表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/137

60:ディランの兄弟子


「本当ですか? いったいいつ、どこで?」


 食い気味で聞くわたしにレナちゃんは驚いた顔をしつつ、答えた。


「え、えっと……見覚えがあると言っても、知り合いではありません。何回か家で見たことがあるような気がして…………あっ、そういえば、オスカー殿下とお散歩をしたときにも見かけました」

「あのときに?」


 ということは……ジャックはこの近くにいるということ?

 いや、待て早まるな。わたしの似顔絵はあくまで〝雰囲気が近い〟というだけだ。似たような雰囲気の人を見かけてレナちゃんがジャックだと感じただけかもしれない。


 でも……レナちゃんの家で見かけた、か……。

 ルーカスならなにか知っているかな? 今日はなにやら用があるらしくて、ルーカスは来ていないのが残念だ。明日は来るかな?


 ディランもジャックの似顔絵を覗き、「あれ?」と首を傾げた。


「ディランさん、どうしました?」

「いや……ボクの知り合いに似ているような気がして。いや、でもなあ……」


 ディランらしくない、はっきりしない態度だ。

 その知り合いになにかあるのだろうか?


「この方を探しているんです。知っていることがあるのなら教えてください」

「……うーん……まあ、いいか……聞いてがっかりしないでよ。この似顔絵、ボクの兄弟子にあたる人に似ているんだよ」

「ディランさんの兄弟子?」


 ディランに兄弟子なんていたっけ?

 彼は諸外国でも有名な魔法士の弟子だった。その人はもうすでに儚くなっているのは知っている。高名な方だし、ディラン以外に弟子がいてもおかしくはないけれど……その人もディランと同じで人嫌いで有名だった。だから、ディランの他にも弟子がいるのは少し驚きだ。


「師匠はボク以外にももう一人弟子をとっていたんだよ。まあ……六年前に亡くなったんだけどね、その兄弟子」

「え……? 亡くなった……?」

「そう。だから言うのを躊躇ったわけ。似ているけど、他人の空似なんだろうね」


 死んだ人間がいるわけないんだから、とディランは言う。

 確かにディランの言う通りだ。でも……なにか引っかかる。それに、レナちゃんの家で見かけたという話も。


 レナちゃんの家で見かけた人物についてはあとでルーカスにも話を聞くとして、ディランの兄弟子だった人のことについては少し調べよう。


「ちなみに、その方の名前は?」

「ジェームズだけど……まさかキミ、ジェームズが生きていると思っている? それは絶対ありえないよ。だって彼は──ボクと先生の前で死んだんだから」

「そうだったんですか……」


 ディランと彼の師匠の前で……。

 幼いディランにはショッキングな出来事だっただろう。これ以上掘り下げるのはやめよう。

 それに……十歳の子どもの記憶だ。あまりのショックな出来事に、記憶を改竄してしまった可能性だってある。


「わかりました。お二人とも、お時間をいただきありがとうございました。魔法の授業、がんばってくださいね」


 にこりと笑いかけ、わたしは二人のもとを後にする。

 そして二人の姿が見えなくなったところでノアを呼ぶ。


「……ノア。いるんでしょう?」


 誰もいないところでそう呼びかけると、すぐに返事があった。


「ウッス。なんスか、お嬢」


 相変わらずの調子でノアが姿を現す。

 屋敷内で護衛なんて必要ないのだけど、たぶんお父様かアンディの差し金だろう。どうやらわたしは信頼されていないらしい。


 まあ……何回か無断で屋敷抜け出しているからね。きっとそれがバレたんだろうな……。


「調べてほしいことがあるの。頼める?」

「オレ、調査は得意じゃないんスけど……一応聞きますね。なにを調べればいいんスか?」

「ディランの兄弟子というジェームズという人について、できるだけ調べて」

「……そういうの、殿下にいつも頼んでません?」

「今回はアンディに頼めないの」


 彼に関してはあまりアンディに関わってほしくない。嫌な予感がしてならない。この予感がただの気のせいならいいのだけどね……。


「……わかったっス。オレでできる範囲で調べてみるっス」

「お願いね。あと、この似顔絵に似た人物がデイヴィス家に出入りしていた形跡があるかも調べて」

「人使いが荒いっスね……でも、了解したっス。お嬢、皇妃様になったらオレにたんまりご褒美くださいね」

「もちろんわかっているわ」


 仮に皇妃になれなかったとしても、ノアにはいずれご褒美を与えるつもりだ。それくらいの働きをこの護衛はしてくれている。

 さすが元皇宮騎士だけあって、ノアは護衛としても非常に優秀だ。まあ……言葉遣いが悪いのが玉に瑕なんだけどね……。


 とりあえず、ジャック関連のことはノアに任せることにしよう。

 これでなにか手がかりが掴めることを祈るばかりだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