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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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109/307

アーシュ11歳8の月王都の翼始末記

アーシュが倒れて寝てしまってから、クランが謝りに来るまでの顛末です。

次の朝、目覚めると学院の寮だった。


「あれ、なんで?あ、ラスカ、あ、リボンは!」

「ラスカはやっつけた。リボンはここに」

「マル、おはよ、あとありがと。なんかザラザラする」

「昨日お風呂入らないで寝ちゃったから。ご飯もらってあるから、食べたらお風呂借りに行こう」

「わあ、お腹すいてたんだ」

「そしたらテスト勉強する」

「あ!明日からか。そしたらまたクランかー、疲れるなー」

「もう行かなくてよくなった」

「え、いいの?」

「もともとジュストのわがまま。お腹すいてまで行く義理はない」

「そうか、なんかジュストの言うことって、聞かなきゃいけない気がするんだよね。みんなはいいの?」

「クランの若い子、弱かった。相手にならない」

「じゃあ、いいか。勉強しに来たんだしね」


お腹いっぱい食べて、さっぱりしてから、みんなで集まった。ニコとブランは西ギルドに行っている。


「アーシュ、どう?」

「ん、セロ、よく寝たから大丈夫。リボンありがと」

「まだあるからな、でも無茶するなよ」

「無茶させられたんだよ、でも女子怖いねー」

「キーキーしてたな」

「そうか?アーシュのことうらやましかっただけだろ?直接手が出てくるうちはマシだろ」

「うん、ウィル、そうかも。ジュストがちゃんと目をかけてあげれば不満も起きないのにね」

「若いグループはほっておかれてたもんな。オレ、カッシュから結構不満聞いたぜ。なかなかダンジョンに挑戦させてもらえないって」

「自分で決められないの?」

「いつアタック要員に選ばれるかわからないからってさ」

「なるほど、クランなんていいことないような気がするな」

「そうだな、さ、勉強するか」

「「「はーい」」」


ニコとブランは、今日はダンジョンに行ってはいなかった。


「というわけで、学院に戻させました」

「そうか、ニコ君、ブラン君、ありがとう。大変だったな」

「オレたちはそれなりに勉強になった。中央のダンジョンは初めてだったし。クランにも別に言うところはない。無関係ならば。またアーシュを巻き込むようであれば、今度は別です」


「グレッグとも相談して、中央は避けさせてたんだが」

「ナッシュで1度目をつけられたのが失敗でした」

「多少強引とはいえ、同意がなかった訳ではないし、クランの下っ端の独走とも取れるから、責任が問えるわけでもない。とにかく、東とも情報は共有しておく。あとは受付に話を流せば……」

「では、オレたちはグリッター商会に行ってきます」

「うむ。子羊の力の一端を知るのもクランにはいい薬になるだろう、よろしく伝えてくれ」


「ふうん、そんなことになってたとはねえ」

「すみません、ダンのところに行きたがっていたのに」

「アーシュちゃんは、よく変な大人をひっかけてくるよねえ。それだけ魅力があるんだろうけど」

「大人はアーシュに無理をさせる」

「おやおや。でも、アーシュちゃんをバカにする事は、グリッター商会をバカにすること。少し痛い目を見せましょうかね、いや、長期的には、内部にがっちり入り込むことが得策か……」

「どんな形であれ、謝罪に来るまでは王都に滞在したいです」

「それまでぜひうちに泊まってくれ」

「ありがとうございます」


「セロ、子羊関係には話を通してきた。グリッター商会は動くが、ギルドは動かない」

「要は冒険者同士のもめごとだからな、期待はしていない。ありがとう、ニコ、ブラン」

「あとはオレたちにできることは」

「ウィル、若いやつの切り崩しだな」

「『 涌き』が終わったら少し連れ出すか、基本的には自由行動だろ?メリルに来てたやつらもいたし」

「快適で強くなるダンジョン暮らしの体験か?」

「有効だろ」

「謝罪に来るかな」

「あそこの問題は、ジュストじゃない。団長だ。今回のこともよくわかってないぞ。『 涌き』の邪魔されたくらいにしか思ってないし、何より団員もどうでもいいと思ってる」

「それはジュストもだな」

「2人に引かれて集まってきて、大きくなりすぎた張りぼてか」

「ほっといてもいずれダメになる」

「それまで、上層部とはかかわらないようにする」

「わかった」



王都の翼では、


「石けんが届かない?どうなってるんだ」

「レーションもだ。買い出しに行ってきてるのか?売り切れ?西も東もか、そんなバカな…」


となっていた。


「ジュスト、どうした」

「小羊亭が、予約できないんだよね、僕の癒しなのにさ」

「それで不機嫌か。しかし最近、細かいことがうまく回らないな。涌きが終ったからいいようなものの、けが人も増えてるし……」

「アーシュ君がいてくれればなあ」

「黒髪の子か、ラスカを倒した、メリルの子羊とかなんとか。なんか小さいのがすごく怒ってたな」

「謝りに行ったの?」

「は?お前の不始末だろ。子羊亭にも何かやったんじゃないのか」

「まさか。あ」

「心当たりか」

「あー、子羊亭のオーナー、アーシュの友だちだった。確かギルドのお茶も手がけてた、グリッター商会の子……」

「あれもメリルの子羊か!レーションは!」

「それもメリルの子羊だ……」


「お前、しばらくオルド行ってろ」

「何でだよ」

「お前のせいでトラブルになったんだぞ、反省の姿勢だ」

「ちぇ、オルドは飯がまずいんだよ」

「自業自得だ」

「王都も飽きたしー行ってくるか」


「しばらく子羊には近づくなよ」

「でもね、来年アーシュ君、冒険者になるんだよ。一緒にダンジョン行きたいな」

「近づくなよ。仕方ない、謝りに行くか」

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[気になる点] "ジュストの言うことって、聞かなきゃいけない気がする"っていうのと、ここまで醜い仕打ちを受けたクランに対して、ヘラヘラしている主人公の精神構造は、おかしいというか、今までの描き方とは違…
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