02 停滞の誘い(1)
…………最初に感じたのは身体の怠さ。
疲れからくるものではなくて、ずっと身体を動かさずにいたような……そんな重さ。次に感じたのは身体を優しく包んでくれているベッドとシーツの感触、次に誰かが動いている音。
(…………私、どうして…………?)
ベッドで横になっていた少女の――レラの朧気な意識が五感を通じて伝わってくる感触と音によって次第に鮮明になっていく。意識がハッキリしてくるにつれ視界を真っ暗に閉ざしていた目蓋が震え、隠れていた金の双眸がゆっくりと光を捉える。
(ここ、は…………)
継ぎ目のない土の天井、壁も床もまったく同じ材質で作られた一風以上に変わった室内が彼女の眼に映り込む。
(洞、穴? こんな所にどうしてベッドが……ナナキさんが用意してくれた? ……ううん、そうじゃない……)
自分が最後に覚えているのは強い目眩に襲われたこと。
その後の事は全然分からないけれど、確かに目眩に襲われて座り込んだことだけは覚えている。身体は疲れていなかった、体調も良かった……彼のお陰で疲れを溜める事なく旅を続けられていた。
なのに立っていられない目眩に襲われて、それで……
「――目が覚めたのね、思ったより早くて安心したわ」
「えっ?」
自分の身に何があったのか考える最中、彼女の看病に付いていた同族のルゼの呼びかけに室内に自分以外に人がいた事に気付くレラ。
「私と同じ……ブルー、リッド……」
「ええ、正真正銘の同族よ。私は名はルゼ、よろしくレラちゃん。でも、その様子だと心象酔いだけじゃなくて自分以外のブルーリッドに会うのも初めてみたいね」
「い、いえ……父も母もブルーリッドです。でも、物心ついた時に病に倒れてしまって……」
「そう……起き抜けに嫌な事を聞いてしまったみたいね、ごめんなさい」
「き、気にしないでください。そ、それよりナナキさんとティニーちゃん……私と一緒にいた人間の人達を知りませんか? し、信じられないかもしれませんが、その二人は――」
「安心して、二人とも怪我も病気も無く元気よ。今はきっと集落の皆と世間話か何かしてるでしょう」
「……魔族の村なのにですか?」
同じブルーリッドの彼女が従属の魔法具も付けられず、自分と気軽に話をする事が出来ている。その事から自分達がいる場所が魔族の村だと判断したレラ、魔族の村である以上は人間である名無とティニーを快く思わず何かしろ弾圧されているのではと焦りを募らせた。
しかし、ルゼの思わぬ言葉にレラは首を傾げる。
「確かに魔族が住む集落でもあるわ。でも、その話は今は置いておきましょう。今は貴女が目を覚ました事を二人に知らせないと……貴女、三日間ずっと眠っていたのよ」
「み、三日もですか!?」
「ええ、重い軽いの程度はあっても心象酔いからの回復期間としては割と早いほうだけどね」
「心象酔い……」
「それも二人を呼んできた後で話しましょうか、貴女が眼を覚ますのを心待ちにしていたから」
「そ、そうですね」
危険らしい危険が無いと分かってレラなりに状況把握に努めようとしていたのだが、確かに倒れた彼女のことを名無とティニーは心から案じていた。そしてそれは今も同じ。
レラが目を覚ましたのであれば一刻も知らせてやる事は、名無達に取ってこれ以上無い朗報なのだから。
「それじゃ二人を呼んでくるからここに――」
「す、すみません! その前に少し……良いですか?」
「何かしら? 今聞いておきたいことでもあるの?」
「あの、着替えと身体を拭ける物を……。その、汗の匂いが少し……」
楽な服装での呼吸、心象酔いによる発汗で身体を冷やさないよう着替えやすくする為などの理由からレラの服装は大きめな白いシャツ一枚のみ。一刻も早く名無達と病状が収まった事を喜び合うにしても、ほぼ裸同然の格好では色々と気が気では無いに違いない。
