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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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アーシュ10歳11の月

今日3話目です。

「「おかえりなさい」」

「「ただいま!」」


2ヶ月ぶりに見る2人は、少し大きくなっているような、そんな気もした。


久しぶりの一緒の夕ご飯の後、修行の話を聞く。


「メリルはつまり、端っこだから、そこまで人の出入りは多くないだろ、でもメルシェは、北にメリル、西にナッシュ、南にシースとあって、人の出入りがすごく多かったんだ。冒険者の面子もすぐに変わる。最初の2週間は、正直慣れるのに必死で、修行どころじゃなかったんだ」

「セロの言う通り。もちろん、訓練所では頼めば気軽に相手はしてくれた。ダンジョン自体も、メリルとそうは変わらない。だからこそ、メリルとは違うもの探そうとして必死だったというかさ」

「宿は初心者用の安い宿に泊まったんだけど、うん、なんで子羊館が人気があるのかよく分かった。二人部屋で、ベッドではあるんだけど、居心地が良くないというか。ご飯も今ひとつだし、お風呂はなくてお湯で体をふくだけだしね。それだけでもいい経験になったよ」

そういえば、王都では領主様の屋敷か、ダンの屋敷か、寮だった。宿屋に泊まったことなかったなあ。

「案外と若い冒険者も多くて。今まで2人、じゃなかったらニコとブランと組んでただけだったろ?野良でパーティを組むようにもなって、それが1番勉強になったかもしれない」

みんな強いの?

「それが強くないんだ。訓練して冒険者になったヤツはそこまで多くないみたいだ。だからこそ、合わせるのがすごく難しいんだ」

「セロはそれでもよく合わせていたけどな、オレは結構きつかった。なんで修行に来ているのに、強いヤツと組めないんだって思ってさ」

「たしかにな。けど、E級なりたての剣士なんて腐るほどいるから、上の級の人たちはわざわざ組んでくれないしね」

じゃあ、メリルで知り合いの冒険者に頼めばいいのに。

「それも経験だよな。けど、思う通りにならないのも面白いって言うか」

「そうか、オレは2人でガンガン行くのも好きだな」

「で、結局シースには行けなかったんだ」

そうかー。次は?


「次は1の月の終わり頃。ギルド長が会議から戻ってくる頃に、ナッシュに行ってみたい」

「スライムダンジョンなんだ。剣士にとっては最悪の組み合わせだけど、すっごい訓練になるんだって」

「いざとなったら、オレが魔法で何とかするしな」


そうか、またちょっとさみしいな。


「さみしがる暇なんかなかったって聞いたぞ?メルシェでも、メリルで荷物持ちがイイらしいってうわさは届いてて、すぐにアーシュたちだってわかったよ」

「なんでメリルばっかりそうなんだって、悔しさ半分てとこだったな」

何と!


「でもな、アーシュ、マル」

「そう、オレ達、来年にはがんばってD級になるからさ」

「そしたら、一緒に修行に出ないか?」

一緒に?

「荷物持ちの報酬じゃ、泊まったりするの赤字だけどさ、パーティで考えたら、今収入には困ってないだろ?宿屋をやっているものとして、泊まるのもいい経験だと思ったんだ」

「D級になったら、荷物持ちも連れていけるんだ。時々でいいから、ついてきてくれたら、オレたちの戦い方もわかるし」

「「行く!」」


11歳まではまだ遠い。来年まで、できることをがんばろう。

とりあえず、スープだ!

「「剣じゃないんだ」」

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