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82:実技が苦手


 男子寮に侵入し、アンディと会うことに成功してから十日が過ぎようとしていた。

 レナちゃんは光魔法の効率化を目指し、毎日試行錯誤を繰り返している。

 ディランも放課後は真っ直ぐ家に帰らず、うちに寄るようになった。そしてレナちゃんの光魔法を使う姿を見ながら、なにやらぶつぶつと呟いたり、唐突に紙に書き殴ったり、難しい顔をして空中を睨みつけたりしている。多分、ディランなりに光魔法をどうにかしようと必死に考えているのだろう。


 毎日うちに通うのは大変だろうから、レナちゃんと同じように泊まっていけばと言ってみたけれど、研究室の資料を見たりしたいからと、律儀に毎日家に帰っている。夕飯は我が家で毎日食べているけどね。

 いつの間にやらディランの研究室とうちを繋ぐ魔法陣が設置されていてびっくりした。ちゃんとお父様には許可をもらっているらしいけれど……転移魔法陣を設置したって報告くらいしてくれてもいいのに……。


 ヴァーリックは相変わらず眠ったままだ。

 光の精霊バードいわく、光魔法と言うのは「悪いものを取り除く」作用があり、【黒の魔力】に汚染されるとその生物の魔力をまずは汚染する。その魔力を光魔法で取り除いたため、魔力を回復させるのに時間がかかるのだろうということだった。

 ドラゴンは他の生き物に比べてはるかに魔力量が多い。人間の百倍くらいの魔力量を保有しているという話もあるくらいだ。そんなドラゴンが【黒の魔力】に汚染されたら、その時間が長い分、光魔法で取り除かれる魔力も多くなる。こちらの世界は聖獣の世界よりも自然にある魔力の塊みたいなものが少なく、その分だけ回復にも時間がかかるのだとか。


 眠り続けるヴァーリックを眺めて、早く目が覚めますように、と毎日祈っている。

 そうすることしかわたしにはできないし……あとできることといえば、ヴァーリックが目覚めたとき用に食べ物を用意しておくことかな。とりあえず、カレーを作る用意はできているし、早くヴァーリックと一緒に食べたいな。


 そんなことを考えながら、わたしは必死だった。

 なにに必死かというと……学園の授業だ。特に実技がね……わたし、本当に魔法はポンコツだから……。

 ポンコツでもアンディの筆頭妃候補であるわたしが落第点なんて取るわけにはいかない。だから、ポンコツなことがバレないように必死に虚勢を張って、なんとかそれらしく振る舞っているけれど……そろそろそれも限界が近そうだ。

 おかしいなあ。ゲームのセツコはそんな感じじゃなかったんだけど……なんか普通に強そうな魔法使っていた気がするし……わたしは一切使えませんけどね。ゲームのセツコも意地張っていたのかなあ?


 そもそもわたし、セツコっぽいことあまりしていないな……。

 セツコはなにかと説明してくれるキャラクター。主人公ちゃんに意地悪をするていで実は丁寧に教えてくれるツンデレ──に見える人だった。わたしもそれなりに頑張って説明しているんだけど……説明するとどうにも意地悪くさくなるんだよね……セツコとしての宿命か……。

 まあ、レナちゃんが気にしていないようなのが救いなんだけどね。


「あの、レベッカさん……」


 なんとか課題の魔法をこなしてほっとしているわたしにレナちゃんが声をかけてきた。

 ほっとしていたのがバレたんだろうか……。


「なあに?」

「あの……前からずっと気になっていたんですけれど……でも、気のせいかなって思ってあえて言わなかったことがあるんです……」


 ギクっ。わたしのポンコツぶりがバレた⁉︎

 ……いや、バレるもなにも、それは随分前からレナちゃん知っているよね。

 じゃあ、あえて言わなかったことってなんだろう?


「レベッカさん……レベッカさんって実は……」

「……」


 な、なにを言われるんだろう……わたしが一体なに……?


「……とんでもない魔力の持ち主なのでは……?」

「…………はい?」


 とんでもない魔力の持ち主? わたしが?

 ないない。だってろくに魔法も使えないし。魔力量検査でも標準って出たし。


「そんなことはないと思いますけれど……でも、どうしてそう思われたんです?」


 否定しつつ、レナちゃんがなんでそう思ったのかが気になって尋ねてみる。

 レナちゃんがわざわざそう言うってことは、なにかそう思う理由があるんだよね。ヴァーリックかな?


「えっと……なんて言えばいいか……わたし、魔法を勉強して、光魔法のことを強く意識するようになってから、なんとなく人の魔力量がわかるんです。オーラみたいな感じで、その人を囲っている光があるんですけれど、その大きさによって魔力量が違うって最近気づいたんです」


 へえ、そうなんだ。

 じゃあ、ディランとか見るとすごい光が見えるんだろうな。ちょっとした逆光になりそう。ディラン神。


「色とかも人によって違うんですけれど、それはその人の属性の色みたいなんです。ディランさんやレベッカさんは白っぽい光ですし、アンドレアス殿下は朱色の光に見えます」

「そうなんですね」


 アンディの属性は火だからね。朱色も納得だ。

 わたしとディランは無属性だから色がない。つまり、白っぽく見えると言うことなんだろう。


「レベッカさんのオーラの大きさは普通の人と変わりません。でも……時々、すごく光るときがあって……そのときはディランさん以上の大きさにオーラがなるんです」


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