恋に落ちたその日。
____っ!?!?!?
その日、俺は――
「……綺麗だ……」
一緒に召喚された、ひとりの女性に恋をした。
――意味が、わからない。
いや、冷静になれ。状況だけを見れば理解はできる。
足元に描かれた魔法陣、頭上から降り注ぐ淡い光。
周囲には、甲冑に身を包んだ時代錯誤な騎士たちがずらりと並び、
玉座の上には――白銀の王冠を戴いた男が、悠然と座っている。
そう、これは――
“異世界転生”
死んだ後にありうる可能性のひとつ。
ラノベで散々読んだ設定。十分に想定範囲内のはず、なのに。
そんな事!マジでどうでも良い!!
なんだこの気持ち!
心臓が――高鳴っている。
目の前にいる、見知らぬ金髪美女!
その姿を見た瞬間、頭の中が真っ白になった。
輝く金髪、白磁のような肌。
くびれたウエスト、柔らかそうな胸元と丸みを帯びた腰。
ふと視線を動かすたびに、指先や爪、唇までもが俺の意識を奪っていく。
――呼吸が、できない。
というか、息をしていたことすら忘れていた。
{だ、ダメだ……っ! 思考が、保てない……!}
パニックだ。
理性が吹き飛んでいく。これは――明らかに、普通じゃない。
その瞬間、視線が交錯した。
「っ――!!?」
透き通るような青い瞳。
ただ見つめられただけなのに、なぜだろう――幸福感で胸がいっぱいになっていく。
わかる。これが答えだ。
原因も、感情の正体も。
{……これが……一目惚れ……!}
苦しい。嬉しい。こんなの、初めてだ。
けれど――
{どういう格好なんだ!?}
彼女が身にまとっていたのは、男物のTシャツに、男物のトランクスという格好だった。
むしろ着てるだけマシ、というか……え、待って、本当に色々見えかけてる……!?
{お、俺の脳が沸騰する……!! 見るな! 見るな俺!!}
刺激が強すぎる。
「ふぅ……」
深呼吸だ。落ち着け、俺。
ここで鼻血でも出したら色々終わる。
「ゴ、ゴホン……!」
場の空気を払うように、王様が咳払いをして口を開いた。
「ようこそ、勇者たちよ」
テンプレート。だがありがたい。話が進む。
「ここはグリード王国。私はあなたたちを召喚した者、国王・カバルトである」
名前もテンプレ。設定もテンプレ。
異世界転生については、友達から暇つぶしで借りたラノベで多少の予備知識はある。
「本題に入る前に、あなたたちは混乱していることでしょう。しばし心を落ち着けるための部屋を用意しております。ご案内しますので、しばらく休憩をお取りください」
騎士の一人が前に出て、俺たちに近づく。
そして――彼女には女性騎士が近付き一枚の毛布が差し出された。
「きゃぁぁぁぁあああ!?!?」
自分の格好に今さら気づいたらしい。
その叫び声は、美しくも可愛らしく、俺の耳を癒していく。
(ああ……これが、彼女の声か……)
心に刻もう。
たぶん、一生忘れない。




