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大江戸? 転生録 ~ファンタジー世界に生まれ変わったと思ったら、大名の子供!? え? 話が違わない? と思ったらやっぱりファンタジーだったで御座候~  作者: 鳳飛鳥
志七郎、南へ の巻

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千二百五十二 卑怯卑劣と報道の有り方を考える事

 卑怯卑劣は兵家の常……とは言う物の、何時如何なる時でも卑怯な手管で勝てば良かろうが通じるとは限らない。


 いや負けるよりは『武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候』と言う言葉の通り、卑劣な手段を用いてでも勝たねば成らないのだが、勝ち方次第でソレ以降の戦いで不利を強いられる事も有り得るので、安易な考えでその手の手段を取るのは間違いだ。


 要するに卑怯卑劣な手管を使って勝利を手にしたとしてもその風聞は後に残る訳で、次に他の何処かと戦う羽目に成った時に『貴様等がその手の卑怯な手口を使う等と言うのはお見通しだわ!』と言う様な事にも成りかねない。


 もっと言ってしまえば『お前達がやったのと似たような手口だ、同じ事をされて卑怯だなんだと言わないよな?』と、相手方にその手の悪辣な方策を使う口実を与える事にもなるのだ。


 更に付け加えるならば『卑怯卑劣の猪山藩を成敗してやる!』と、政敵とでも言える相手に対して此方を攻撃する口実を与える可能性も零では無い。


 まぁ政敵云々に関しては直接的な合戦になる可能性は限りなく低く、あるとしたら息の掛かった瓦版屋にさも猪山藩(ウチ)が悪大名である彼の様に面白可笑しく書き立たせる事で、江戸市中や幕府内での評価を引き下げると言った方向だろう。


 ソレが十割(100%)混じり気の無い嘘八百ならば、書いた瓦版屋を『無礼討ち』しても問題には成らないだろうが、都合の悪い事だとしても事実を書かれたのであればソレを無礼と咎め立てするのは幕府が許さない。


 ……但し幕府に対する批判記事を除く、な辺りはやはり専制君主制の独裁国家と言えるだろうが、当代の上様は幕府に対して批判的な瓦版でも『読んで面白ければ許す』と言う基準を征異大将軍の座に着任して最初の命令としたと言う。


 悪意を以て只々倒幕の為だけに書かれた様な物は論外としても、面白可笑しく書き立てる様な出来事が有ったならばソレは幕府側の対応に誤りが有った証拠で有り、征異大将軍である自分が率先して反省しなければ成らない事柄だと言うのがその理由だ。


 向こうの世界の日本だと報道機関(マスコミ)の大半に、外国からの間諜(スパイ)と思しき者が極々普通に一般社員として入社しており、そうした者達が順当に出世して行けば報道が扇動になるのは然程遠い話では無い……なんて事も言われていた覚えがある。


 中々に陰謀論地味た話では有るが、戦前は大本営発表を書き連ねて国民の戦意を煽っていた新聞社が、戦後は一転して様々な事件を捏造してまで日本が戦争から何の反省も得ていない邪悪の国と言う様な方向の報道をし続けていたし完全な陰謀論では片付かないだろう。


 新聞は金を払って自ら手に入れなければ成らないし、多少偏って居てもソレをそうだと知って買って居るので有ればソレは本人の自由だし、人間誰しも見たい物を見て聞きたい事を聞けば気持ち良く成れる物だ。


 けれども瓦版が新聞に相当する物とすれば、此方の世界には未だ無い音声放送(ラジオ)映像放送(テレビ)は本体こそ買う必要が有る物の、一度ソレを入手してしまえば壊れない限り基本的には無料で視聴出来る。


 俺の前世まえ実家ウチは先祖代々公務員と言う家柄で、所謂『お硬い家』だった事も有って、娯楽番組の類を長時間視聴する事は禁じられていたが、報道番組(ニュース)の類は見る様に言われていた物だ。


 しかし同時にソレを鵜呑みにする様な事はせず、必ず報道の裏取りをする様にも曽祖父や祖父には言われて居た。


 官の側に居る者として報道出来ない情報を色々と抱えて居たからこそ『映像放送で嘘流す訳が無い』と言った思い込みに囚われて居なかったであろう事は、俺も警察官に成ってから現場で暫く働いている内に理解した物である。


 だが少なくとも俺がくたばった頃には、映像放送は新聞以上にそれ相応の権威の様な物が有り、新聞がトバシ記事を書く事は有っても映像放送でデマが流れる事は無い……と日本人の多くは思っていたのでは無かろうか?


