6話 泥試合を完遂する覚悟。
6話 泥試合を完遂する覚悟。
センキー相手に特殊な技など必要ないといわんばかりに……ただの打撃……基礎技だけで圧倒してくるバーチャ。
「ぐ……ひっ……!」
センキーは、ひぃひぃと無様な音を漏らしながら、それでも両腕で必死に猛撃を受け止め続ける。
視界の端が白く飛び、思考が断続的に途切れていく。
(まずい……やばい……体が、うまいこと動かない……っ)
裏介を取られた弊害が、ここに来て露骨に表面化していた。
反応速度、筋出力、判断力。あらゆる戦闘性能が、意図的に削り取られたかのように低下している。
その上で、純粋な数値の差は20倍以上。
理屈で考えれば、勝ち目など存在しなかった。
「くそがぁああ!」
それでもセンキーは吼え、歯を食いしばりながら前に出る。
その凶悪なまでの根性が、全身の震えを無理やり抑え込み、拳を突き出させる。
だが、その一撃は、あまりにも軽かった。
バーチャは、わずかに首を傾けるだけでそれをかわし、至近距離から静かに言葉を落とす。
「貴様の根性が優れていることは理解している。『センエースとの戦闘経験』はそれなりに積んでいるし、私の中に、センエース因子は山ほどある。ゆえに、私は覚悟をもってここに立っている。私も、根性には自信があるんだ。付き合うとも。貴様が死ぬまで……最終戦にふさわしい、重度の泥試合に……最後の最後まで付き合ってやる。『決して折れることのない格上』をあいてに……貴様ができることは果たして何かな?」
淡々とした声だった。
激情も、高揚もない。
あるのは、決して揺るがない確信と、底なしの覚悟だけ。
これまで、センキー――センエースは、その類まれな根性と覚悟で、慢心した格上の敵を幾度もねじ伏せてきた。
泥に塗れ、血を吐き、笑いながら立ち続けることで、相手の心を先に折る。
それが、彼の戦い方だった。
しかし今、そのセンが、敵の覚悟を前に、確かに震えている。
これまでの神生で最大の恐怖。
もちろん、諦める気は、毛頭ない。
問題なのは……
(ちょっと……これは……いくらなんでも……勝てる見込みが……なさすぎる……っ)
相手の強さに、スキがなさすぎた。
本格的に、完成されすぎている。
加えて、『覚悟』が異常なレベルに達している。
どれだけのイカつい泥試合に引きずり込もうと、最後まで笑って付き合ってくる未来が見えてしまった。
頭おかしいイカれた泥試合に持ち込み、相手を疲弊させる。
それが、格上相手に対するたった一つの勝ち筋。
だが今、その道は、最初から完全に塞がれている。




