89話 転転超転回。
89話 転転超転回。
喉を通る瞬間、ずしりとした重さと、内側を溶かすような熱が、はっきりと伝わった。
そして、そのままの勢いで、続けて、バーチャの体もペロリと丸のみしていく。
すべてを奪い取り、取り込んだ蝉原は、静かに息を吐いた。
「ふぅ、ごちそうさま」
呑気な仕草で口元を拭い、何事もなかったかのように顔を上げる。
特に輝きも瞬きもしない。
ただの食事を終えた直後のように、どこまでも自然体。
その一部始終を目の当りにしたセンは、しんどそうな顔で、
「次から次へと……俺を置き去りにして、勝手に話が、超展開を繰り返す……なんじゃ、こりゃぁ……」
そこで、蝉原は、センとトウシへと視線を向けて、
「センくん。田中トウシ……ご無沙汰だね。こうして、直接言葉をかわすのは……随分とひさしぶりだ」
にこりと浮かべた笑みは、底知れぬ黒さを孕んでいた。
「……昨日の夜、結構喋ったけど? その記憶は残像か? 俺はいつから、お前とたくさんお喋りしたと錯覚していた?」
センの指摘に、蝉原は一瞬だけ目を細める。
「ん? ああ、まあ、そういえばそうだね」
軽く受け流すと、そのまま自分の身体へ視線を巡らせた。
「それより、どうだい? 見てくれよ。アマテラスを手に入れた、この俺の力を……なかなか高貴に輝いていると思わないか? 今の俺は無敵で最強で不死身」
誇示するような口調。
全身から放たれる圧倒的な存在感が、それを裏付けていた。
バーチャを捕食して以降、見た目にもエフェクト的にも、特に、目立った変化こそないが、
……しかし、感じる……明らかに……蝉原の中で、莫大な数値がうごめいている。
だから、センは、
「まあ……うん、そうだね。『無限太陽』とやらで『完全な無限の生命』になるっぽいから、今のセミニキは無敵で不死身だね……最強かどうかは、また色々と議論の余地があるけれどもね」
腫れ物にさわるように生返事をするばかり。
蝉原はニコニコと、
「できれば、9999京の壁を突破したかったけれど……それは無理だったか……まあ、でも、ここからの君との死闘で開くだろうね。1垓を超えて……君を殺し、そして、世界を終わらせる。それで、俺の物語はハッピーエンドだ」
淡々と語られる終焉の宣告。
その言葉が、静かに、しかし確実に、この場の空気を凍りつかせていた。
「さあ、それじゃあ、本当の最終決戦を――」
と、蝉原が気合いを入れなおそうとした……
その時、
「ん?」
蝉原の腹部が、ボコボコと泡立つ。
「な……」
まるで『マグマを食べてしまったおっちょこちょいの食いしん坊』みたいに、
「バーチャ……っ」
蝉原の腹部が、パァアアアン!!
と、盛大に弾けて飛んだ。
そして、その中から、バーチャが這い出てきて、
「しょうもない……この程度で、私の器になれると本気で思ったか? がっかりだよ、悪神セミハラユーゴ」
舞い散る閃光「すごい……蝉原が、まるで、どこぞのM字出王子のようだ……」




