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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話  作者: 溝上 良
第2章

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第25話 おい、クソ貴族

第2章スタートです。

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 王国で猛威を振るっていた賊、バンディット。

 もはやこの国では王族が旗を振ることができないほど影響力が衰退しているため、それぞれの領地を治める貴族たちに対応が任されていた。


 その結果、立場に胡坐をかいて好き勝手していて研鑽していなかった者や、そもそも荒事が苦手だった者の領地では、バンディットが急速に拡大。

 かなりの大規模な集団となってしまい、王国に牙をむいていた。


 それをどうにかしないといけないということで、王族の中でも国民からの人気が高い盲目の王女、パトリシアが象徴となってバンディット討伐のための貴族諸侯連合軍が結成された。

 完全無視する気満々だったが、パトリシアから直接指名をされてしまうと、さすがに断りきることができなかった俺。


 めちゃくちゃ嫌々参戦し、まあ適当にいつも通り弱い者いじめをして、さあ帰ろうかとしていたところで……諸悪の根源に捕まってしまった。


「さあ、ディオニソス様。一緒に王都へ向かいましょう」


 ニコニコと楽しそうに笑う王女パトリシア。

 銀色の髪を揺らしながら、機嫌が良さそうだ。


 こいつのが上機嫌だと、俺は非常に機嫌が悪くなる。

 好きではない奴が幸せそうにしていたらむかつくだろう。それと同じだ。


『王女にそんな不敬なことを考えていいの……?』


 心の中なら何を思ってもいいだろ。

 別に表に出していないし。


『不機嫌そうな顔が全面に出ていますけど……』


 うるせえ。


「はいはい。さっさと失せろ。お前の顔、長く見ていたくないんだよ」

「不敬ですよ」


 パトリシアの側近である妙齢の女、スイセンが俺を咎めてくる。

 乳でか女め。俺の部下をけしかけるぞ。


 あいつら、マジで倫理的にバグっているんだからな。


「特に理由もないのに王都に連れて行こうとしている方がおかしいだろ」

「ちゃんと理由はありますよ。今回の戦いの功労者はディオニソス様ですから。王族から、しっかりと褒賞をお渡しさせていただきます」

「まだろくに戦いの後始末が終わっていないのに、戦果なんてちゃんと分かりようがないだろ」


 貴族は当然王族の下に位置しているが、国軍とはまた違う。

 俺たちが率いているのも、私兵だしな。


 国が直接その私兵たちを養っているわけではない。

 だから、戦いに参戦して戦果を挙げれば、その都度国から褒賞が出る。


 というか、そうしないと今は国のために動く貴族なんて少ないからなあ。

 ……本当、終わってんな、この国。


 まあ、俺もその貴族の一人だけどな!


