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妹の迷宮配信を手伝っていた俺が、うっかりSランクモンスター相手に無双した結果がこちらです【書籍化&コミカライズ企画進行中!】  作者: 木嶋隆太


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『強い……! 強すぎます! この光景は本当に人間と魔物の戦いなのでしょうか!? もはや、どちらが魔物なのか分かりません!』

「……酷い言い方をするものだな」


 苦笑した会長だったが、アナウンサーの言葉に同意だった。

 先ほどまで、心に重くのしかかっていた不安は気づけば拭い去られていた。


「我々も、いつまでもじっとしているわけにはいかない。……こうして蒼幻島に余裕がある今、すぐに我々も向かおう」

「分かりました」


 そう会長が口にした瞬間だった。

 その場にいた全員が、一斉にある方角へと視線を向ける。

 ……その方角とは、蒼幻島があるほう。

 突如として発生した強大で最悪の魔力を、この場にいたSランクたちが見逃すはずもない。

 この中でもっとも経験の浅い御子柴は、その魔力に体を震わせているほどだった。彼女だけではない。全員が顔を青ざめている。


「な、なんだこの魔力は……っ」

「まさか――」


 武藤がはっとした表情とともに何かを口にしようとしたときだった。

 テレビのほうから大きな声が響いた。


『あ、あれは一体なんでしょうか!? 迷宮のほうから七つの剣を持つ魔物が現れました!? ……あ、あれはこの「七呪の迷宮」のボスモンスター、ペインナイトだそうです!』

「まさか……迷宮爆発のボスモンスターか……っ!」

「さっきの魔力は……この魔物の……もの、か」

「……不気味な魔力じゃねぇか」

 

 Sランク迷宮の爆発によって、かつて一つの国が滅びかけた。

 それは、討伐不可能なほどに強い魔物であり、当時、誰もそれを止めることができなかったからだ。

 会長もまた、日本の代表としてその戦いに参加したことがあり、腕につけられた傷を押さえていた。

 Sランク迷宮のボスモンスターは、通常Sランク冒険者が複数人は必要だ。迷宮爆発によって強化された魔物ともなれば、その数はさらに増えることになる。


 いくら、迅が強い冒険者とはいえ、一人でどうにかするというのは難しい。

 ペインナイトは背後に出現させた七つの剣のうち、一つを手につかむ。

 そして――一瞬で迅の間合いへと踏み込んでいた。


 振りぬかれた剣が生み出した爆風によって、砂煙が舞い上がる。衝撃で周囲の地面がめくれ上がる。

 その衝撃は上空に跳んでいたヘリコプターにまで影響があり、カメラが揺れる。


「鈴田さん……っ」

「お兄様!」

「はっ……ちょ、調子に乗りすぎたな」


 剛田以外の者の悲鳴がこぼれる。


『ど、どうなっているのでしょうか!? あっ、人影が見えます!』


 砂煙が払われたそこには――ペインナイトの剣を掴む迅の姿があり、そして――。


『てめぇの斬撃をかわしてたらどうなっていたか分かるか!? 俺の別荘があんだよ! 俺の麻耶グッズが真っ二つになったらどうするつもりだてめぇ!』


 離れた場所でも聞こえるほどの大声とともに、迅はペインナイトの体を蹴り飛ばした。






 吹き飛んだペインナイトだったが、空中で姿勢を直した。

 同時に、背後にあった剣をさらにもう一つ掴み、両手に剣を持つ。

 そして――空中を蹴るようにして、ペインナイトが加速する。


 両者の戦闘が本格的に始まった。

 その汚れの目立つ黒い鎧とともに迫ると、彼は背後に浮かんでいた剣の一本を手に取り、切りかかる。

 だが、それよりも早く迅は踏み込み、拳を振り上げた。


 ペインナイトの鎧に拳は当たり、その体が再び宙を舞った。

 着地したペインナイトがじっと迅を睨み、迅もまたその様子を眺めていた。

 あまりの速度に、一瞬見失いかけたカメラはズームをやめて全体を移すことになる。


 カメラが映した先では、ペインナイトと迅がそれぞれの武器を振りぬきあっていた。


『な、なんという戦いでしょうか!? ペインナイトのもつ剣に対して鈴田さんは拳と蹴りで捌ききっています!』


 互角の戦い。二人は消えるような速度で動き続け、相手を殺すための攻撃をし続けている。

 だが――振りぬかれたペインナイトの剣から生まれた火が迅を襲う。

 焼き尽くさんばかりに現れた火が、自我を持ったかのようにして迅へと伸びる。迅はその火を見て、咄嗟に大きく跳んでかわす。

 再び迫る火を、彼は大きく息を吸って――吐き出した。


 暴風が吹き荒れた。彼にとって、それは深呼吸のようなものだったのかもしれない。溢れた火はペインナイトへと押し返され、ペインナイトは迫る火をかわしながら左の剣を振りぬいた。水の一閃。

 ペインナイトは光以外の属性を、あの剣で使い分ける。襲い掛かる水の波と剣。しかし迅はそれに突っ込み、振りぬいた腕で水を払いのけると右腕の拳を振りぬいた。


 と、同時だった。彼は振りぬいた腕から何かを放出した。

 それによって吹き飛びかけたペインナイトが、再び迅のほうへと引き寄せられた。


「……あれは、一体?」

「ま、魔力で引き寄せたりしているらしいです。……以前、コラボしたときに聞きました」


 困惑していた会長の言葉に反応したのは、僅かに震えていた御子柴だ。



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― 新着の感想 ―
こんな時でもブレないお兄様w圧倒的すぎるwww
[一言] これぞホントのマジックハンド!
[良い点] >魔力を使って敵を引っ張る これはつまりアレですね、某昭和のスーパーロボットみたく「(魔力だけど)マグネッ○パワー、オン!! 鈴田ブリーカー!○ねぇッ!!」が出来るという訳ですね(驚愕) …
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