ついさっきまで床に伏せていた病人なのだから気にする事は無いのだが、微かとはいえ自分の身体から汗の匂いがするとなれば年頃の少女としてはこのまま会う事に気まずさを感じるのも仕方が無い事だろう。
看病という重労働をさせたばかりか、起き抜けにルゼの提案を遮っての要望。レラは我が儘だと思われても仕方ないと思いながらも、何とか聞き入れてもらえるようにと頭を下げた。
「ふふっ、そんなに気にしなくても大丈夫よ。私が二人を連れて戻ってくる前に済ませられるよう他の人に持ってくるよう言っておくわ」
「あ、ありがとうござ――」
「――する人の前では少しでも綺麗でいたいものね、同じ女として貴女の気持ちは分かるわ」
「…………?」
気を悪くする事無く答えてくれたルゼに感謝しつつ頭を上げたレラだったが、次に聞こえてきた彼女の言葉に眼を瞬かせるレラ。
「身体を拭き終わる頃を見計らって連れてくるから、慌てずにしっかり身支度を整えておいてね」
「あ、あの今……」
「それじゃ行ってくるわね」
しかし、疑問を投げかける前にルゼはレラを残し名無達の元へ向かってしまう。
(……上手く聞き取れませんでしたけど、ルゼさんは何て言っていたんでしょう?)
意識はハッキリとしているようでもレラは目覚めたばかり。
礼の言葉を伝える事に意識を傾けすぎて、ルゼの返答の出だしを聞き逃してしまったレラ。
(でも、ナナキさん達も無事で良かった。ティニーちゃん、泣いてないでしょうか……)
しかし、特に気にすること無く二人の無事にレラは胸をなで下ろす。そして、用意してもらえた着替えと清拭の道具一式を持ってきてくる人物の到着を待つのだった。
◆
「――こなくそおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
宛がわれた一室でレラが目覚めた頃、敗者の終点に悔しさが滲む自棄糞な声が響き渡る。
声の主は敗者の終点の住人である少年ニックス、その身に纏うのは魔法騎士の象徴とも言える銀の鎧。手には凄まじい勢いで刀身を燃え上がらせる大剣が握られており、疾走する彼の背にも炎の矢が幾つも形作られていた。
「ニックス、戦いの最中に不用意に声を上げない方が良い。相手が格下であれば威圧する事も出来るだろうが、対等以上であれば死角を取ったとしても位置を露呈させる事になる」
「そんな事言われなくても分かってるっつうの!?」
「そうか、それはすまない事をした」
「むがあぁぁぁぁっ!?」
そして、そんなニックスに相対しているのは無手の名無だ。
敗者の終点に来て三日。
レラが心象酔いから目覚めるまで動きようが無い名無は友好的に接してきてくれる住人達と親睦を深めていた。この戦い、ではなく手合わせもその一環。
「うおぉぉぉ!!」
ニックスは燃えさかる炎の大剣を名無の眼前で地面に叩き付け、巻き上がる炎と土煙で名無の視界を覆い隠す。
(最大火力での目眩まし、なんとも贅沢な煙幕だが……)
名無の視界を覆う舞い上がる土煙は熱気によって不規則に揺らめいてニックスの姿と動きを巧妙に隠し見極める事は困難。それでも名無に表情に焦りは無く、ニックスが身に付けている鎧が擦れる微かな音で大凡の位置を把握していた。
――『熱視暗明』
しかし、優勢に立ちながらも名無は能力を発動する。
銀の輝きと共に発動されたのは熱による感知を可能とする能力、要はマクスウェルの熱感知センサーである。普段はマクスウェルが居る事で使うことの無い能力だが、今はレラの首元。念には念をと人前で話す事なく、ただの装飾品として振る舞っていた。
