アーシュ12歳3の月セーム話をきいて
「先ほどから戦いを見ていた。まず1人ずつ私たちのパーティに入れ」
ウィルからだ。3人の剣は重い。ウィルをうまくサポートしていく。そしてマル、セロと続く。
「次はお前だ」
「はい!」
私は魔法師だ。剣士との戦いでは補助にまわる。
「魔法師だったか。道理で剣は劣る」
意外そうにそう言われ、補助を受け入れてくれた。でも、剣は劣るって……そうだけど、ちょっと悔しい。ふん、私の補助を味わうがいい。オルド仕込みだぞ!
「ふん、このような魔法師の戦い方は初めて見た、これはなかなか」
参ったか!とはいえ、そこから5階ほど下りたら、そこからは急いで戻ってきた。3人の剣士組は、オルドとはまた違う剣のやり方に興奮してキラキラしていた。
私たちがダンジョンから戻ってくると、ギルドは静まり返った。
「レイさんたちだ。なんだ、知らない若いヤツを連れてるぞ」
「野良パーティは組まないんじゃなかったか」
ざわめきが戻った。受付に行こうとすると、若いパーティが寄ってきた。
「レイさん、今日は誰も連れていかないって言ってたじゃないですか!」
レイさんと呼ばれた人はわずらわしげに答えた。
「特には連れてっていないが」
「じゃあ、コイツらは!」
レイさんはめんどうくさげにため息をつくと、無視して受付に行こうとした。
「なんだよお前ら、見かけないヤツらだな」
おっととばっちりだ。こういう人は何を言ってもからんでくる。レイさんとやら、ちゃんと相手をしてくださいよ……セロたちを見たら、無視しているので、私もそのまま行こうとしたら、
「待てよ!」
腕を急につかまれ、はずみで転びそうになった。振り向くと目が合った。ザッシュくらいの若者だ。
「う、あの」
「手を離してください」
「あ、ごめん」
あわてて手を離された。
「あんた、なに遠慮してるのよ」
「アン」
「ちょっとあんた」
今度は女の子だ。ソフィーと同じくらいだろうか。目が合うと一瞬ひるんで、それでも目をきつくして言った。
「何でレイさんと一緒なのよ!」
はあ。これは答えないといけないのだろうか。口を開こうとしたら、セロがすっと前に入ってきて、その子を見下ろした。
「聞きたかったらレイさんとやらに聞け。お前たちとその人の間の問題だろう。オレたちを巻き込むな」
「なっ!」
「アーシュ、行くぞ。たぶんダンが心配してる」
「うん」
受付はもう終わっていた。
「しばらくいるのか」
「おそらく2ヶ月ほどは」
セロが答えると、
「お前たちはおもしろい。しばらく一緒に潜らないか」
と聞かれた。セロは、
「勉強にはなるけど、こんなふうにトラブルに巻き込まれるのはごめんです」
と返した。
「ふん、もう遅い。私たちと一緒でなくてもそうでなくても、目を付けられたようだからな」
「は?自分たちのファンくらい、何とかしてください」
「知らん。勝手にまとわりついてトラブルを起こす」
「じゃあ、すみませんが明日からは別々で」
「では、ギルドで待っている」
「なっ」
3人は去って行った。
「ジュスト並みの無神経さだな」
「セロ、どうするの」
「どうするも何も」
「アイツら、付き合わなかったらつきまとうぜ、きっと」
「アーシュに手出しをしないのならいい」
ウィルとマルが言った。
「けど既に手出しされてるしな」
「今度は我慢しないようにするよ、セロ」
「できるか?」
「怒るの苦手なんだけどな……」
「なるべくかわせ。1人にしないようにしてやる。にしても、何で変な大人ばかり引っかかるのか……」
「今回は私のせいじゃないよ」
私がつぶやくと、マルとウィルが微妙な顔をして言った。
「ごめん、何かあやしい人だとは思ったんだけど……」
「え、マルの勘信じてたのに!」
「でも強そうだったから」
ダメだ、強くなることについては盲目だった……。
「とにかく、帰ろうか」
「帰ろう」
さすがに疲れたので、待っていたダンと外で夕ご飯を食べた。
次の日、朝の訓練は、なまった体を立て直すよう、基礎を中心に行った。それを終えてダンジョンに行こうとすると、はい。いました。いかにも剣士な3人組が。メリルのギルド長と同じ年頃だろうか。壮年って言ったらギルド長怒るな。まだ若いって、そういえば……え、アーシュ、戻ってこいって?だって3人の横に、
「今日は私たちも行くからね!」
昨日のあの2人プラス2人がいるんだもん。どうやら4人パーティらしい。
「あ、どうぞ。それじゃ」
「え?」
とセロはさっさと先に行こうとした。よし、今のうち。
「待て」
ぎく。
「今日は共にと約束したはずだが」
してないよ!一方的に言われただけだよ。セロが答えてくれる。
「ダンジョンはパーティの人数が多くても機動力が落ちる。どうぞそちらを優先してください」
「いやだ」
「……」
沈黙が落ちた。いやだって言った。壮年の、冒険者が。そして若いパーティに言った。
「お前たち、帰れ」
「レイさん!」
「あー!」
セロが大声を出した。え、めずらしい。
「あんたたちと行くのはいい。けど、それでやっかまれて、うちの女の子たちに迷惑がかかるのがいやだって言ってるんだ。わかれよ!」
「私たちは何もしてない」
「何もしてないからダメなの!この、あんたになつきまくってる若いパーティを、何とかしてください!」
「お前たち、か」
「帰れとか言うな!」
「しかし」
「いいか、あんたが帰れと言うと、オレたちがいるせいだと逆恨みする、そしてオレたちにからんでくる、ここまではわかるな?」
「わかる」
わかるって。壮年の、冒険者が。
「あんたが、この若いパーティを納得させたら、オレたちは一緒に行く」
「そうか」
3人は若者パーティを振り返った。
「お前たちは、何がしたいんだ?」
「オレたちは、レイさんたちについて行きたい」
「なぜ?」
「あこがれだから、強くなりたいから」
「意味がない」
「何でですか」
「力の差があり過ぎて、勉強にならない」
「オレたちB級です。そいつらは!」
「CとE」
「弱いだろ!」
「お前たちより強い」
「そんなわけあるか!そんな、かわいい女の子だぞ!」
かわいいって言った!
「なら勝負してみろ」
「おい!」
セロがどなった。
「迷惑かけんなって言ったよな!」
「勝負だ!」
「あー、もう!」
頭をかきむしっている。
「セーム、なんなの?どうして誰も話を聞かないんだ!」
「どういう形にする?」
「そっちは剣士4人?」
「ウィル、マル?お前らも話を聞けよ!」
なし崩しに勝負が決まった。ギルドの依頼で来てたはずなのにな。




