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38:作戦成功


 振り返ると、そこにはアンディがいた。

 あ、いたんだ。いや、わたしが呼んだのか……そうだった。このお茶会に参加してもらう餌としてアンディを使ったんだ。レナちゃんの笑顔にデレデレしていて忘れていた。


「あら、殿下。ようこそいらっしゃいました」

「今日はお招きありがとう、レベッカ。会うのは久しぶりだね」

「そうですね。こうしてお会いするのは一月ぶりくらいでしょうか」

「それくらいになるかな。それよりも……君と親しく話をしている彼女を紹介してくれるかい?」

「ああ……申し訳ございません。こちらはレナ・デイヴィスさんですわ。レナさん、もうご存じでしょうけれど、こちらはアンドレアス殿下です」


 はじめまして、とニコニコと笑顔を浮かべるアンディにレナちゃんは戸惑いながらも挨拶を返す。


 よくもまあ、ヌケヌケとはじめましてなんて言えるな……一度会っているくせに。まあ、変装はしていましたけどね。


 ディランも呼んでいるけれど、彼は来ていない。人の多いところは苦手なんだそうだ。数ヶ月後には人の多い学園に通わないといけないのに大変だなあと思う。


 主催として招待客に声をかけながら、レナちゃんの様子を気にする。

 レナちゃんは誰とも話をせず、一人でぼんやりとしているようだ。時折お茶とお菓子を食べているようで、それは安心した。お菓子はわたしが厳選したものだからね! 沢山食べてほしい。

 それはさておき、さっきあんなことがあったから、レナちゃんに話しかけようと思う人がいないのだろう。


 一人くらい話しかけてくれる人がいるんじゃないかと期待していたけれど……期待はずれだったみたい。

 まあ、友達作りは学園に入ってからおいおいやってもらうとして……そろそろお茶会も終わりの時間だし、仕掛けよう。


「レナさん、楽しんでいただけているかしら?」

「レベッカさん……ええと……はい」


 レナちゃんは迷ったのち、小さく頷いた。

 わたしを気遣ってくれたのだろう。優しいなあ。


「今日はあまりお相手ができなくてごめんなさいね。もっとレナさんとお話がしたかったのだけど……」

「そんな……嬉しいです。私もレベッカさんともう少しお話したかった」

「まあ、嬉しい! ……そうだわ、レナさんさえよければ、今日はわたしの家に泊まったらいかがかしら?」

「え?」


 レナちゃんの目が大きく見開かれる。


 これが作戦だ。

 ひとまず、一日レナちゃんをうちに泊める。それからあれこれ理由をつけてズルズルとレナちゃんがうちにいる期間を延ばす。

 その間ディランにうちに通ってもらい、レナちゃんと魔法レッスン励んでもらう。


 すごく単純な作戦ではあるけれど、これなら物理的にレナちゃんを引き止めることが可能だ。ましてや我が家から「ぜひに」とでも言えば、デイヴィス家はレナちゃんのお泊まりを承認せざるを得なくなるだろう。

 まあ、承認しなくても強制的にお泊まりしてもらいますけどね! これくらいの越権行為なら可愛いものだろう、たぶん。


「でも……ご迷惑なんじゃ……」

「迷惑なわけがないわ。お友達を家に泊めるだけなのですもの。ぜひ泊まっていってくださいな」

「でも……」


 遠慮するレナちゃんにちょっと不安になる。

 もしかしてわたし、イヤイヤ泊まらせようとしている? いや、あの小屋にいるよりはいい生活送らせてあげられるよ? 優しくするし、なんだって買ってあげちゃう。だから遠慮しないで! ね? ね!


「──僕からもお願いするよ」


 天の助けのように響いた声に、わたしはこのときばかりは彼の存在に感謝した。

 呼んでおいてよかったー!


「アンドレアス殿下……でも、レベッカさんたちにご迷惑が……」

「レベッカは君と話をするとき、とても楽しそうだ。君をとても気に入ったんだろう。レベッカは迷惑じゃないと言っているのだし、どうかレベッカの提案を受け入れてあげてほしい」


 もちろん、強制ではないよと爽やかな笑みを浮かべてアンディは念押しをする。

 皇子様にこんなこと言われたら断れないよね。そしてそれをアンディ自身がわかってやっているのが恐ろしい。今はすごく頼もしいけれど。


「……わかりました。でも、一度家に確認をしないと……」

「ええ、もちろんよ。ご両親には我が家からきちんと説明して、許可をいただきます。だからどうか安心なさってね」


 よろしくお願いいたします、と頭を下げたレナちゃんに内心ガッツポーズをする。

 よし、第一段階クリア!


 チラリとアンディを見ると目が合い、頷き合う。

 ……あとはレナちゃんを引き止め続けるだけ。そしてその間にレナちゃんがきちんと魔法を扱えるようになるか──それに、この国の命運がかかっている。


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