11話 マジで詰み。
11話 マジで詰み。
(てめぇ、なに、最後の切り札を簡単にとられてんだ、トウシ、ごらぁああ!! 責任とれ! 全部てめぇが悪い! 俺は何も悪くない!)
トウシが蝉原から回収しておいた『テラスの因子』をサクっと奪われてしまう。
テラスを回収したバーチャは、ペロッと一瞬で丸のみして、
「うむ……まあ、大して上昇はしていないが……私の中に刻まれた『アマテラス』の強度は確実に上がったかな……」
満足げなその声音が、
最悪の事実を、淡々と突きつけてくる。
貪欲に、果て無く、次々と強くなっていくバーチャ。
センキーは、風穴の開いた胸部を回復させながら、
「はぁ……はぁ……ちょ、マジで、やべぇ、やべぇ、やべぇ……どうする、どうする、どうする……考えろ、考えろ, 考えろ……」
肉が再生していく感覚が、逆に現実感を強める。
――まだ治る。
――だが、次は耐えられるのか。
必死に、死ぬ気で、全力で、全身全霊をかけて、
頭をフル稼働させるのだが、
(……詰み……)
その二文字だけが脳裏で、
赤黒く、点滅する。
思考を巡らせるたび、
どのルートも、同じ結論にぶつかる。
(いやいやいや……詰んじゃ困るんだよ……マジで終わるぞ……シャレじゃねぇ……どうすんだよぉ……)
脂汗がだらだら流れる。
背中が冷え、指先が震える。
バクバクと心臓がやばい時のなり方をしている。
鼓動の一つ一つが、
『次で終わるかもしれない』というカウントダウンの音に聞こえていた。
「センエース……私は、この時をずっと待っていた。貴様を、正式に叩き潰す瞬間を。ずっと……ずっと……」
その声には、深い憎悪を下地とした、異様なまでに研ぎ澄まされた執念が込められていた。
感情を煮詰め、余分なものをすべて削ぎ落とした果てに残った、純度の高い敵意。
それが、空間そのものを圧迫するかのように、周囲の魔力の流れを歪ませていく。
バーチャは、
ゆっくりと、しかし一切の迷いなく、両手を広げた。
指先から滲み出した魔力は、ただの光ではない。
重く、濃く、まるで『狂気そのもの』を持っているかのような圧を伴い、空気を軋ませながら集束していく。
両手に魔力を込めていく。
それは溜めではなく、収束だった。
周囲に散っていた魔力を無理矢理引き剥がし、自身の支配下にねじ伏せていく、暴力的な制御。
そして、
「――ゾディアック・オメガバスティオン――」
宣言と同時に、両手の前に形成されたのは、
センキーが知るオメガバスティオンとは明らかに異質な構造体だった。
幾重にも重なった魔力の層が、星座を思わせる幾何学的な軌跡を描き、
中心部では、圧縮されすぎたエネルギーが、不気味な沈黙を保ったまま脈打っている。




