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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
巣立つ子羊編

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152/307

アーシュ12歳3の月セーム話をきいて

「先ほどから戦いを見ていた。まず1人ずつ私たちのパーティに入れ」


ウィルからだ。3人の剣は重い。ウィルをうまくサポートしていく。そしてマル、セロと続く。


「次はお前だ」

「はい!」


私は魔法師だ。剣士との戦いでは補助にまわる。


「魔法師だったか。道理で剣は劣る」


意外そうにそう言われ、補助を受け入れてくれた。でも、剣は劣るって……そうだけど、ちょっと悔しい。ふん、私の補助を味わうがいい。オルド仕込みだぞ!


「ふん、このような魔法師の戦い方は初めて見た、これはなかなか」


参ったか!とはいえ、そこから5階ほど下りたら、そこからは急いで戻ってきた。3人の剣士組は、オルドとはまた違う剣のやり方に興奮してキラキラしていた。


私たちがダンジョンから戻ってくると、ギルドは静まり返った。


「レイさんたちだ。なんだ、知らない若いヤツを連れてるぞ」

「野良パーティは組まないんじゃなかったか」


ざわめきが戻った。受付に行こうとすると、若いパーティが寄ってきた。


「レイさん、今日は誰も連れていかないって言ってたじゃないですか!」


レイさんと呼ばれた人はわずらわしげに答えた。


「特には連れてっていないが」

「じゃあ、コイツらは!」


レイさんはめんどうくさげにため息をつくと、無視して受付に行こうとした。


「なんだよお前ら、見かけないヤツらだな」


おっととばっちりだ。こういう人は何を言ってもからんでくる。レイさんとやら、ちゃんと相手をしてくださいよ……セロたちを見たら、無視しているので、私もそのまま行こうとしたら、


「待てよ!」


腕を急につかまれ、はずみで転びそうになった。振り向くと目が合った。ザッシュくらいの若者だ。


「う、あの」

「手を離してください」

「あ、ごめん」


あわてて手を離された。


「あんた、なに遠慮してるのよ」

「アン」

「ちょっとあんた」


今度は女の子だ。ソフィーと同じくらいだろうか。目が合うと一瞬ひるんで、それでも目をきつくして言った。


「何でレイさんと一緒なのよ!」


はあ。これは答えないといけないのだろうか。口を開こうとしたら、セロがすっと前に入ってきて、その子を見下ろした。


「聞きたかったらレイさんとやらに聞け。お前たちとその人の間の問題だろう。オレたちを巻き込むな」

「なっ!」

「アーシュ、行くぞ。たぶんダンが心配してる」

「うん」


受付はもう終わっていた。


「しばらくいるのか」

「おそらく2ヶ月ほどは」


セロが答えると、


「お前たちはおもしろい。しばらく一緒に潜らないか」


と聞かれた。セロは、


「勉強にはなるけど、こんなふうにトラブルに巻き込まれるのはごめんです」


と返した。


「ふん、もう遅い。私たちと一緒でなくてもそうでなくても、目を付けられたようだからな」

「は?自分たちのファンくらい、何とかしてください」

「知らん。勝手にまとわりついてトラブルを起こす」


「じゃあ、すみませんが明日からは別々で」

「では、ギルドで待っている」

「なっ」


3人は去って行った。


「ジュスト並みの無神経さだな」

「セロ、どうするの」

「どうするも何も」


「アイツら、付き合わなかったらつきまとうぜ、きっと」

「アーシュに手出しをしないのならいい」


ウィルとマルが言った。


「けど既に手出しされてるしな」


「今度は我慢しないようにするよ、セロ」

「できるか?」

「怒るの苦手なんだけどな……」

「なるべくかわせ。1人にしないようにしてやる。にしても、何で変な大人ばかり引っかかるのか……」

「今回は私のせいじゃないよ」


私がつぶやくと、マルとウィルが微妙な顔をして言った。


「ごめん、何かあやしい人だとは思ったんだけど……」

「え、マルの勘信じてたのに!」

「でも強そうだったから」


ダメだ、強くなることについては盲目だった……。


「とにかく、帰ろうか」

「帰ろう」


さすがに疲れたので、待っていたダンと外で夕ご飯を食べた。


次の日、朝の訓練は、なまった体を立て直すよう、基礎を中心に行った。それを終えてダンジョンに行こうとすると、はい。いました。いかにも剣士な3人組が。メリルのギルド長と同じ年頃だろうか。壮年って言ったらギルド長怒るな。まだ若いって、そういえば……え、アーシュ、戻ってこいって?だって3人の横に、


「今日は私たちも行くからね!」


昨日のあの2人プラス2人がいるんだもん。どうやら4人パーティらしい。


「あ、どうぞ。それじゃ」

「え?」


とセロはさっさと先に行こうとした。よし、今のうち。


「待て」


ぎく。


「今日は共にと約束したはずだが」


してないよ!一方的に言われただけだよ。セロが答えてくれる。


「ダンジョンはパーティの人数が多くても機動力が落ちる。どうぞそちらを優先してください」

「いやだ」

「……」


沈黙が落ちた。いやだって言った。壮年の、冒険者が。そして若いパーティに言った。


「お前たち、帰れ」

「レイさん!」


「あー!」


セロが大声を出した。え、めずらしい。


「あんたたちと行くのはいい。けど、それでやっかまれて、うちの女の子たちに迷惑がかかるのがいやだって言ってるんだ。わかれよ!」

「私たちは何もしてない」

「何もしてないからダメなの!この、あんたになつきまくってる若いパーティを、何とかしてください!」


「お前たち、か」

「帰れとか言うな!」

「しかし」

「いいか、あんたが帰れと言うと、オレたちがいるせいだと逆恨みする、そしてオレたちにからんでくる、ここまではわかるな?」

「わかる」


わかるって。壮年の、冒険者が。


「あんたが、この若いパーティを納得させたら、オレたちは一緒に行く」

「そうか」


3人は若者パーティを振り返った。


「お前たちは、何がしたいんだ?」

「オレたちは、レイさんたちについて行きたい」

「なぜ?」

「あこがれだから、強くなりたいから」

「意味がない」

「何でですか」

「力の差があり過ぎて、勉強にならない」

「オレたちB級です。そいつらは!」

「CとE」

「弱いだろ!」

「お前たちより強い」

「そんなわけあるか!そんな、かわいい女の子だぞ!」


かわいいって言った!


「なら勝負してみろ」

「おい!」


セロがどなった。


「迷惑かけんなって言ったよな!」

「勝負だ!」

「あー、もう!」


頭をかきむしっている。


「セーム、なんなの?どうして誰も話を聞かないんだ!」


「どういう形にする?」

「そっちは剣士4人?」


「ウィル、マル?お前らも話を聞けよ!」


なし崩しに勝負が決まった。ギルドの依頼で来てたはずなのにな。

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