とは言え、マクスウェルの手助けが無くとも『虐殺継承』を解放している今の名無であれば能力など使わなくても、ニックスの姿を目視してからでも充分に対応出来る。そうでありながら能力を使ったのはニックスを傷つけないようにする名無なりの配慮だった。
「これならどうだ、この野郎おおぉぉぉぉぉっ!!」
全方位で死角を作っておきながら、また大声を上げて名無の背後から襲いかかるニックス。先の助言など意に介さず渾身の力で名無を切り捨てようと横薙ぎに振るわれる大剣、繰り出された大剣に対処すべく名無も身体を反転させる。
が、同時にもう一度彼の双眸が銀の輝きを強めた。
「なんっ!」
(これで彼の動きと攻撃は止めた……俺も動けないのが難点だが)
ニックスの大剣は名無に届くこと無く空中で動きを止め、刀身で荒ぶっていた炎の揺らぎも微動だにしていない。そしてそれは名無を貫こうと背後から迫っていた数十を超える火の矢も同じだった。
――『停相対動』
指定された動く物、動こうとする物全てを止め、逆に止まっている物を動かす能力。先に発動させていた『熱視暗明』でニックスと火の矢の状態を把握していた名無は、大声と共に大剣を振るってきたのが直接的な攻撃であると共に陽動である事を察知していた。
好戦的な性格ではあるが戦いの中でも名無の助言を素直に聞き入れ、かつ自分が助言を聞く気が無いかのような素振りを取ってみせる機転も利く。戦っている相手が名無でなければ一矢報いる事が出来ていただろう。
(これで終わりだな)
能力の影響で口を動かしたくても動かせない、しかし魔法は無詠唱で発動する事が出来る。ニックスが懸命に身体を動かそうと躍起になっている間に、名無は無詠唱で創り出した土の刃を彼の喉元に突きつける。
すかさず能力よって停止するも、名無が喉元に少しずつ動かすよう制御していなければ逆にニックスの首が飛ぶ。なんとも奇妙な効果ではあるが、そんな力だとは知らないニックスに降参を促すには充分。
どうやっても身体を動かすことが出来ず、魔法を発動させても止まってしまう状況をどうにも出来ない事を理解したニックスは発動させていた魔法全てを霧散させるのだった。
「良い勝負だった」
「何が良い勝負だっただ! 全っ然、勝負になってなかったぞ!!」
「そんな事は無いさ」
「嘘つけ!?」
『停相対動』の解除と共に尻餅をつき抗議の声を上げるニックスに苦笑を溢す名無。
「ナナキさん、あんた一体幾つ能力持ってんだ? 選定騎士が使ってる所何回か見たことあるけど、絶対そいつらより多いだろ!」
「どうだろうな、正確に数えた事は無い」
肩をすくめて見せる名無ではあったが正確な数は把握している、その効果と使い方全て。しかし、ここでソレをニックスに教えても悪戯に驚かすだけ。仮に教えるにしても詳細を求められてしまったら、全て話しきるのに一体どれだけ時間が掛かるか分かったものではない。
「……まあ、今までの手合わせで二桁は使ったが」
「十個以上って……反則過ぎるだろ、はあぁぁ」
何事も無いように名無が口にした能力の数に今度こそ降参だと両手と両足を広げ、大の字になって地面に転がるニックス。そして、そんな少年を傍で見守っていた同輩達も苦言を溢す。
「まったくニックスの言う通りだぜ、一対一でやったっつっても十人掛かりだってのによ」
「傷どころか汗一つかかせる事も出来なかった」
「ここにいるのは全員が選定騎士に選ばれてもおかしくない魔法騎士、加えて先天的に異能を宿している実力者ばかりだと言うのにな」
「世界中で見ても結構上にいる方だと思ってたんだけど……はあ、自信なくなっちゃったな~」
「「「「「まったくだっ!」」」」」
ニックスの前に名無に挑み悉く返り討ちに遭ってしまった男達が声を揃えて名無の規格外の強さに異議を唱える。その姿は駄々をこねる子供のようで微笑ましく思えなくも無かったが、名無は何も言えず苦笑を強めた。
