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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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126/307

アーシュ12歳5の月ナッシュその時マルは

今日は1話です。

一方、マルは上階へ走った。途中で涌いているスライムは多くない。最低限のスライムを倒しながら、進もうと思う。しかし、魔法師のいない、たった一人きりのダンジョンがこれほどつらいものなのか。そもそも10階は、魔法師なしのF級の来るところではないのだ。


いつものように、突っ走ってはいけない、それでも早く、早く!

9階、8階、7階、既に冒険者は帰る頃合だ。誰とも会わない。いつものようには進めない。時間だけが過ぎる。6階、5階、4階、いた!


「お願い!15階で涌きが!」

「なんだ!涌きだと!」

「剣士2人で倒れてる。剣士1人守って、それをアーシュが助けに!」

「アーシュって……」

「魔法師だけど、F級なの!」

「黒髪の!しかしオレたちも剣士じゃ役に立たねえ」

「お願い!私はギルドに戻る」

「待て、これからならお前を護衛してギルドに戻った方が早い、そこで対策をたてよう」

「はい!」


そこからは2人の剣士と合流し、あっという間にギルドについた。しかし、既に時間は9時を過ぎている。


「15階で涌きだ!剣士と魔法師が取り残されている!」

「何だって、ギルド長を呼べ!」


既に家に帰っていたギルド長が呼び戻された。


「15階の涌きはよくあることだが」

「ギルド長!」

「マル?まさか」

「アーシュが!10階から戻ろうとしてた時、助けを求められて!」

「バカな、行ったのか!」

「剣士2人が倒れてて、剣士1人で守ってるって。そう言って剣士が倒れて」

「そいつは!」

「10階の安全地帯にいる」

「それならよし、アーシュは1人で行ったのか」

「そう、私はギルドに行って助けを呼んでこいって、早く、早くアーシュを!」

「落ち着け、マル、アーシュならそうそう倒れたりしない」

「でも、でも」

「これから宿に戻っている魔法師を集めて、遠征隊を組む、少し時間がかかる。それまで少しでも休め。セロとウィルは」

「ダンジョンに泊りがけで、明日帰ってくる」

「タイミングの悪いことだ」


「よし、手分けして宿に連絡しろ!倒れてるやつがいる。魔法師も剣士も、人数を集めろ!」


しかし、その時点で10時を過ぎていたので、なかなか人が集まらない。マルはとりあえず体を休めていた。


「ちっ、これなら朝の方がいいか」

「!」

「マル、聞き分けろ、明日5時集合で最速でアタックをかける。私も行く」

「でも!」

「体を休めろ!それがお前に出来ることだ」

「……アーシュ」


一方その頃私は、睡魔に襲われていた。


「お前、少しだけでも寝ろ」

「でも」

「お前が来るまでなんとか1人でやってた。スープのおかげでだいぶ回復したから、交代だ」

「ありがと、じゃ少し」


こうして、剣士と交代で寝た。魔力は少しずつ減っている。この時間で来ないなら、助けは朝か。最短で2時間、3時間か。次第に剣士も体力が尽きてくる。私の時間が増えてきた。あと少し、あと少し。ふと意識が睡魔に飲み込まれる。


「起きろ、お前!やばい」

「はっ、まずい!」


いつの間にか2人で寝ていた。その間に、スライムが増えている。できるか、魔力は足りているか、よし!


「アーシュ!なんでここにいる!」

「セロ!」

「なんだこの魔石の数は。この部屋、『 涌き』か、とりあえず片づけるぞ」


魔法師の炎が舞い、増えていたスライムが片づいた。セロたちが帰ってくる日だった!助かった!


「アーシュ、どうした、マルは?」

「マルはギルドに助けを求めに」

「大丈夫か、何があった」


「すまん、俺のパーティがここで『 涌き』にまかれて」

「剣士4人か、うでだめしだな、愚かな」


「2人倒れた。1人が助けを呼びに行き、10階でこの子に」

「アーシュ、10階から1人で来たのか、無茶をする」

「見捨てられなかったの、セロ」

「そうだな、アーシュなら」


「アーシュとやら、ずいぶん消耗しているようだが、いつからいた」

「昨日の夕方から」

「昨日の!それでこの魔石の数、1人でか」

「ううん、剣士さんも交代で」

「ほとんどこの子だ」


「ふむ、私たちが来たからもう大丈夫だ。なぜスライム部屋を片づけなかった」

「初めてだったし、魔力が切れた時の方が怖かった。助けが来るまで、ねばった方がいいと思って」

「よい判断だ。さすがセロ君とウィル君のパーティだ。なかなかできることではない。では仕上げをしようではないか」

「仕上げ?」

「スライムのボスを倒す」

「私が?」

「そう、魔力は足りるかな」

「切れても、みんながいるなら大丈夫」

「では行こうか」

「はい」

「「アーシュ」」


振り向くと、セロとウィルがいた。


「「やってこい!」」

「うん!」


「さあ、スライムを一掃しろ」

「炎の壁よ!渦巻け!」

「見事だ!さあ、あれがボスだ」


そこには緑色の大きなスライムがいた。ポコ、ポコと、スライムを生み出している。


「核を傷付けないように、なるべく多くの体表を切り裂く、できるか」

「はい、風の刃、10、小、切り裂け!」


ヒュンヒュンと風が走り、体表を裂く。スライムは体液を流し、あっけなく崩れていく。


「これで涌きは収まるだろう。よくやった」

「はい」


「アーシュ!」


セロに抱きしめられた。


「よくがんばった」

「うん」


「さて、私たち4人足しても、この剣士たちを運ぶのは難しい。このまま休んで救助を待とう」


私はセロにもたれかかり、眠りについた。

「おやすみ、アーシュ」

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― 新着の感想 ―
セロってアーシュをずっと一緒がいいなんて冒険者の道にひっぱりこんだのに、肝心な時にいつも一緒にいないしなんの役にも立たないのどうなんだろ? セロの性格っていうよりは、アーシュのがんばってる感を出すため…
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