1話 無限太陽の使い方。
1話 無限太陽の使い方。
センキーがいなくなったホールには、
崩れ落ちた魔力の残滓だけが、まだ微かに燻っていた。
床に刻まれた焦痕は、さきほどまでここに存在していた戦いの密度を物語っているが、
その中心にあったはずの気配だけが、綺麗に削ぎ取られている。
立っていたのは、二人だけ。
一人は当然、勝利者であるアマテラス・バーチャ・センエース。
もう一人は、
「……おっ……もう動いてもいいのか?」
低く、間の抜けたようにも聞こえる声。
だが、その声が発せられた瞬間、空気が僅かに揺れた。
これまでずっと、魔法で拘束され、指一本動かせず、喋ることすら許されなかった男。
世界最強の勇者ハルス・レイアード・セファイルメトス。
拘束が解けた直後、彼は一歩、足を踏み出す。
その動作だけで、全身に溜め込まれていた負荷が一気に噴き出した。
「長いこと拘束しやがって……体がバキバキになっちまったじゃねぇか、ボケが」
軽口を叩きながら、肩を回し、首を鳴らす。
そんなハルスに、
バーチャが、静かに言葉を向ける。
「無限太陽は循環の基盤にもなれるが、世界を喰らい尽くす業火にもなれる。無敵となった記念に、これから、この世界を終わらせる。ハルス・レイアード・セファイルメトス……貴様はそれを、最後まで見ているがいい」
「へぇ……てめぇが、この世の全部を喰らい尽くしてくれるのか……それはありがたいな。こんなカスみたいな世界……なくなってしまえばいい」
吐き捨てるような声音。
その奥にある感情は、あまりにも読み取りづらい。
「それは強がりか? 本心か?」
「……どっちでもよくね? 大差ねぇだろ」
「いいや、ある」
「…………お前ほどぶっ飛んだ存在が、俺ごときの言動を気にするとはねぇ……世のなか、キテレツなこともあるもんだ。不可思議な事象なんてテメぇの実在だけでお腹いっぱいだってのに」
ハルスは肩をすくめ、瀟洒な笑みを浮かべる。
視線はあくまで軽薄に、だが、その足は一歩も引いていない。
最後の最後まで、
風雅な勇者であろうとする態度。
そんな彼に、
バーチャは、静かに、しかし確実に踏み込む。
「セイラのことはどうしたい? それもどっちでもいいのか?」
「……」
その名が出た瞬間、
ホールに流れていた時間が、ほんの一拍、止まる。
ハルスの表情筋がピクつく。
心がブレかけたが、どうにか、いつもの調子を保って、
「どっちみち、どうしようもねぇだろ。……それとも、泣いて、すがりついて、返してくれと喚いたら、セイラを解放してくれんのかい?」
一日10話投稿すると言ったな。あれは嘘だ。




