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68:スイーツは堪能しました


「レナ嬢……ありがとう。頼んでおいてこんなことを言うのはどうかと思うけれど……これは危険な頼み事だよ? もちろん、君に危害は加えないように最大限努力はするけれど……」

「困っている人がいたら助ける──それって当たり前のことでしょう? 私は当たり前のことを当たり前にできる人でありたいんです」


 そう言ったレナちゃんにデジャブを感じる。

 ……あれ。今のセリフ、どこかで聞いたような……ゲーム内のセリフ……? ……だめだ、思い出せない……。


「……ありがとう。君の英断に心から感謝を」

「いえ。それよりも、具体的に私はなにをすればいいのでしょうか?」


 アンディがレナちゃんに具体的な話を説明し出す。

 まずはこのあたりの比較的弱い魔獣が出るエリアに行き、そこで魔獣に光魔法を使う。そこで魔獣が聖獣に戻るかどうかを確かめたいらしい。

 アンディはヴァーリックの話を百パーセント信じたわけはないようだ。それはそうだよね。そんな話なんて聞いたことないもの。


「……なるほど、わかりました。でも、魔獣に光魔法を使うにはある程度弱らせる必要があるかと思います」

「なぜ?」

「おそらくですが、私の光魔法はまだ弱いです。本来の光魔法の作用の半分も効果を発揮できていないと思います。だからある程度魔獣を弱らせないと効果がないと推測します」

「……ディランはどう思う?」

「ボクもレナと同じ意見だ。今のレナはせいぜい枯れかけている花一本を元気にさせる程度の光魔法だ。そんな魔法を元気な魔獣にかけてもほとんど効果はないと思うよ」

「……そう。じゃあ、彼女を守るだけではなく、魔獣を攻撃して弱らせる人物が必要と言うことか……」


 そう呟いたアンディにディランは深々とため息を吐いた。


「……いいよ、魔獣を弱らせる役はボクがやる。ボクの弟子に下手に怪我をさせるわけにはいかないし、なにより大事な研究材料が減るのは避けたいし」

「助かるよ、ディラン」

「攻撃役なら、わたし──の護衛のノアも使ってください」


 そう言うと少し離れた席にいるノアが「ヘックショイ!」とくしゃみをした。

 噂をすればなんとやらってやつだね。


「ノアなら任せられるな、頼む」

「お任せください。もちろん、リックも使ってくださいね」

『……ん? 我の名を呼んだか?』


 大人しくパフェを食べていたヴァーリックが名前を呼ばれて反応する。

 耳ざといね。


「リックもお手伝いをよろしくね」

『手伝い? なんのだ?』

「魔獣を弱らせるお手伝いよ」

『はあ? なぜ我がそんなことを? 貴様ら人間がやればいいだろ』

「まあ、そう言わずに、ね? お手伝いをしてくれれば美味しい物をたくさん食べさせてあげるから。──アンディが」


 そう言うと、「また僕に振る……」とアンディは呆れ顔をする。

 いやでもこれはアンディが言い出しっぺですから。それくらいするのが当然だと思うの。


『主は我をなんだと思っているんだ。いつもいつも食べ物で釣られる我ではないぞ。我の優先はあくまでも主で、レナは二の次だ。我はレナよりも主を優先することはゆめゆめ忘れるな』

「……」


 いつになく真面目な顔で言ったヴァーリックになんて答えたらいいのかわからない。

 ヴァーリックの言ったことは考えてみれば当然のことだ。ヴァーリックはわたしの守護獣なのだからわたしの守りを優先するのは当たり前。わたしよりもレナちゃんを優先する──なんてことは契約上あってはならない。


「リック、君はそれでいいよ。レベッカを守るついでで構わないから、手伝って欲しい」

『それならいいだろう』


 頷いたリックにアンディも少しホッとした顔をした。

 ドラゴンがいてくれるのとそうでないのでは雲泥の差だものね、物理的に。

 強い生き物が傍にいると、動物は萎縮する。それは聖獣や魔獣であっても同じはずだ。


 詳しい日時はまた決まり次第伝えてくれることになり、その日は解散になった。

 楽しみにしていた女子トークはできなかったけれど、お目当てのスイーツは堪能できたので満足することにした。



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