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守銭奴無自覚ブラコン妹と盲目ヤンデレいじめっ子皇女に好かれる極悪中ボスの話  作者: 溝上 良
第1章 盗賊動乱編

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第24話 さっさと死ね、

第1章終わりです。

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 俺はずらりと目の前に並ぶ私兵たちを前に、心底嫌そうな顔をしていた。

 こいつらの顔を見るのもちょっと嫌だし、何よりこれから王都に行かないといけないというのが嫌すぎる。


 実権なんてろくにない王族のくせに、何命令してきてんだ。ふざけんな。

 早く誰かに殺されるか、人質目的で他国に嫁げばいいのに。


「あー……まことに遺憾ながら、これから俺は王都に行かないといけないことになった。ということで、お前らも道連れな」

「「「えぇ……」」」


 呆然とする私兵たち。

 俺が一人で嫌な思いをするわけないだろ。


 どうしてもしないといけないなら、絶対に周りの奴らも道連れにしてやるよ。

 もともと、今回の報奨金を受けて遊び惚けるつもりだったのだろう私兵たちは、意外にもそんなに嫌そうにしていなかった。


「というか、閣下。俺らは別に王都に行くの嫌じゃないっすよ。娼館のレベルも高いし、楽しいっすもん」


 ……さびれた王族が治めているにもかかわらず、さすがに首都ということだけあって、そこそこ栄えている王都。

 こいつらが遊ぶ場所は腐るほどあるだろう。


 お前らが好き勝手することが、俺の悪評が広がっている大きな要因の一つになっているって分かってんの?


『でも、君も止めようとしないよね?』


 まあ、別に……。

 他人からどう思われても知ったことじゃないし、こいつらに好き勝手される奴らもどうでもいいし……。


「俺がつらい思いをしに行くと言うのにお前らは……。全員減俸な」

「「「横暴だ!!」」」

「うるせえ!!」

「「「逆切れ!?」」」


 俺が嫌な気分になってんのに、他人が楽しそうにしているのは許せん。


「まあ、さすがにこの人数で王都に行く理由もないから、半分くらいにしとくか。後は領地に返って事務処理でもしてろ」


 俺がそう言うと、ぴしりと緊張が走る。

 当然、俺も分かっていて言った。


 そりゃ、つまらない事務仕事をやらされるのと、普段行けない王都に行って楽しく遊ぶこと。

 どっちがいいかと言われたら、こいつら全員バカだから後者と答える。


「……王都に行くメンバーはどうやって決めるので?」

「お前らで適当に話し合って決めろ」

「了解でーす」


 私兵たちの返答を聞いた俺は、とっとと歩いて違うところに行く。

 高台に行こう。よく見えるだろうから。


 しばらく静かだったが、その後背後で『話し合い』が行われているのが聞こえてくる。

 うんうん、それでいい。


『……ねえ。なんか怒号と殴り合いの音が聞こえるんだけど』


 それが、うちの話し合いだ。


『殴り合いが話し合い……?』


 そもそも、言葉で解決しようとするのは、なかなか難しいことだ。

 だったら、戦争なんてないわけだし。


 そして、ウチのバカたちは喧嘩っ早いので、最初から相手が納得するとは思っていないので、いきなり拳で語り合い始めたのである。

 平常運転だ。


『でも、そろそろ原作開始だね……。これまで君の邪魔をしてカルマ値を随分と下げられたはずだから、何とか原作と違う展開になってほしい……!』


 ……無理じゃね?

 俺、さっき串刺しとかしていたんだけど。


 まあ、それを言ったらギャアギャアとうるさそうだから言わないでおこう。


「原作ねえ……。主人公がオオトリだっけ?」

『うん。ルートがいくつかあるはずだけど、今回は王道ルートのはずだよ』

「王道……?」


 いきなり貴族にため口を言いつつ敵意を向けてくることが王道……?

 あれ、かなりやばいことだぞ。


 俺だって機嫌が普通だったら殺していたレベルだし、そうしても俺は何ら罪には問われなかっただろう。

 ……まあ、さすがにあれ以上のことはしないだろうけどな。


 たとえば、王族に話しかけるとか、そんなこと。

 いくら何でもありえないが。


『結構ルートがいくつかあってさ。たまに悪堕ちルートもあったりするんだ。でも、この始まり方は王道だよ。悪堕ちだと最初に家族が殺されるから』

「あっそ」


 家族が殺されるなんて割とよくあることだしなあ。

 それで復讐に走ることも、またしかり。


 別に目新しくもなんともない。


『だから、オオトリとはできる限り対立しないように……』

「あっちから突っかかってきたらどうしようもねえだろ。というか、俺はそんなこと聞きたいわけじゃないんだよ」

『自分が殺されるかもしれない相手のことをそんなことって……』


 何回も言うけど、俺が負けるとは思えないし。

 だいたい、オオトリのことだけ気にしていなくとも、俺なんか他の奴らからもさんざんに恨みを買っているだろうからな。


「いや、マジでそっちはどうでもよくて……」


 そう、俺が聞きたいのは、オオトリのことでも俺の将来のことでもない。

 今、俺が一番知らなければならないこととは……。


「パトリシア、いつ死ぬの?」

『待ち望みすぎだろ!』

「待ち望むに決まってんだろ!!」

『ブチ切れ!?』


 そう、プレイヤーが口走っていた、パトリシアの死。

 これだ……これだけが楽しみなんだ……。


 一刻も早く死んで、俺を解放してくれ。

 最悪、記憶喪失になって俺のことだけ全部忘れてくれるだけでもいいから。


「で、いつ死ぬの? 誰に殺されるの? 早く教えてくれ。俺がその殺人犯を全力でサポートしないといけないんだからな」

『いや、教えづら……』


 何が教えづらいんだ。

 お前の存在価値なんて、今のところそれしかないんだぞ。


 渋ってないでさっさと言え、カス。


『というか、そもそも死ぬ要因とか理由って、結構色々あるんだよ。描写されないまま殺されていたこともあったし』

「あいつ、どれだけ恨み買ってんの?」


 絶対に死んでいるってことだろ、パトリシア。

 おいおい、最高だな。誰か早く頼む。


『うーん……というか、単純に鬱ゲー要素を出したいがためにとりあえずキャラを殺しておけばいいかという安直な考えも透けて見えていて……』

「早口で何言ってんのお前?」

『パトリシアが殺されるタイミングとかもバラバラなんだけど、王道ルートでいくと……』


 プレイヤーは少し溜めてから、言った。


『多分、もうそろそろかな……』

「マジで? ひゃっほう!」


 最高だぜ!

 さっさと死ね、パトリシア!



過去作のコミカライズ最新話が公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLや書影から飛べるので、ぜひご覧ください。


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第2話

https://manga.nicovideo.jp/comic/74458


『偽・聖剣物語 ~幼なじみの聖女を売ったら道連れにされた~』第29話

https://unicorn.comic-ryu.jp/10371/


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第5話

https://magcomi.com/episode/2551460909601061375

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