5話 最強の勇者。
5話 最強の勇者。
「ハルス……セイラとの契約だから、貴様は殺さない。このアマテラス・バーチャ・センエースの名にかけて、ここからも生かし続けると誓ってやる。世界が終わり、全てが無に帰るまで……貴様は、ずっと生き続けて、その地獄を見続ける。なぜなら、それがセイラの望みだから。くく」
そこで、センキーが、
「いや、そんなことは望んでいないと思うんだが……普通に、死んでほしくないと思っただけだと思うんですが……」
そう呟くと、
ハルスが、センキーに視線を向けて、バーチャを指さしながら、
「おい、177番……おまえ、どうにかして、このアマテラスなんとかっていう『カス以下のクズ』を殺せねぇのか?」
「やりたきゃ自分でやれ。お前は最強の勇者様なんだろ? そいつ、この世界のラスボスだから、俺じゃ無理。最強の勇者様の手で、どうか、倒してくれよ」
「……最強か……みっともねぇ称号だ……ここ最近、ずっと負け続けてんのに……」
と、そこで、バーチャが、ハルスに、
「貴様の相手は、あとでしてやる。今は、こっちが先だ」
そう言いながら、パチンと指をならした。
すると、ハルスの全身がしびれて、喋ることも指一本動かすこともできなくなる。
動けなくなったハルスから視線を外し、バーチャは足を止めたまま、すっと呼吸を整え、周囲の空気そのものを押し潰すようにオーラの質量を引き上げた。
見えないはずの気配が濁流のように地面を這い、センキーの皮膚をざらりと撫でる。
骨の奥にまで染み込む圧迫感に、無意識のうちに歯が鳴った。
次の瞬間、バーチャの視線が刃物のようにセンキーを射抜く。
「それでは始めようか。本当の……最後の闘いを」
その一言だけで、周囲の温度が数度下がったような錯覚を覚える。
センキーは反射的に後退し、両腕を構えながら必死に言葉を探した。
「……いや、やめておこう。ここは一旦、話し合いのターンにすべきだと思う。お互い、色々と誤解があると思うから、まずはその解消から――」
時間を稼ぐための、みっともない足掻き。
それを、バーチャは嘲笑することすらなく、無関心に切り捨てた。
踏み込み。
それだけで、距離という概念が消失する。
視界が歪み、次の瞬間には、すでに眼前にバーチャがいた。
拳が振るわれるより早く、衝撃が来る。
腹部に重たい何かを叩き込まれ、センキーの体はくの字に折れ曲がった。
息が、肺から強引に引きずり出される。
間髪入れず、二撃、三撃。
拳、肘、膝。
どれもが殺意そのもので、受けるたびに骨が悲鳴を上げた。




