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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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111/307

アーシュ11歳9の月メリル

短めです。

「また1年後になるのか。さみしくなるな」

「リカルドさん、すぐですよ」

「アーシュちゃん、石けんの売上も好調だからね、少しゆっくりして、変な大人を引っ掛けないようにね」

「おじさん、ゆっくりしたいっていつも思ってるんですよ」

「なぜか忙しくなっちゃうんだよな」

「セロ君、みんなのためにも、アーシュちゃんには気をつけてあげてね」

「はい!ダンにもよろしく」

「もちろんだよ」


まだ秋とはいえない草原は、それでも夏の緑とはもう言えず、しおしおとうなだれ始め、夜には虫の声がした。すべてが解決したとは言えないが、当分近寄らなければもめごともないだろう。クランでの滞在でちゃっかりと実力を上げていた面々は、来年の3の月までをどう過ごすかで胸を弾ませていた。


ニコとウィルとブランは、

「ほんとはそろそろオルドに戻ってみたかったんだが、あいつがいるんじゃな」

「オーガダンジョンか。強いのか?」

「オルドは剣士だらけだぞ。それも屈強な」

「最初から最後まで人型の魔物だ。知能も高いし、相当心が削られるらしい。剣士としてこれほど力を発揮できるところはない。魔法師にはつらいところだな」

「あいつならなんてことないだろ」

「残念ながらな」


セロは、

「冬になる前に、シースに行ってみたい」

「シース。なんで?」

「海が見たいんだ」

「海!行きたい」

「マルも。魚が食べたい」

「魚!あれ、マル、肉派じゃない?」

「肉は別格。魚も好き」

「行くか?」

「「行こう」」

となった。


マリアとソフィーは

「私はね、来年までの学院の宿題に、教育学を取ったの。メリルも工場ができて、人も増えてきたでしょ。学校に行けない子もちらほら出てきてるわ。私たちの頃はダンが見てくれたけど、今は誰もいない。子どもたちを見てあげたいの」

「私は宿やの手伝いをがんばるつもり」

という。


メリルに戻ると、


「よう、グレアムから手紙が届いてたわ。せっかく中央ギルドから遠ざけてたのによ」

「ジュストなんとかしてくださいよ」

「手に負えねえ、うっとおしい後輩なんだよ。魔法師としてはめちゃくちゃ優秀なんだがな」

「肝心のアーシュがピンと来てなくて、危機感薄いったらないんだ」

「遠ざけとけ。それしかねえ」


「ところで、アーシュ、ウィル、セロ、マル」

「ギルド長、なんですか、珍しい呼び方で」

「あー、まあな、ちょっと頼みたいことがあってな」

「いつもみたいに頼めばいいのに」

「そろそろ、後輩の指導をしてほしいんだよ。特に魔法師」

「ギルド長は?」

「ホントはオレは忙しいんだよ。最近生活魔法もろくにできねえ奴らが来ててな……」

「珍しいですね」

「魔力が多すぎんだろ、調整が難しいらしい」

「それなら私が役に立つかも」

「アーシュがか?」

「私も最初苦労したから」

「そうなのか?オレはなかったな」

「ウィルは何でもそうだねえ」

「なんか何でもできるんだよ、オレは」

「ヒューヒュー」

「そして何でも頼まれちゃう、と」

「すまん、頼むわ」


日常が戻ってきた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アーシュは子供を育てた大人の記憶を持った転生者なのに、何でそんなに悪意に疎いのでしょ?
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