「ええ、他の方はそうですね。ただ、ディオニソス様の軍の働きは、誰の目から見ても明らかでしたから。私を助けてくれたのです。心から感謝していますよ」

「あっそ。じゃあ、次から前線に出てくるなよ、マジで」

「それは、私も同意見ですよ、殿下」


 俺の言葉に同調するスイセン。

 もちろん、俺は心配してそんなことを言っているんじゃないけどな。


 少しでもパトリシアの顔を見たくないというだけである。

 一方で、スイセンはちゃんとパトリシアのことを心配して言っている。


 同じ意見なのに、考え方はまるで違うんだもんな。

 不思議だなあ。


「大丈夫ですよ。スイセンもいますし、我々王族にはたくましい護衛の方々がいてくれていますから」

「あー……近衛ね」


 俺はチラリと少し離れた場所にいる精悍な騎士たちを見た。

 近衛騎士団。


 文字通り、王族の近辺を護衛する集団である。

 実権をほとんど持たない王族ではあるが、近衛騎士という武力は保有している。


 数は多くなく、むしろ少ない。

 貴族の私兵団の方が多いということもままある。


 ただ、その数の少なさを補って余りあるほど、個々の能力が高い。

 まあ、全国各地から優れた人材を抱え込んでいるからなあ。そりゃ強いか。


 そして、実権を持たないがゆえに、王族についても基本的に甘い汁は啜れない。

 それを理解できていて、それでもなお忠義を尽くそうとしているのが近衛だ。


 つまり、クソ面倒くさい。

 いまだにこの国でクーデターや反乱がおきていないのは、近衛の監視が行き届いているからだろう。


 抑止力として相当なものがある。

 屈指の戦力を誇る騎士団ではあるのだが……いかんせん、いい子ちゃんが多い。


 まあ、旨味のない王族にわざわざ自分から尽くそうとするような連中だし、堅苦しい奴が集まるのは当然だろうが。


「…………ちっ」


 ほら、俺を見てあからさまに舌打ちをする奴もいる。

 マジで舐めてるな、こいつ。


 王族の庇護下にいるから、貴族よりも偉いと勘違いしているのか?

 あいつは後々、何かしら理由をつけて殺そう。


 理由は、俺が腹立ったからだ。


「あいつら、俺のことすっごい睨むから殺したいんだけど、いい?」

「止めてください。数少ない王族が持てる戦力なんですから」


 ニコニコと笑うパトリシアに止められる。

 ……そこはあの騎士が大切だからとか、そういう理由じゃないのかよ。


 そういうところだぞ、お前。


「ふーん。まあ、とりあえずさっさと王都行こうぜ」


 すぐに行って、すぐに帰る。

 というか、王都に一歩足を踏み入れたら帰ろう。


 今回の戦いが勝ったということはすでに王都に早馬が向けられているだろうし、褒賞の準備とかもされているに違いない。

 それを分捕って、すぐに領地に戻ろう。


 そんなことを考えながら言うと、パトリシアはうんうんと頷いた。


「ええ。では、こちらへ」

「…………は?」

「……殿下?」


 パトリシアの言葉に、俺とスイセンが唖然とする。

 こいつが手で示したのは、自分が乗るであろう馬車だ。


 さすがに王族ともなれば、自分で馬に乗ることもないらしい。

 まあ、こいつは目が見えないから馬車である理由も分かる。


 それはどうでもいいのだが、どうして俺を引きずり込もうとしているのか。

 俺は普通に馬に乗れるし、そもそも密室でパトリシアと一緒とか嫌すぎる。


『王女からのお誘いに対してそんな考えをする人っているの? まあ、僕も別にパトリシア好きなキャラじゃないけど』


 そりゃいるだろ。そこら中にいるだろ。

 ……所々でお前の好き嫌いを言ってくるんじゃねえよ。鬱陶しい。


「まあまあ、いいじゃありませんか。ディオニソス様がおかしなことをするとは思えませんし、仮に何かあったとしても、有力貴族の嫡男であるディオニソス様を縛り付けることができますよ」


 薄く微笑みながら言うパトリシア。

 エロいとか以前に不気味なんだけど。


 だいたい、俺が密室になったからといって、お前に性的な意味で手を出すとでも思ってんの?

 出すわけねえだろ。出すとしたら物理的な、命を奪うような奴だわ。


 殺人になっちゃうけど大丈夫?


「嫌だ。俺は自分の馬もあるし、お前と違って乗馬もできるし。じゃ」

「一緒に乗ってくれたら、褒賞に色を付けますよ?」

「…………」


 金、大事だよね。











 ◆



「おい、クソ貴族」


 いざ馬車に乗り込もうとしたときに、そんな暴言を近衛騎士の一人に向けられた。

 ……え? 何こいつ? 殺していい人間?




過去作のコミカライズ最新話が公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第2話

https://manga.nicovideo.jp/comic/74458


『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第29話

https://unicorn.comic-ryu.jp/10371/


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第5話

https://magcomi.com/episode/2551460909601061375

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