001
エアリエルの町に戻った俺たちはクレスの元へと向かい、起こった出来事を説明した。
俺とクラリス、アイシャにシズク、それにクレスを含めた五人での報告会となり、ジャックとバレッタは一時的にギルドで保護。
パーティはジャックの一言で解散したとのことだった。
後日、ジャックは売り払った金をピーター以外に分配し、完全にパーティは消失。
ピーターに渡さなかった理由は簡単で……今回、誘拐の手引きをしたのはジャックの仲間であるピーターだったからだ。
盗賊を招き入れてジャックを裏ギルドに渡せば、多額の報酬を貰えるはず、だったと……。だが、ジャックの誘拐が完了したあと、そのままパーティの家で襲われギルドの治療班へ……。
ピーターは信頼も信用も、パーティも、すべてを失った。
女たらしの嫌な奴だとは思っていたが、クズはどこまで行ってもクズらしい……。
「……終わった終わったー」
「ビオリスお疲れさま」
「ああ、クラリスも本当にありがとな」
「別に気にしなくていいわ」
ギルドでの報告を終えた俺とクラリスは、アイシャやシズクと別れ、エアリエルの町の中を歩いていた。
「――――おい、あれって……」
「――――ああ、淫魔だぜ……」
「――――いや、ありゃ吸血鬼じゃねぇか……?」
「――――どっちにしても、大人になったらヤりてぇなぁ……」
クラリスに向けられる視線とひそひそ話。
最後の一言を呟いた奴は蹴り飛ばしておいた。
「ふぁぁ……。やっぱりギルドって退屈な場所ね……。この町の連中もだけど……」
「フードでも被って隠さないのか?」
「別に恥じることはないもの。周りが勝手に妄想しているだけで、私が隠れる必要なんてないわ」
「そっか……」
すれ違う奴らがクラリスのことを一瞥していく。
「ふぁぁ……」
だが、本人は慣れているらしく、あまり気にしていないようだ。
「そういえば、クラリスもギルドに立ち寄ることがあるのか? 見かけたことなかったが」
「一応は冒険者だからね、ただ、周りがうるさいから、人の多い時間帯は避けてたかな……」
片目を閉じながらこちらを見つめるクラリスが、そのまま口を動かしていく。
「今はもう、冒険者としてやっていくにはギルドを介してじゃないと報酬も少ないし……。ほんと、面倒になったものね」
言い終えたクラリスが、呆れたようにため息を吐いた。
別に、ダンジョンでの素材を売れば、多少の金にはなる……。だが、ギルドのクエストは追加で報酬が貰える分、登録しない方がもったいない。
Aランク以上の冒険者には、それ相応の任務も依頼される。
ギルドへ行くのは面倒だが、貰える報酬は多いに越したことはない。
金は自由への近道……なんてな。
それに、ギルドが設立されたのには理由がある……。
「ルールを定めておかないと、裏ギルドの連中みたいなのが湧いてくる。面倒だとは思うが、誰かがまとめなければ、冒険者同士がいがみ合って殺し合う。一緒に上を目指していた仲間が、仲間だと思っていた奴に殺される。嫌な世界だぜ……まったく……」
生き残った俺には、死んでいった仲間の意思を受け継ぐ義務がある。
それに、守れなかった仲間の無念を晴らしてやらないと、俺の気が済まない……。
……とはいえ、年老いた俺では役不足で、若返った俺ではハルギに勝てない……。
「ほんと、参ったよ……」
頭をかきながら、思っていた感情が口からこぼれていた。
「自分の利益を優先したり、他者を傷つけないと生きていけないなんて、本当どうしようもないわね」
「ああ、まったくだ……」
クラリスの意見に賛同しつつ、俺はハルギとの戦闘を振り返っていた。
本気を出していないハルギに対して、腕力も剣術も勝てていない。
情けない話だが、ハルギとやり合って、すぐに頭に浮かんだのが「撤退」の二文字……。
アイシャたちが居たなんて、ただの言い訳でしかない。
今の俺は、中途半端に冒険者を生業としているただの人間だ……。
このままじゃ、元Sランクなんて……いや、元Aランクとすら名乗れない……。
どうにか、俺も鍛えないといけないな……。
「ねぇねぇ、ビオリス」
「……ん?」
クラリスの声に目を向けると、クラリスが俺の服を摘まみながら、こちらを見つめていた。