(俺の力は他者から奪い取ってきたもの、彼等のように自分自身の力で磨き上げてきた物と比べる様なですらない……何を言われても反論の余地は無いな)
彼等だけでは無い。
この敗者の終点にいる全員が明日という未来を勝ち取る為に力を、己自身を鍛え上げてきた強者。全員が共通の敵に敗北しこの地に幽閉されてしまっているのだとしても、自身が掲げる信念を貫く為の覚悟を持って戦ったのだ。
戦いの後にいかなる残酷で非道な運命が待ち受けているとしても、それでも許容できない不条理に立ち向かったのだ。
そんなニックス達と違い自分は奪い蓄積してきただけ、彼等の何気ない言葉で胸が痛むのは、その違いをしっかりと自覚している証なのだろう。
「……? どうかしたか、ナナキさん?」
「いや、流石に十連戦はこた――」
「ナナキお父さーん!」
浮かべていた苦い笑みに陰りが差し込み、それを誤魔化そうとした名無。だが、それよりも早く名無の腰にティニーが抱きついてくる。
「ティニー……こっちに来るのは良いが、まず声を掛けてからと言っただろう。手合わせが終わったと油断させた所を追撃してくる可能性もある」
「いや、しねえからっ! デカい声上げたけど、そこまで殺伐としてなかったよな!! 俺そんな性根曲がってねえからっ!?」
「す、すまない……戦いという行為そのものが染みついていてな。無意識に警戒しすぎる癖が抜けないんだ」
我ながらあまりな物言いだったと名無は頭を下げ、ティニーの頭を撫で優しく引き剥がす。
「ティニーちゃんを怒らないであげて、ナナキさん」
「キユロ」
ティニーを引き剥がし注意しようと目線を合わせる名無だったが、それを止める言葉と共に一人の少女が二人の元へ駆け寄る。
「私が手合わせが終わったみたいって言っちゃったから、ティニーちゃんがナナキさんの所に……怒るなら私を」
名はキユロ、長い時を生きるエルフの一人でニックスと恋仲にある少女だ。
エルフという事もあり正確な年齢までは分からないが、艶めく金の髪と瑞々しくさ弾ける肌からするとニックスとそう変わらないだろう。
この三日間、名無が集落の男達の暇つぶしに付き合わせられたり、手合わせを申し込まれるなどしてティニーの面倒を見る事が出来ない間、ティニーの世話を買って出てくれた。今も他の女性陣と一緒にティニーが危なくないよう離れた所からニックスとの手合わせを見守っていたのだ、本来なら名無がすべき事を変わりにやってくれているのだから怒る事など出来るはずも無い。
名無は肩を狭めるキユロの言葉に首を横に振り、ティニーの頭をポンポンと軽く二度叩く。
「怒ってはいない。ただ少しでも危ない所には近づかないで欲しいと思ってしまうんだ……過保護だというのは分かってるんだが」
「そんな事無いですよ、それだけティニーちゃんを大事に思ってるって事じゃ無いですか。私は良いお父さんだなって思いますけど」
「そうかー? 俺はナナキさんが言ったとおり過保護だと思うぜ」
「ニックスってばナナキさんに負けたからって意地悪は駄目だよ。ニックスだって私が人間に襲われてた時、後先考えず助けてくれたじゃない。おでこから汗いっぱい流して、それと同じだよ」
「あー、あー! 聞こえません、何も聞こえません! そんな昔の事なんて忘れましたぁ!!」
「もう、ちゃんと覚えてるじゃない。私達だって夫婦なんだよ、何も恥ずかしがらなくても良いと思うけど」
「あーーーーーー!?」
惜しげも無く自分の黒歴史……と言うより、キユロの事をどれだけ大事に思っているのかをキユロから暴露されてしまったニックス。耳が潰れるかもしれないというのにミシミシと頭蓋をきしませながら、ニックスは両手で耳を塞ぎ続けた。
