毒と愛の誤算
頭部を貫かれた白大蛇は暴れ始め魔法の攻撃が止む。
自分を狙っていない場所から抜けるのは容易で、すぐに離脱し、少し離れたところから暴れている白大蛇を見守る。
「上手く行ったはずだ」
俺が狙ったのは“蛇の脳”だが、殺さない様にしたので、奴は今考えがミキサーの様になり神経はイかれ同時に“痛み”を感じているはずだ。
死んだ方がマシの状況。
“あえてそうした”
砂埃が晴れてくる……しかし、“白大蛇の姿”は居なくなっていた。
「……やっとその姿になったか」
「____」
そこに立っていたのは少女。
少女の髪は純白で、長くしなやかに流れていて、瞳は真紅に紅く輝き、その瞳で俺を見ていた。
「絶対に美女の姿になると思っていたさ」
そう。
“魔王”と聞いた時から美少女になると確信していた。
それが“異世界でのテンプレート”!
と、いう事は俺が失敗して死ななければコイツはヒロイン枠と言うことになる….
ふむ……確かに他の人達より可愛い部類だ、特にロリコンには刺さりそうである。
ま、だけど__
「アオイさんよりは可愛くないな」
そう言いながらレイピアに付属している魔法を発動して回収して構えると少女の姿をした白蛇も鋭い視線を送り、攻撃の構えを見せた。
「第二戦開始だな」
地下の暗闇の中、少女は手を掲げると手のひらから魔力の光が放たれる。
「うお!」
その攻撃を紙一重でかわし、反撃の構えを取った。
「早いな」
俺が慣れていないのか分からないが、この身体の化け物じみた反射神経を使ってもギリギリ避けれる攻撃。
魔王というのは伊達じゃ無いって事か__
次に少女は鋭い風を纏った爪のような魔法を繰り出した。
「くっ!見えずらい!」
暗い中で風の音と肌で感じる感覚だけで避けていくがそれだけで集中力と体力を持っていかれる。
「このままではマズイな……」
焦りを感じながらも冷静に戦況を見極める。
少女の動きと攻撃のパターンを観察し、反撃のチャンスを伺う。
攻撃をしてくる時、生物の動きには一定のリズムがある……そのリズムを掴めば反撃のチャンスが掴めるはず!
ここだ!
素早く動き、彼女の背後に回り込むと、全力で剣を振り下ろした。
しかし、少女は驚くべき反射神経でその攻撃をかわし、近距離で再び風の刃を放ってきた!
「まじかよ」
身を翻し、その場から距離を取ったが綺麗には避けきれず腕に鈍い痛みが走った。
「流石に無傷とはいかないか……」
すぐに治療魔皮紙を当てて魔力を通し貼り付けるが、違和感。
「……っ」
ぐにゃりと揺れた視界。
身体が一気に重くなり、立てなくなる。
「嘘だろ……毒」
蛇の姿だったから毒攻撃が来るのは分かっていた。
だが、まさか魔法の攻撃全てに毒属性がついてるとは誤算!
風魔法(毒付き)って事か……チート級じゃねぇか。
毒が徐々に広がるのを感じる。
「ちっ!」
『__』
勝ったと思ったのか少女はゆっくりとこちらに歩いてくる……まるで処刑人の様に……
「……」
『__』
そして目の前に来た時__
『__!!!』
俺はレイピアを少女の胸に突き刺した。
「悪いが、賭けは俺の勝ちだ」
『く、ぁ……』
「毒を使うのはお前だけじゃない、眼には目をって奴だ」
急所は外して刺しているレイピアには毒が塗られていた。
「お前の毒をベースに改良させてもらった」
最初に白大蛇を見た時に誰もが思うだろう「毒を使う」と言うイメージ。
なら、警戒するのは当たり前……図書館での知識だがこの世界の毒を使う魔物に関しては頭に叩き込んでる。
どれも当てはまりはしなかったが、白大蛇の時に吐いてくれた毒のおかげで分析、解析、そしてそれを応用した解毒剤は出来ていた。
後は逆に“コイツに効く毒”を作り、体内に入れるだけ……勝利は確定していたのだ。
『か、ぁ……』
レイピアを抜き距離を取る。
少女は苦しそうに傷口をおさえて最後には地面に倒れ込む。
「……………………」
『…………」
さて、効く毒……と言っても付け焼き刃で作ったものだから正直、どんなふうに効くか分からない。
殺してしまう、かもしれない。
そしたらテンプレを外れてしまう……そうなると俺はアオイさんと……
「……」
冷や汗が出る。
頼む!生きててくれ!
「……」
少女はムクリと起き上がる。
よし!生きてた!
「………………好き」
…………は?
「……………好きに……なっちゃったみたいっ」
「まじかよ……」
どうやら、俺の作った“毒”は__
「気持ちは解るがな……」
惚れ薬。