 まぁ実際には映像放送だって俺が知っているだけでも幾つかの捏造事件を起こして居たし、そうした事を指す『ヤラセ』なんて言葉が有る辺り、全て番組が十割(100%)事実を報道しているとは思っていない者もそれ相応に居たと言う事だと思う。


 此方の世界でも前世の江戸時代でも瓦版屋は、真偽も定かでは無い怪談話から武家や商家の様な裕福な者の醜聞(スキャンダル)まで、売上の為ならば平気の平左で捏造をやらかしたりする物だと町民達も解って買っている、要するに娯楽紙として売られているのだ。


 ただまぁそうした捏造記事も、誰が被害者になるでも無い様な怪談話やら笑い話程度ならば兎も角、武家や商家の醜聞で捏造なんぞしたならば、前者ならば無礼討ち後者でも版元が怖いお兄さん達に襲撃されるなんて顛末が待っているのは赤子で無ければ解かる話。


「……彼の者を縛める鎖の毒と成れ」


 何処で誰が見て今回のコレをそうした醜聞に仕立て上げるのかは判らないが、卑怯卑劣と謗られる可能性が出来るだけ低くなる様に、俺は麻痺毒を対象の体内に直接送り込む毒属性魔法の麻痺を放った。


 堂々の一騎打ちならば兎も角、それ相応の人数が乱戦模様の中で争っている状況だ、小声で編んだ(しゅ)は直ぐ隣に居るお連には聞こえたかも知れないが、遠くから様子を伺っているであろう者にはバレやしない。


 そして幾ら押され気味だったとは言え、太郎彦は若くして猪山藩でも上から数えた方が早いだろう腕前を持つ立派な武人だ。


 ほんの一瞬でも隙を作る事が出来れば、ソレを起点にキッチリ逆転勝利を掴み取るだけの器量は有る。


 ちなみに麻痺の魔法はそもそもとして毒属性が効果が無いと言う相手がで無ければ、生来持つ抵抗力を完全に上回る事が出来ずとも、最低でも一瞬は動きを止める事が出来、抵抗力を突破したならば数分は身体を動かすが出来ない様にする極めて凶悪な魔法だ。


 こうした魔法が飛んでくる可能性を少しでも視野に入れて居たならば、腹に気合を込めて耐えると言う心の持ち様である程度耐性を高める事も出来るし、氣功使いならば氣で更にソレを高める事も不可能では無い。


 ……相手には悪いが不意打ちで横槍を入れるので有ればコレ程便利な魔法は他には然う然う無かったりする。


 問題が有るとすればコレも一種の毒である以上は、ソレが完全に身体の中で分解される前に仕留めてしまうと、肉に毒が残って食材としては勿論の事、装備なんかを作る際にも余計な影響が出かねないので中々に便利使いする訳にも行かない魔法なのだ。


 以前火取かとりの伯父貴と共に戦った八岐孔雀(やまたのくじゃく)の時の様に、是が非でも倒して置かなければヤバい相手ならば使う事に躊躇する理由は無いが、普段の四煌戌や焔羽姫の食餌を得る為の狩りでは使い辛いのは間違いない。


 対人戦だとこれ以上無い位に有用だし、自分で使って置いてなんだがこれ程に卑怯卑劣と言う言葉がよく似合う魔法は他に無い気もするがね。


 太郎彦と佐助と名乗った男の戦いはコレで良いとして、もう一方の流浪狩りのサブと名乗った男と領民達の戦いはと言えば、一般的な農兵ならば数を頼みにしたとしても蹂躙されていただろうが、流石は猪山の有志達と言う事か数の有利をキッチリ活かして戦っている。


 ソレでも直ぐに決着が付く程に簡単な相手と言う訳では無いが、太郎彦が眼の前の相手を昏倒させてから応援に駆けつければ、俺が魔法で支援する必要も無く取り押さえる事は出来るだろう。


 後は時間の問題に過ぎないと一瞬気を抜きそうになるが『勝って兜の緒を締めよ』勝利を確信して気を抜いた瞬間こそが一番の隙になる物なのだ。


 俺は改めてお連を掻っ攫おうと言う何者かの存在に気を配りながら、眼の前で行われて居る消化試合に再び余計な変化が無いかにも気を配るのだった。

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