その反応からして隠し通せるものではなかったが、名無は何も見なかったとティニーを抱きかかえ大人の対応を見せる。
「話を戻させてもらうが、少し休憩しよう。そうは見えないかもしれないが、俺も大分疲れてきた。他にも手合わせをしたい人がいるなら、休憩の後で頼む」
「つっても、今日はもういないと思うぜ? 毎回毎回こうも大人数でけしかけてんのにもれなく返り討ちされたら、どんな奴もやる気なくしちまうって」
「それは……本当にすまない」
今日だけで十人、初日から声を掛けられ力比べに名乗りを上げてくれた者達も入れると延べ四十人にも届く。どちらも傷を負うような事はない範囲でのものではあったが、相手側は誰もが全力。
直接攻撃、魔法、能力。その全てに対応出来るとはいっても肉体的にも精神的にも疲労は積み重なるものだ。
「もうっ、そういう事言わない! ナナキさんも気にしないで良いですから、皆そんな事でナナキさんを責めたりしませんからね」
「気遣い感謝する」
「いえいえ。さっ、ナナキさんもニックスも皆の所に行こ、二人の分のお茶とお菓子ちゃんと残してあるから」
「おっしゃ! 今日は何なんだ?」
「乾燥させた果物を練り込んで焼いたクッキーだよ、ニックス好きでしょ?」
「おう、身体動かした後はそいつに限るよな! 旨いし、甘いし、喰いやすいし幾らでも喰える!」
「だからってナナキさんの分まで食べちゃ駄目だからね?」
「わ、分かってるって」
地面に身体を投げ出していたニックスだったが、自分の好物が準備されていると知って名無との実力差に不満を滲ませていた顔を一変させキラキラと輝かせる。その変わりようから余程気に入っていることが分かる。
しかし、そのあまりの変わりように呆れた表情を浮かべるキユロに釘を刺されてしまう。気まずそうに視線を逸らしながら立ち上がったニックスは、そのまま観客席兼休憩場所になっている軒先に歩いて行く。そんな二人のやり取りにティニーは自分の事のように頬を綻ばせた。
「ニックスお兄ちゃんとキユロお姉ちゃんなかよしだねー!」
「そうだな、仲睦まじいようで何よりだ」
「ナナキ君、ティニーちゃん」
ニックスとキウロのやり取りに笑みを浮かべるティニーに釣られる様に名無も頬を緩める。名無達もニックス達の後に続こうとしたが、そんな二人を呼び止める声が向かおうとしていた休憩場所から上がる。
「レラさんが目を覚ましたから呼びに来たの、ちょっと準備もあるから此処で――」
「ありがとう、今すぐ行く。ニックス、俺の分の茶菓子を食べてくれるとありがたい」
「あ、ああ。それは良いけどよ」
「なら後は頼む。ティニー」
「うん、はやくはやく!!」
「ちょ、ちょっとナナ――」
いきなり名無から自分の分のお茶菓子を食べるよう頼まれてしまい戸惑うニックス。そして、呼び止めようとしているルゼに最低限の受け答えを返し制止の暇を与える子と無くティニーと共に忽然と姿を消す名無。そんな名無の足の速さにニックスは好物のお陰で輝いた顔をまた曇らせた。
「……何が疲れただ、全然余裕じゃんか……」
「そう怒らないの、ニックスだって見たでしょ? 二人とも凄い喜んでたじゃない」
「そりゃそうだけどよ……はあ、なんだかなー」
元々話を逸らす為の振りだった為に名無の嘘はあっけなく露呈してしまった。
後で話を取り繕うには致命的な感情の発露、レラが目を覚ました。
その事実に喜びを爆発させ満面の笑みを浮かべるティニー、何を差し置いてもレラの元へ急がなくてはと即決した名無の歓喜の色が浮かぶ銀の双眸。
――いても立ってもいられない。
そんな二人の反応に納得がいっていないのはニックスだけ、キウロや他の住人達は微笑ましいものが見れたと笑みを溢し合うのだった。




