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36:お茶会大作戦


「お父様、ご相談があります」


 仕事から帰ってきたお父様にそう言うと、お父様は身構えるようなポーズを取る。


「……なんだね、レベッカ? 今度はなにがほしいというつもりかね? 珍しい食材か? それとも未開の地へ遊びに行きたいなんて言い出すんじゃなかろうな? お父様は許しません」

「……違います」


 それ、ほとんどヴァーリックのわがままだからね、お父様。わたしのお願いじゃないからね。


「違ったかー」


 安心した顔をしつつ、ちょっと残念そうなお父様。なんで? なにかわたしを黙らすとっておきの文句でも考えていたとか?


「それで? 相談というのは?」

「はい、お父様。わたし、お友達がほしいんです」

「……はい?」


 お父様は目を大きく見開いたあと、天を仰いだ。


「おお……なんということだ。我が娘には友人がおらなかったとは……! 確かに変わった娘だが、根は良い子……多分……なのに……?」


 なんで疑問形になるの、お父様。わたし、とっても良い子ですよ?


「お父様……なにか誤解なさっておられるようですが、わたしに友人がいないわけではありません。ただ、学園に入る前にもっと同年代の同性のお友達を作りたいのです」

「ああ……なるほど。そういうことか。つまり、我が家で大きなお茶会をしたいと」

「その通りです。事前にアンドレアス殿下にもご相談し、やってみるといいとお言葉をいただきました」

「殿下が……」


 概ね嘘ではない。

 名前を使っていいってご本人から許可もらっていますからね。じゃんじゃん使うぞ。


「わかった。許可しよう」

「ありがとうございます、お父様」


 お父様は殿下という一言に弱い。殿下がいいって言ったっていえば許可はもらえたも同然なので、この結果はわかっていた。

 あとは同年代の貴族のご令嬢方に招待状を送る。たくさんの人に参加してもらうために、アンディにも来てもらわないとね。予定を押さえておこう。


 招待する同年代の貴族のご令嬢方の中にもちろんレナちゃんも加える。

 絶対断らないようにアンディの名前を出し、強制的に参加させる。皇子様の威光をここでも使う。


 あとはレナちゃんが気に入った、家にしばらく泊まってほしいとわたしが駄々をこね、しばらくレナちゃんをうちに引き止める。

 その間はディランにも通ってもらって、魔法の訓練や授業はうちでやればいい。

 ディランのところの修繕が終われば、そっちでやってもいいけれど、まだ時間がかかりそうとのことだった。


 よし、まずはアンディの予定を聞くことから。

 アンディの予定を聞いたうえでお茶会の日程を決める。そして招待する人のリストを作って、招待状を書いて……。

 やることはいっぱいだ。だけど、これもわたしの務め。がんばるぞ!




 アンディの予定を押えて、招待状を送った。

 今はその参加の可否の返事待ちだ。明日には揃うだろう。

 一番の問題はレナちゃんなんだよね……アンディの名前も出して断れないようにしたつもりだけど、それでも参加不可と返信が来たら次の手を打たないと。


 最終的には……やりたくないけれど、レナちゃんを誘拐するしかないかも。

 デイヴィス家はレナちゃんの存在を隠している。つまり、誘拐されても周りには相談できない。相談したら、レナちゃんという娘がいることを言わないといけないからね。


 連れ戻すには自力でなんとかするしかないわけだけど……果たして人を雇ってまでレナちゃんを連れ戻そうとするだろうか?

 これ幸いと思い、放っておく可能性が高いとわたしは踏んでいる。


 だけど、誘拐はリスクが高すぎる。

 レナちゃんの家の周りには同じくらいの家がズラリと並んでいる。そんなところを誰にも見つからずに人一人を連れ出すのは至難の業だ。それに誘拐したところを見つかって捕らえられでもしたら、わたしの身の破滅にも繋がる。


 だから誘拐は最終手段としたい。できることなら、レナちゃんはデイヴィスのままでいてほしい。その方がなにかと都合がいい。ゲームが進行するうえでは、の話だけど。


 とにかく今は、参加するという返信を期待して待つしかない。普通の貴族ならアンディの不興を買うようなことは選択しない。だからきっと大丈夫、大丈夫。


 翌日、デイヴィス家から参加という返信が届き、ホッとする。正直、今まで気になり過ぎてなににも身が入らなかった……。


 あとはお茶会の準備を進めるだけだ。

 せっかくだから、楽しんてもらえるように心を尽くして準備をしないと!


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