57:問題解決?
「……」
ディランは頭を下げ続けるレナちゃんをじっと見ている。
わたしは固唾を飲んでその様子を見守った。
どうかレナちゃんの思いがディランに伝わりますように……。
「…………しょうがないなぁ……」
諦めたようにそう呟いたディランにレナちゃんは顔をあげる。
「ディランさん、それって……!」
「キミには根負けしたよ。そこまで言うのなら、もう一度教えてあげよう」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに笑ったレナちゃんにディランも釣られるように笑う。しかし、すぐにハッとした顔をして、視線を逸らす。その顔は少し赤い。
……おやぁ? ディランったら照れてるのぉ?
そんなわたしの下劣な感情が伝わったのか、思いっきり顔に出ていたのかはわからないけれど、ディランに怖い顔で睨まれた。
「い、言っておくけど、 ボクはそんなに暇じゃないんだ。天才のボクに魔法を教えてもらえる有り難さをしっかり噛み締めてよね。それに今度は前よりも厳しくするから」
「はい! ありがとうございます! またご指導、よろしくお願いいたします」
「……うん」
頷いたディランの目はほんのちょっとだけ優しい。
実はアンディの言うことをほんの少しだけ疑っていたんだけど、あの目を見たらそれも晴れた。
ディランの想いがレナちゃんに届くといいな。本人に自覚あるのかどうかはさだかではないけれど、レナちゃんもやぶさかではないみたいだし。
「……ところで……あのとき、オスカー殿下となんの話をしたの? あ、いや、別に深い意味はないんだけど。あんなに魔法使えなかったのにどうやったのか気になっただけで」
しどろもどろなディランにわたしはニヤニヤしてしまう。やっぱり気にしていたんだなあ。
わたしのその笑みに気づいたのか、ディランがギロリと睨んできたけれど、まったく怖くないもんねー!
……ところで、わたしもオスカー殿下となにをはなしていたのか気になるので、ぜひ聞きたい。
レナちゃんは特に気にした様子もなく、あっさりと話してくれた。
「オスカー殿下とは弟のことについてお話をしました」
「弟?」
訝しげなディランに対し、わたしはああそうか、と納得する。
レナちゃんとオスカー殿下には共通点がいくつかある。そのうちの一つが出来のいい弟がいること、だ。
「雲の上の存在だと思っていた皇子様も、私と同じように悩んで苦しんていたんだって思ったら、なんだけ気が楽になって……オスカー殿下と弟の良いところをお話していたら、胸のつかえがだいぶ取れたように感じました」
「ふうん……」
いまいちディランには理解し難いようだ。
出来の良い弟がいること以外にも、レナちゃんもオスカー殿下も魔法を暴走させ、魔法に対する苦手意識を持っている。もしかしたら、オスカー殿下は魔法との向き合い方についても話したのかもしれない。
「最近、魔法を使うとき、ディランさんの言葉を思い出すんです。だからきっと、私がきちんと魔法を使いこなせるようになるためには、ディランさんのお力が必要なんです」
「……ふ、ふーん……」
興味なさそうな仕草をしているけれど、わたしにはわかる。ディランは今、すごく照れている!
「……まあ、キミの光魔法には興味あるし、研究もしたいし……仕方ないから、きちんと光魔法を扱えるようになるまでは付き合ってあげるよ」
「はい!」
素直じゃないなあ。普通に協力するよって言えばいのに。
……まあ、素直なディランなんて気持ち悪いけどね。
とりあえず……これでレナちゃんの問題は一応解決かな。
あとは……黒の魔力の出処を探し出し、なんとかする方法を見つける。
って、言うのは簡単なんだけどね……どちらも簡単には見つからない。
オスカー殿下の言っていた場所というのは、本当に風の噂のようなもので、実際に見たという人物がまったく見つからないのだという。
それからガセである可能性が高いと、アンディもオスカー殿下も言っていたけれど……。
でも、こんなタイミング良くそんな情報が流れる?
ガセであっても出処があるはずだ。その情報の発信源である人物を見つけ出した方がいいのではないだろうか。
一応、そう二人には進言したけれど、実際に動いてくれるかは五分五分といったところ。動いたところでその人物にたどり着けるかも正直怪しい。
ゲームではどういう展開になるんだったかなあ……国中で魔獣が暴れだして大変なことになる、ということだけは覚えているんだけど。
メモもうろ覚えにしか書いていなくて、まったく宛にならない。
ただ……この件に関して黒幕がいる、ということだけはしっかりメモに残っていた。
問題はその黒幕が誰かってことなんだけど……例のごとくまったく覚えていない。
そもそもゲームの登場人物さえあやふやだ。サブキャラの名前なんて覚えていないし、顔を見たところでゲームにいたと思い出せる自信もない。
さすがに攻略対象者のことは覚えているけれどね……それ以外のキャラはちょっと……。
でも、その黒幕はどのルートでも登場する人物であるはずだ。突然知らないキャラが出てきて「私が黒幕なんだよ、ハッハッハッ」と言ったところでプレイヤーが置き去りになるだけだからね。
と、なると……ひとまずは候補者リストを作ろうかな。レナちゃんと攻略対象者の交友関係で、共通する人物の一覧を。




