 ジャックの様子を見るからに、明日死ぬってことは少なくともない。……と、信じたい。


「具体的な話をしようか。俺が見た限り、君が死ぬのは半年後だ。どの未来でもそれは変わらなかった。日にちの微妙なズレはあったけど、それも数日程度だった」

「そうですか」


 半年後か……明日死ぬってわけじゃなくてよかった。

 そうか、それくらい猶予があるのなら……。


「ジャックさん、あなたの見たわたしの未来では、どれもわたしは同じ死に方をしていましたか?」

「うん、同じ……いや、待って。一つだけ違うのがあったな……そうだ、その未来では()()()()()()()()()()()()()()。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 死んだ場面は見えなかったけど、それから先の未来は見えない。

 それってどういうこと……?


「……それってなにか違うんですか?」

「わからない。こんなの初めてだよ」


 ジャックも戸惑っている。

 よくわからないけれど……その未来なら、もしかしたらわたしは死なないかもしれないっていうことなら、希望が見えたってことだ。


「その一つ以外は、わたしはどんなふうに死ぬんですか?」

「魔力暴走だよ。いやあれは暴走っていうよくも、暴発って感じだったな。身の危険が差し迫って、それで魔力がドカーンってなる感じだった」

「やっぱり……」


 死因は呪詛だな。それは確定。

 あとは暴発するに至った詳しい経緯と、死ぬ場面が見えなかったという未来について詳しく聞きたいところだけれど、そろそろ王宮から出ないとな……。

 仕方ない。詳しい話はジャックの宿で聞くことにしよう。


「とりあえず、ありがとうございます。また今度、詳しく聞かせてください。それでは……ジャックさんの宿に向かいましょう」

「よろしく〜」


 元のチャラい感じで言うジャックに笑顔を向ける。

 そのチャラさ……宿についても維持できるかな?


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